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再びアキラの章

10 森の国にて 4

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 「王女の顔、覚えてきた」

『匂いもな』

レッドがアキラに念話を飛ばす。アキラは念話で

『グッジョブ』

と返した。

『なんだ、それ』

『古語、かな?いい仕事だって言いたい時に使う。GJって略したりね』

『ふーん。デヴィッドは知ってるのかね』

「デヴィッド、GoodJobってわかるよな?」

デヴィッドはにやり、と笑い右手の親指を上げて答えた。

「下に下げたら逆の意味かつ、侮辱の言葉って事になる」

デヴィッドが不思議な顔をしてるレッドにそう教える。

「アキラは意味わかってそうだから後でレッドに教えてくやってくれ」

アキラは笑いながら頷いた。





 「アキラの古語の知識はどこで習ったの?」

朝食時にボンが訊ねてきた。

「あー、俺がボンより少しだけ大きかった時に高尾じゃない場所にいてな。その場所は古語を外国語として教えてくれる場所だったんだ。だからある程度の古語は理解できるって感じかなー」

「どんなところだったの?」

「東の国とよく似てる、……東の国は古語を喋る人もいるらしいぞ」

今はもう引退したジョージに東の国の避難所、転生や転移してきてこの国に馴染めなかった人間を集めた場所、には英国人やドイツ人、アメリカ人など色んな人種がいるという事だった。

 東の国の一部の人間は異世界、地球の事をよく知っていて入れ階の世界地図も出来ているとアキラは聞いて驚いていた。ジョージは一部持ってきてくれてアキラの目におかしく見えないかと訊いてきたのだ。
 それはかなり正確な地図だった。

「この世界の地図はないの?」

「瑠璃様がいうには『黒龍、白龍レベルの龍の主様達は持ってるはずよ』って」

そんな会話をした夜に黒龍から地図が脳内に送られてきた。精密な地図でアキラが好きなように使うといい、と告げて通信は切られた。



 アキラはそんなことを思い出しながらボンと会話していた。

「俺も古語勉強したいなぁ」

「んなら騎士学校行けばいい。3年ほど寄り道するだけだ」

ボンがぶーと言い出しそうな顔になる。朝食のスープを飲みながらルトガーが静かにボンに言う。

「俺の弟のエドガーは冒険者として武器の扱いや戦いの基礎を身に着ける為に兵学校に行ったよ。色々な武器に触れて自分の得意なものを見極めに行くのもいいよ。それに、学生時代の友達は得難いものだよ」

ルトガーの言葉にボンは少し思うところがあったようだった。

 レッドはさっくりと朝食を終えて出立の用意をする。

「俺は先に潜っとく。皆が来たら合流するよ。あのお嬢ちゃんがやらかす前に始末できればいいけど」

ふーっと溜息をつくとレッドは背筋を伸ばして手を振ってダンジョンに向かった。アキラ達は一両日中の王子達、冒険者クラブの到着を待ち行動を開始する予定である。
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