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他人の振りをしたい。他人だけど
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「爵位は違いますけれど、同じ教室で学んだ同士なんです」
スティーブンは今度は無言で睨みあうブリジットとワンダを完全無視して教えてくれた。
アメリアはちらちらと背後を見る。
ガルルルとうなり声さえ聞こえてきそうな雰囲気だ。
キャロルは割って入ったものかどうか悩んでいる。
「いいんですか、あれ」
フレッドは不思議そうな顔をした。
「別にいいですよ、どうせ父の仕事の都合で付き合っていただけなんですし」
あっさりと言い切った。
ワンダは父親の仕事を盾に交際を迫っていたそうだ。そのあたりは公式設定とそれほどに変わらない。
そして、それに割って入ったのがブリジット。ゲームそのままの展開を繰り広げているらしい。
デレインがかなり変則を入れたので、かえってそういうのが新鮮な気すらした。
そして、フレッド、どうしてあれを放置できるんだ。
「あのご婦人たちは何?」
スティーブンがアメリアの気持ちを察してくれたのか代わりに訊いてくれた。
「ああ、僕とどちらが付き合うか揉めている人たちだよ」
あっさりと言い切った。
「それでどちらが付き合っている相手なんですか?」
思わず食い気味に聞いた。
「どっちでもいいんだ」
フレッドは本気でどうでもいいらしい。
「ブリジットは若いし、爵位も低い、つまり結婚してもエラそうな態度をとられないってことだろう、ワンダは資産家なので、ちょっとエラそうな態度をとられるかもしれないけど、年齢的に崖っぷちそうでかい態度はとらないだろうしね」
横で聞いていたキャロルも絶句している。
考えてみれば、薔薇の言の葉はヒロインと悪役令嬢のバトルも売りの一つだ。普通、女同士があんなふうにいがみ合っていたら引いてしまうんじゃないだろうか。
しょせんはゲームとアメリアは割り切っていたが。
よく考えると攻略対象、ろくな男がいない気がしてきた。
背後では一触即発の空気が再び盛り上がってきている。
ブリジットとワンダはいつ手が出てもおかしくない。
「いや、もう出てるわ」
キャロルがそっと耳打ちしてきた。
ワンダがブリジットのつま先をぐりぐりと踏みにじっていた。
そしてブリジットはワンダが近づいてきたのをいいことに肘をぐりぐりとわき腹にめり込ませている。
ついでに言えば、たぶんきつく締めたコルセットのせいでブリジットの攻撃は効いていないと思われる。
「そうね、ちょっとコルセットのラインにお肉が乗っているから」
いつの間にか胸だけでなく背中やお中にも肉がついている。ストレスで暴食してしまったのだろうか。
「あの」
おそらくブリジットはこちらに気づいていない。
「どうしよう」
「放っておくしかないんじゃない?」
キャロルはあきらめ顔だ。ブリジットと会って何をしようと思っていたわけではない、キャロルとは共同戦線を張ったがそれもあくまで成り行きだ。
「二人とも、背水の陣だね」
こんな騒ぎを起こした以上まともな嫁入りは望めまい、これからどうするつもりだろう。
「できれば、かかわりたくない」
二人の意見が一致した時、ブリジットが叫んだ。
スティーブンは今度は無言で睨みあうブリジットとワンダを完全無視して教えてくれた。
アメリアはちらちらと背後を見る。
ガルルルとうなり声さえ聞こえてきそうな雰囲気だ。
キャロルは割って入ったものかどうか悩んでいる。
「いいんですか、あれ」
フレッドは不思議そうな顔をした。
「別にいいですよ、どうせ父の仕事の都合で付き合っていただけなんですし」
あっさりと言い切った。
ワンダは父親の仕事を盾に交際を迫っていたそうだ。そのあたりは公式設定とそれほどに変わらない。
そして、それに割って入ったのがブリジット。ゲームそのままの展開を繰り広げているらしい。
デレインがかなり変則を入れたので、かえってそういうのが新鮮な気すらした。
そして、フレッド、どうしてあれを放置できるんだ。
「あのご婦人たちは何?」
スティーブンがアメリアの気持ちを察してくれたのか代わりに訊いてくれた。
「ああ、僕とどちらが付き合うか揉めている人たちだよ」
あっさりと言い切った。
「それでどちらが付き合っている相手なんですか?」
思わず食い気味に聞いた。
「どっちでもいいんだ」
フレッドは本気でどうでもいいらしい。
「ブリジットは若いし、爵位も低い、つまり結婚してもエラそうな態度をとられないってことだろう、ワンダは資産家なので、ちょっとエラそうな態度をとられるかもしれないけど、年齢的に崖っぷちそうでかい態度はとらないだろうしね」
横で聞いていたキャロルも絶句している。
考えてみれば、薔薇の言の葉はヒロインと悪役令嬢のバトルも売りの一つだ。普通、女同士があんなふうにいがみ合っていたら引いてしまうんじゃないだろうか。
しょせんはゲームとアメリアは割り切っていたが。
よく考えると攻略対象、ろくな男がいない気がしてきた。
背後では一触即発の空気が再び盛り上がってきている。
ブリジットとワンダはいつ手が出てもおかしくない。
「いや、もう出てるわ」
キャロルがそっと耳打ちしてきた。
ワンダがブリジットのつま先をぐりぐりと踏みにじっていた。
そしてブリジットはワンダが近づいてきたのをいいことに肘をぐりぐりとわき腹にめり込ませている。
ついでに言えば、たぶんきつく締めたコルセットのせいでブリジットの攻撃は効いていないと思われる。
「そうね、ちょっとコルセットのラインにお肉が乗っているから」
いつの間にか胸だけでなく背中やお中にも肉がついている。ストレスで暴食してしまったのだろうか。
「あの」
おそらくブリジットはこちらに気づいていない。
「どうしよう」
「放っておくしかないんじゃない?」
キャロルはあきらめ顔だ。ブリジットと会って何をしようと思っていたわけではない、キャロルとは共同戦線を張ったがそれもあくまで成り行きだ。
「二人とも、背水の陣だね」
こんな騒ぎを起こした以上まともな嫁入りは望めまい、これからどうするつもりだろう。
「できれば、かかわりたくない」
二人の意見が一致した時、ブリジットが叫んだ。
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