悪役令嬢はヒロインと関わりたくない【完結】

フェルナンの結婚 【完】

　兄様は……あっさり恋に落ちた。相手は12歳の皇女様。中学から学園に通うので王宮に挨拶に来て、二人で雷に打たれたように固まっていた。
　そう、皇女様も兄に恋をしたようだった。私は皇国の言葉が少し話せるので皇女様が入学するまでの話し相手として呼ばれている。

「ブランシュは……ご兄弟と仲がいいの？」

無邪気に皇女様はジャムとクリームをたっぷり付けたスコーンを頬張る。お互い辞書を挟んでの会話。彼女の事を聞いてみると皇国のシステムがわかりました。
　7つの大きな氏族と15の小さな氏族があり、各氏族の長の血族の娘が皇帝に娶られるのだとか。皇女様はその一番小さな氏族から嫁いだ姫の娘で第19皇女だとか。皇女様、ミーア様の幸運だった所は皇女の中で一番勉強ができて皇后様の眼にとまって、留学させてもらえたことだと12歳ながら悟ったことをおっしゃる。

「皇后さまはこっそり言ったの『もうこの国に戻らなくていいの。外に出られる力がある自分を大事にしてね』って」

　その皇后様から我が家に、有体に言えば『よろしく。預けるからね』みたいな密書が来ている。どうも……兄様とミーア様の『異変』が既に伝わっているようで。

　当事者の兄様は

『あの時の大公の気持ちがわからなくもなくなった』

とかぶつぶつ言ってます。エリーゼは無事に二人目を妊娠。大公様とは相変わらずのいちゃつきぶりだとか。向こうに着いていったバトルメイドからため息交じりの報告が来ているそうです。

　父様と母様は張り切ってしまって、正妃様と陛下にも話を通して皇女様が住まう用に西に別宅を新たに作っています。そう兄様との新居になるらしいです。

　東には私とアルフォンス様用の別宅が建造中です。父様は私を家から出す気はないといいます。……ほんと親ばか。

　まぁ、領地の仕事は今まで担当していた侍従か引き続きやってくれます。アルフォンス様とも良く知ってる間柄のようです。私とアルフォンス様の結婚は彼にかなり喜ばれました。









　　兄様が結婚する頃、私とアルフォンス様の間には男の子と女の子が一人ずついます。ベルトラン兄様のところはまだお子さんがいらっしゃいません。隣の国の大公様とエリーゼの間には……女の子が五人、男の子が一人いてその上で大きなお腹を抱えてます。華奢な人形のようだったエリーゼは妊娠中であることを差し引いてもかなり大きな胸のようです。ふわふわした感じもなくなりいいお母さん、という感じです。
　ベルトラン兄様は一番下の弟を自分の養子にする予定だそうです。問題はベルトラン兄様の奥様。シリル様に夢中でしょっちゅう呼びつけようとしてるみたい。シリル様は逃げ回ってます。

「ベルトランとことを構えるのは得策ではないもの」

と。シリル様は一応、専業作家ローワンとして活躍してます。裏の仕事の方がかなり忙しくて執筆ペースは変わりませんが。秘書の方を連れてらっしゃいます。本人が

「性的なパートナーでもあるかな。一人とじっくり付き合うのも俺には新鮮」

だとか。このまま結婚かと思ってましたが、秘書の方の事情で結婚も子供もなしだそうです。
　正妃様は陛下と一応の仲直りは終わらせたそうです。今は小さな姫がいるので二人で仲良くしているとの事。王太子殿下はジャック殿下で決まりました。フランソワ殿下は奥様とは不仲で有名になっておられてちょっとかわいそうにも感じます。

　なんだかんだと言って収まるところにみんな収まって、これが本当の大団円、かな？


==　完　==

※　金曜日から新作公開です