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立ってる者は親でも使え
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「私、もう命狙ったりしないわよ、だそうです」
「…それを信じろと?」
「お気持ちはわかりますが、今回に限っては信じてもいいのではないかと思いますけどね」
「何故だ?エルヴィン」
「ルクシュの証言にもありましたが…」
恐らくリーリエ嬢は龍之介に好意を持っていると思われます、とエルヴィンは言った。
俄には信じ難い、という顔をするレイノルドに、けれどルクシュも同意を返す。
「俺もそう思います。理由はよくわかりませんけど、リーリエは龍之介に会ってからというもの人が変わったように大人しくなりました。まあ我儘は相変わらずですけど、以前程の横暴さはなくなってきたなと感じます」
「…今朝も朝食が気に食わないと暴れていなかったか?」
「あのくらいは通常運転です」
可愛いもんですよ、とルクシュが遠い目をするので、レイノルドは些か申し訳なくなった。使用人たちにはリーリエのことで苦労を強いているという意識が少なからずあった為である。
まあだからと言って、自分で対処しようとは微塵も思わないのがレイノルドがレイノルドたる所以なのだけれど。
「リーリエの主な異能は洗脳とせん妄だ。能力が制限されているとは言っても、厄介なことに変わりはない」
「普通に人ひとりくらいなら殺傷出来るだけの魔力も残っているでしょうしね。彼女にかかれば人間のひとりやふたり、赤子の手をひねるようなものでしょう」
「ほらみろ、そんな女とリュウをふたりきりになどさせられるか」
「だからこそ、ですよ。それだけの力がありながらも、彼女は憎い恋敵であるはずの龍之介を殺さなかった。…殺したくない理由があったということでしょう?」
「どんな理由があるっていうんだ」
「龍之介には不思議な魅力があります」
エルヴィンはそう言うと、監視映像の中でぐうたらしている龍之介の姿を指差しながらこう指摘する。
「あんな太々しい態度の奴隷が他にいると思いますか?」
「「いないな」」
「でもどうしてか私たちは彼の態度を許容してしまっています。寧ろ最初から、何故か不快に感じなかった」
「そう言われてみれば…」
そうかも、とレイノルドもルクシュも思う。生意気だな、と思うことはあってもそれを不愉快に感じたこともなければ腹を立てたこともない。
なんとなく初めから、そういうものだと受け入れてしまっていた感がある。
「まあ、なんというか、不思議な方であることは確かです。リーリエ嬢もきっと、同じなのではないでしょうか?」
「理由はわからないけど、ただなんとなくそばにいると居心地がいい、みたいな?」
「…そんなふうに思っていたのか、ルクシュ」
「あっ、いやっ、その……えーと、……」
「良くも悪くも自然体でいられると、そういうことですね?ルクシュ」
「あっ、はい!そうです!そんな感じです!」
「………………」
なんだか変な雰囲気になってしまった。
エルヴィンは僅かに溜息を吐いて、再び話を元に戻す。
「とにかく、我々が龍之介に対して友好的であるように、彼女もまた彼の良き友人足り得るのではないでしょうか?と言いたかったわけです」
「それは…」
「……………」
もう一押しかな、とエルヴィンは思う。この際だから言わせてもらうがリーリエがこのまま屋敷に滞在しているのは害悪でしかないのだ。
それでもレイノルドは立場上、彼女を袖にすることは出来ない。ならばリーリエの方から態度をあらためてもらうしかないのである。
(龍之介には、その足がかりとなってもらう)
その為にはまずふたりを接触させて、親しくなってもらう必要があるのだ。
先程レイノルドに提言したことは嘘ではないし、ふたりはもしかしたら良い関係になれるのかもしれない。その可能性は充分にあるとエルヴィンは算段していた。
そうなればこっちのものである。龍之介を使ってリーリエには上手いことレイノルドをあきらめさせ、とっとと屋敷から出て行って頂こう。是非そうしよう。というわけである。
「……わかった。監視付きでなら面会を許可する」
「ありがとうございます」
「ルクシュ、お前も傍に付いていろ」
「わ、わかりました…」
こうして、リーリエと龍之介は晴れて公認の茶飲み友達となったのであった。
「…それを信じろと?」
「お気持ちはわかりますが、今回に限っては信じてもいいのではないかと思いますけどね」
「何故だ?エルヴィン」
「ルクシュの証言にもありましたが…」
恐らくリーリエ嬢は龍之介に好意を持っていると思われます、とエルヴィンは言った。
俄には信じ難い、という顔をするレイノルドに、けれどルクシュも同意を返す。
「俺もそう思います。理由はよくわかりませんけど、リーリエは龍之介に会ってからというもの人が変わったように大人しくなりました。まあ我儘は相変わらずですけど、以前程の横暴さはなくなってきたなと感じます」
「…今朝も朝食が気に食わないと暴れていなかったか?」
「あのくらいは通常運転です」
可愛いもんですよ、とルクシュが遠い目をするので、レイノルドは些か申し訳なくなった。使用人たちにはリーリエのことで苦労を強いているという意識が少なからずあった為である。
まあだからと言って、自分で対処しようとは微塵も思わないのがレイノルドがレイノルドたる所以なのだけれど。
「リーリエの主な異能は洗脳とせん妄だ。能力が制限されているとは言っても、厄介なことに変わりはない」
「普通に人ひとりくらいなら殺傷出来るだけの魔力も残っているでしょうしね。彼女にかかれば人間のひとりやふたり、赤子の手をひねるようなものでしょう」
「ほらみろ、そんな女とリュウをふたりきりになどさせられるか」
「だからこそ、ですよ。それだけの力がありながらも、彼女は憎い恋敵であるはずの龍之介を殺さなかった。…殺したくない理由があったということでしょう?」
「どんな理由があるっていうんだ」
「龍之介には不思議な魅力があります」
エルヴィンはそう言うと、監視映像の中でぐうたらしている龍之介の姿を指差しながらこう指摘する。
「あんな太々しい態度の奴隷が他にいると思いますか?」
「「いないな」」
「でもどうしてか私たちは彼の態度を許容してしまっています。寧ろ最初から、何故か不快に感じなかった」
「そう言われてみれば…」
そうかも、とレイノルドもルクシュも思う。生意気だな、と思うことはあってもそれを不愉快に感じたこともなければ腹を立てたこともない。
なんとなく初めから、そういうものだと受け入れてしまっていた感がある。
「まあ、なんというか、不思議な方であることは確かです。リーリエ嬢もきっと、同じなのではないでしょうか?」
「理由はわからないけど、ただなんとなくそばにいると居心地がいい、みたいな?」
「…そんなふうに思っていたのか、ルクシュ」
「あっ、いやっ、その……えーと、……」
「良くも悪くも自然体でいられると、そういうことですね?ルクシュ」
「あっ、はい!そうです!そんな感じです!」
「………………」
なんだか変な雰囲気になってしまった。
エルヴィンは僅かに溜息を吐いて、再び話を元に戻す。
「とにかく、我々が龍之介に対して友好的であるように、彼女もまた彼の良き友人足り得るのではないでしょうか?と言いたかったわけです」
「それは…」
「……………」
もう一押しかな、とエルヴィンは思う。この際だから言わせてもらうがリーリエがこのまま屋敷に滞在しているのは害悪でしかないのだ。
それでもレイノルドは立場上、彼女を袖にすることは出来ない。ならばリーリエの方から態度をあらためてもらうしかないのである。
(龍之介には、その足がかりとなってもらう)
その為にはまずふたりを接触させて、親しくなってもらう必要があるのだ。
先程レイノルドに提言したことは嘘ではないし、ふたりはもしかしたら良い関係になれるのかもしれない。その可能性は充分にあるとエルヴィンは算段していた。
そうなればこっちのものである。龍之介を使ってリーリエには上手いことレイノルドをあきらめさせ、とっとと屋敷から出て行って頂こう。是非そうしよう。というわけである。
「……わかった。監視付きでなら面会を許可する」
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こうして、リーリエと龍之介は晴れて公認の茶飲み友達となったのであった。
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