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金と銀の玉の章
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「街中が風邪ならエドガー達のおやっさん、気を付けて」
ヨアヒムの言葉にエドモンドが頷く。
「ええ。南部支店の視察に行ってもらってます。街の風邪が落ち着くまで帰ってくるなと父が厳命してます」
とエドモンドが笑う。
「私の父親の方が3つだけ年上なんですけど、ちょくちょく兄ぶってますね、会長の」
と説明してくれる。
「そもそも父は会長のお兄さんの友人だったそうです。会長が15歳で冒険者デビューした時に付き添っていたらしいです。その時には父は18ですでに冒険者として働いていたらしくて。気があったらしくてそれから組んで色々してたみたいです」
エドガーとルトガーは自分の父の経歴を聞いて驚いてる。
「兄さんもエドガーも…きいてなかったの?」
ユリアーナは母の田舎に行く父と馬車の中でそういう話を時々聞いていたらしい。
風邪を引いていたエドガーとジュニアも調子が戻ってきてるので、今日は庭先に作った石窯に火を入れる。石窯に火を入れると聞いてユリアーナがパン生地を捏ね始めた。
「ユリアーナって色々できるんだな」
エドガーが感心してる。
「そりゃそうよ。農場やりたかったから向こうの家で色々覚えたし、おばあちゃんたちだいぶん力もなくなってたしね」
ユリアーナが少しだけ毒を吐く。
「姉さんと私がいたら、あの人たちは姉さんしかみないの。…亡くなった自分の娘を姉さんに重ねてね」
ユリアーナは昔、子供と少女の間くらいの年齢の時に父親に聞いた言葉を思いてしていた。
『カタリナ、母さんと妹は本当によく似ていたよ。二人は仲のいい姉妹だった』
と。ブランカは祖父母の怨念じみた執着を背負っている。母親は自分の分身としてブランカを見ている。あまり気の合う姉ではなかったし、好きな姉でもなかったけど、あの家の怨念は全てブランカが背負ってしまったな、とユリアーナは思っていた。母親の尻の軽さからの中年エルフのストーカー騒ぎも自分よりも、よりブランカが狙われている感じはあった。ジョンには
『あの二人はエルフの血の入っているブランカが特に狙いでしょう』
と教えられた。片方はどうも妖物との混じりだったようだけど、とユリアーナは溜息をついた。己が母親のうかつさと、度し難い美形好きはいかんともしがたいななど、ユリアーナはパン生地を力強く捏ねながら取り留めもなく考え事を繰り広げている。
夕方にデヴィッドが帰ってきてグリーナーとデヴィッドも合流する。
「そうだ、グリーナーは明日から里帰りすることになった」
「そろそろ家から帰れって連絡がうるさくて」
どうもこのところ皆が見てないときに敷地内に使者が来ているらしい。
「…デヴィッド、今回はもう遅いけど。来られてる方に勝手に敷地に入るなとお伝えお願いできるかな」
とアキラの声が低く冷たくなった。
「把握してたけど、挨拶一つないのはどうかと思って」
と付け加えるアキラはかなり怒ってはいるようだった。
「…挨拶いれてないのか、あいつら」
とデヴィッドも驚いているようだった。グリーナーも驚いている。
「グリーナーはデヴィッドの奥さんだからいいけど、使者達は俺が知らない相手だ。そしてギルドのエリアじゃなくてクランのエリアに入るなら最初に一言でいいから挨拶するのが筋だと俺は思ってるんだが」
デヴィッドも頷く。
「とりあえず、明日来訪があったらすぐにこっちに来させる。アキラ、すまなかった」
「最低限の礼儀やルールを知ってる使者を立てて欲しいもんだ」
アキラは溜息をついた。ウルリッヒ兄弟はこういうアキラを見るのは初めてで驚いていた。オールやブラッドはこういう来訪者いるよな、としゃべって言る。
「俺らの家もそういう不躾な奴ら来てたよ」
「そうそう。庭先に入り込んで井戸を勝手に使うやつとかな」
「ちょっと安心し過ぎてたな、俺も」
アキラはブラッドとオールの言葉に同意した。
「井戸の周りは悪意や毒を感じしたら音がなるようにしてるんだけど」
とブラッド。
「ついでにいきなり明るくなるようにできる?」
アキラは日本にいた頃によくあった人が近づいたら灯りがつく玄関を思い出して言った。
ヨアヒムの言葉にエドモンドが頷く。
「ええ。南部支店の視察に行ってもらってます。街の風邪が落ち着くまで帰ってくるなと父が厳命してます」
とエドモンドが笑う。
「私の父親の方が3つだけ年上なんですけど、ちょくちょく兄ぶってますね、会長の」
と説明してくれる。
「そもそも父は会長のお兄さんの友人だったそうです。会長が15歳で冒険者デビューした時に付き添っていたらしいです。その時には父は18ですでに冒険者として働いていたらしくて。気があったらしくてそれから組んで色々してたみたいです」
エドガーとルトガーは自分の父の経歴を聞いて驚いてる。
「兄さんもエドガーも…きいてなかったの?」
ユリアーナは母の田舎に行く父と馬車の中でそういう話を時々聞いていたらしい。
風邪を引いていたエドガーとジュニアも調子が戻ってきてるので、今日は庭先に作った石窯に火を入れる。石窯に火を入れると聞いてユリアーナがパン生地を捏ね始めた。
「ユリアーナって色々できるんだな」
エドガーが感心してる。
「そりゃそうよ。農場やりたかったから向こうの家で色々覚えたし、おばあちゃんたちだいぶん力もなくなってたしね」
ユリアーナが少しだけ毒を吐く。
「姉さんと私がいたら、あの人たちは姉さんしかみないの。…亡くなった自分の娘を姉さんに重ねてね」
ユリアーナは昔、子供と少女の間くらいの年齢の時に父親に聞いた言葉を思いてしていた。
『カタリナ、母さんと妹は本当によく似ていたよ。二人は仲のいい姉妹だった』
と。ブランカは祖父母の怨念じみた執着を背負っている。母親は自分の分身としてブランカを見ている。あまり気の合う姉ではなかったし、好きな姉でもなかったけど、あの家の怨念は全てブランカが背負ってしまったな、とユリアーナは思っていた。母親の尻の軽さからの中年エルフのストーカー騒ぎも自分よりも、よりブランカが狙われている感じはあった。ジョンには
『あの二人はエルフの血の入っているブランカが特に狙いでしょう』
と教えられた。片方はどうも妖物との混じりだったようだけど、とユリアーナは溜息をついた。己が母親のうかつさと、度し難い美形好きはいかんともしがたいななど、ユリアーナはパン生地を力強く捏ねながら取り留めもなく考え事を繰り広げている。
夕方にデヴィッドが帰ってきてグリーナーとデヴィッドも合流する。
「そうだ、グリーナーは明日から里帰りすることになった」
「そろそろ家から帰れって連絡がうるさくて」
どうもこのところ皆が見てないときに敷地内に使者が来ているらしい。
「…デヴィッド、今回はもう遅いけど。来られてる方に勝手に敷地に入るなとお伝えお願いできるかな」
とアキラの声が低く冷たくなった。
「把握してたけど、挨拶一つないのはどうかと思って」
と付け加えるアキラはかなり怒ってはいるようだった。
「…挨拶いれてないのか、あいつら」
とデヴィッドも驚いているようだった。グリーナーも驚いている。
「グリーナーはデヴィッドの奥さんだからいいけど、使者達は俺が知らない相手だ。そしてギルドのエリアじゃなくてクランのエリアに入るなら最初に一言でいいから挨拶するのが筋だと俺は思ってるんだが」
デヴィッドも頷く。
「とりあえず、明日来訪があったらすぐにこっちに来させる。アキラ、すまなかった」
「最低限の礼儀やルールを知ってる使者を立てて欲しいもんだ」
アキラは溜息をついた。ウルリッヒ兄弟はこういうアキラを見るのは初めてで驚いていた。オールやブラッドはこういう来訪者いるよな、としゃべって言る。
「俺らの家もそういう不躾な奴ら来てたよ」
「そうそう。庭先に入り込んで井戸を勝手に使うやつとかな」
「ちょっと安心し過ぎてたな、俺も」
アキラはブラッドとオールの言葉に同意した。
「井戸の周りは悪意や毒を感じしたら音がなるようにしてるんだけど」
とブラッド。
「ついでにいきなり明るくなるようにできる?」
アキラは日本にいた頃によくあった人が近づいたら灯りがつく玄関を思い出して言った。
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