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【後編】 バレンタインの午後に
(2)入梨奈と千尋
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今まで平田が朝木から呼び出された理由のほとんどが、朝木が高校時代の同級生だった「蓮水千尋」に関するものだった。
「千尋さんに何かあったんですか」
無意味な質問であるのは百も承知だ。
何も起きていないのであれば平田を呼び出すことなんてなかっただろうし、「伝えておきたい」なんて言い方もしない。
この質問は朝木との会話を円滑に進めるためのいわば「枕詞」である。
ちょっとばかりの間を置いた朝木はコップの水に口をつけ、わずかに震える唇の隙間から言葉を発した。
「千尋、消えたの」
ついにそうなったか。
平田は朝木の言葉に妙に納得してしまう。
いつかはこうなるだろうと平田は思っていたし、彼女に関わりのある人間は、遅かれ早かれ千尋が「消える」であろうことは薄々予想していたはずだ。
朝木からしても平田の反応は想定していたものだったらしく、「消えた」という言葉を聞いても顔色を変えない平田を責めようとはしなかった。
二人がコップの水を半分ほど飲んだ後、朝木がようやく「ドリンクバー行く?」と聞いてきた。
手付かずのまま冷めてしまった料理を眺めながら「はい」と返事をした平田に、朝木は「先に行ってきていいよ」と促した。
「千尋さんに何かあったんですか」
無意味な質問であるのは百も承知だ。
何も起きていないのであれば平田を呼び出すことなんてなかっただろうし、「伝えておきたい」なんて言い方もしない。
この質問は朝木との会話を円滑に進めるためのいわば「枕詞」である。
ちょっとばかりの間を置いた朝木はコップの水に口をつけ、わずかに震える唇の隙間から言葉を発した。
「千尋、消えたの」
ついにそうなったか。
平田は朝木の言葉に妙に納得してしまう。
いつかはこうなるだろうと平田は思っていたし、彼女に関わりのある人間は、遅かれ早かれ千尋が「消える」であろうことは薄々予想していたはずだ。
朝木からしても平田の反応は想定していたものだったらしく、「消えた」という言葉を聞いても顔色を変えない平田を責めようとはしなかった。
二人がコップの水を半分ほど飲んだ後、朝木がようやく「ドリンクバー行く?」と聞いてきた。
手付かずのまま冷めてしまった料理を眺めながら「はい」と返事をした平田に、朝木は「先に行ってきていいよ」と促した。
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