5 / 36
哀れな妃
しおりを挟む
その後宮の外観はもともとは壮麗な建物だったんじゃないかなという痕跡を残したままダンジョン化していた。
色の違う石を模様になるように組み合わせた壁、どれほど手間がかかったか考えたくない壁が巨大な建物すべてに使われている。
それがまるで心臓のように脈動していた。
本来は石なのに滑らかに。
聞いた部屋の配置は奥のほうの上級妃、国の大幹部というべき重鎮の親戚の姫君の住む場所。当然ちょっとしたお屋敷ぐらいの敷地面積だ。
それが複数。
そしてその外側を囲んで中級妃、中堅どころの貴族の姫君、これも庶民の家よりだいぶ広いが二十ほど、下級妃は一部屋だが、それでも百人ほどいたらしい。
確かにダンジョン化する可能性のある敷地面積だ。
逃げることができたのはほとんどが下級妃と使用人をしていた女たちだけだった。
もともと出入り口に近い場所に住んでいたのが幸いしたのだ。
そして、その内部は奥行くにしたがって複雑になり、いろいろとダミーの道なんかもあるという。ダンジョン化しやすい迷いやすい場所だ。
モザイク状態の壁がうねうねとうごめいている。
このまま放置すれば後宮だけでなく王宮まで飲み込む可能性もある。
あれは生き物のように成長するのだ。
ギルマスへ依頼があったのはダンジョンが発生してから一週間後だったそうだ。
その間ずっと何をしていたのかというと会議をしていたらしい。
つまり騎士団を向かわせていいのか、それで、後宮の男子禁制男子は宦官になって入れの規則を守るべきか守らざるべきかで一週間言い争っていたらしい。
御姫様の怨霊に祟られてしまえばいい。
バジリコは心から後宮内にいたお姫様方に同情した。
「バジリコ、何辛気臭い顔してんの?」
ミントがバジリコの顔を覗き込む。
よりによってこいつとパーティを組む羽目になるとは。
バジリコと見んとは基本的に馬が合わない。バジリコは細く長くをモットーにしているが、ミントは太く短く生きることをモットーにしている節がある。
それだけならお互い関係ないと言えばないのだが。ことあるごとにミントはバジリコに絡んでくる。
うざい。
「あのね、これから生き残ったお姫様と面談なの、余計な口を利かないでね」
ジンジャーがミントにくぎを刺す。
ミントが言わなくていいことをぺらぺらと喋るたちなのはみんな知っている。
生き残った女たちはほとんどが錯乱状態でかろうじて口を利けるのはほんの数人だという。
思ったより生き残っている。
そこにいたのは薄茶の髪を背中に流した美少女だった。
手足に包帯を巻かれ、ゆったりとした椅子に座ったまま放心していた。
「シトリン、話せますか」
メイドらしい女性が椅子の傍らで何とか正気付かせようとしている。
閉じていた眼を開くと紙より薄い薄茶の瞳が見えた。
「何がありましたか?」
「床がうごめいて、床から何か変なものが、訳が分からなくて、そのうちジャスパーがバラバラになって、手が私のほうに」
そこまで話すとその可愛らしい顔をゆがめて悲鳴を上げ始めた。
その小さな体によくそれだけの声量がというほどの悲鳴を。
メイドらしい女性が何やら小瓶をもってシトリンという少女の口に近づけた。
シトリンがぐったりするとメイドは、ほかの部屋に行きますか。と尋ねた。
色の違う石を模様になるように組み合わせた壁、どれほど手間がかかったか考えたくない壁が巨大な建物すべてに使われている。
それがまるで心臓のように脈動していた。
本来は石なのに滑らかに。
聞いた部屋の配置は奥のほうの上級妃、国の大幹部というべき重鎮の親戚の姫君の住む場所。当然ちょっとしたお屋敷ぐらいの敷地面積だ。
それが複数。
そしてその外側を囲んで中級妃、中堅どころの貴族の姫君、これも庶民の家よりだいぶ広いが二十ほど、下級妃は一部屋だが、それでも百人ほどいたらしい。
確かにダンジョン化する可能性のある敷地面積だ。
逃げることができたのはほとんどが下級妃と使用人をしていた女たちだけだった。
もともと出入り口に近い場所に住んでいたのが幸いしたのだ。
そして、その内部は奥行くにしたがって複雑になり、いろいろとダミーの道なんかもあるという。ダンジョン化しやすい迷いやすい場所だ。
モザイク状態の壁がうねうねとうごめいている。
このまま放置すれば後宮だけでなく王宮まで飲み込む可能性もある。
あれは生き物のように成長するのだ。
ギルマスへ依頼があったのはダンジョンが発生してから一週間後だったそうだ。
その間ずっと何をしていたのかというと会議をしていたらしい。
つまり騎士団を向かわせていいのか、それで、後宮の男子禁制男子は宦官になって入れの規則を守るべきか守らざるべきかで一週間言い争っていたらしい。
御姫様の怨霊に祟られてしまえばいい。
バジリコは心から後宮内にいたお姫様方に同情した。
「バジリコ、何辛気臭い顔してんの?」
ミントがバジリコの顔を覗き込む。
よりによってこいつとパーティを組む羽目になるとは。
バジリコと見んとは基本的に馬が合わない。バジリコは細く長くをモットーにしているが、ミントは太く短く生きることをモットーにしている節がある。
それだけならお互い関係ないと言えばないのだが。ことあるごとにミントはバジリコに絡んでくる。
うざい。
「あのね、これから生き残ったお姫様と面談なの、余計な口を利かないでね」
ジンジャーがミントにくぎを刺す。
ミントが言わなくていいことをぺらぺらと喋るたちなのはみんな知っている。
生き残った女たちはほとんどが錯乱状態でかろうじて口を利けるのはほんの数人だという。
思ったより生き残っている。
そこにいたのは薄茶の髪を背中に流した美少女だった。
手足に包帯を巻かれ、ゆったりとした椅子に座ったまま放心していた。
「シトリン、話せますか」
メイドらしい女性が椅子の傍らで何とか正気付かせようとしている。
閉じていた眼を開くと紙より薄い薄茶の瞳が見えた。
「何がありましたか?」
「床がうごめいて、床から何か変なものが、訳が分からなくて、そのうちジャスパーがバラバラになって、手が私のほうに」
そこまで話すとその可愛らしい顔をゆがめて悲鳴を上げ始めた。
その小さな体によくそれだけの声量がというほどの悲鳴を。
メイドらしい女性が何やら小瓶をもってシトリンという少女の口に近づけた。
シトリンがぐったりするとメイドは、ほかの部屋に行きますか。と尋ねた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました
Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。
そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。
それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。
必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが…
正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる