異世界で高級男娼になりました

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時と場合を考えて

「最近アキトの元気がない気がする」
「は…?」

何を突然言い出すかと思えば、とヴァルターは後ろ髪を掻く。よくもまあこのタイミングで、この状況下でそんな世迷言を口に出来るなと半ばあきれながらも、それでもその呟きの真意を問うように話の水を向ける。これもまあ所謂ひとつの上官の務め、というやつである。(多分違うけど)

「どうしてそう思うんだ?」
「笑っていても、何処か寂しそうに見える。以前と比べて少し、距離が出来たような……そんな気がしてならない」
「ほう、距離ねえ」

何か心当たりはあるのか?と問えば、アーデルベルトは腕を組んで考え込んでしまう。それがまた絵になるような美しさなのが何か解せない。どんな表情もサマになってしまうのが、果たして良いことなのか悪いことなのかこの男を見ているとわからなくなるなあとヴァルターは内心で溜息を吐く。

「アキトにだって、色々あるだろう。悩みもあれば隠しておきたい秘密だってある。なんでもかんでも知りたいと欲張るのは、傲慢だと思うぞ」
「傲慢…」
「お前に出来るのは、精々アキトにとって良い客でいることだけだ。そこのところ、勘違いするなよ?」
「ですが、俺はアキトのことを…」
「あー言うな言うな!それ以上は口にするな」

一度言葉にしちまうとそれは真実になっちまうからな、とヴァルターはアーデルベルトの言葉を遮る。アーデルベルトが何を言わんとしているかなんて百も承知の上で、だがそれを聞いてしまえば確実に巻き込まれるのは目に見えている。

悪いが、そこまで面倒見きれないぜ、というのがヴァルターの本音であった。



「お前がアキトに好意があるのはわかってるさ。というか、ウチの騎士団の殆どの奴がそうだ。この意味、わかるよな?」
「………………」

うわー、怖い怖い、とヴァルターは内心で白目を剥く。めちゃくちゃ睨まれている…美形の鬼の形相ほんとしんどいわあ…

なんて思いつつも顔には出さずにヴァルターは続ける。一時の火遊びならいざ知らず、これ以上本気になられたら双方幸せになんて絶対になれやしない。それがわかっていて背中を押してやるなんて無責任なことは、ヴァルターには出来なかった。

「お前は侯爵家の嫡男だろう。いずれ良家の子女と婚約し、子供を儲ける義務がある」

アキトを一生妾として囲うつもりか?そう問うと、アーデルベルトはぐっと言葉を飲み込むようにその薄い唇を噛み締めた。血が滲む程に、強く。

その様子を見て、やはりヴァルターは溜息を吐く。これ以上の問答は不毛だと言わんばかりにアーデルベルトの肩を叩いてこう告げる。


「………まあ、とりあえずだ。この話は一旦置いておくとして」

今は目の前の魔獣の群れを殲滅することに全力を尽くして欲しいんだがなと、ヴァルターは至極真っ当な意見を口にするのであった。

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