寓意による遺言

karon

文字の大きさ
2 / 11

2

しおりを挟む
 とにかく情報が欲しい、犯行現場までは電車一本で行ける。というわけでちょっと行ってみた。
 たどり着いたのは、そこそこ築浅なマンション。周辺に住んでいるらしい人物たちもそれなりにいいところにお勤めな雰囲気を醸し出している。
 そんなところに大学生の一人暮らし、一番安い部屋だったとしてもまあお坊ちゃんと考えていいな。
 そして、明らかにこの辺のハイソっぽい雰囲気にそぐわない人たちもちらほらいる。おそらく野次馬かなんかだろう。
 いかにもワイドショーあたりが食いつきそうな事件なのは認める。
 なんだか聞き込みしている週刊誌記者なんかもいるようだ。
 まあいい、そういう人間に成りすまそう。間違っても容疑者の弟なんてばれないように。
 そして、大変口の軽そうなご婦人を発見した。
 いや、この顛末が楽しくて楽しくてしょうがない、話したくて話したくて相手を探しているらしいおばさまだ。
 なんでも死体発見に居合わせたらしい。
 そのおばさまの言うには、二階堂とかいう腐れ外道の所業はご近所では公然の秘密というやつだったらしい。
 まあ、毎日のように別の女が出入りしていればなんかおかしいと思うだろう。
 おとといはショートカットのカジュアルスタイルの女、昨日はフェミニンなセミロングヘア、今日はプリンブロンドに染めたロングヘア。明日はいったい誰だろうってもんだ。
 姉貴はボブカットだった。セミロングヘアは牧羽鏡子あたりか、金髪に染めてというのは扇谷誠だろう。ショートカットは新藤真理だろうな、前に見た時そうだったし。
 後、写真で確認した限りでは八ツ屋未来はセミロング佐藤絵里はどうだろう。
 ただ、死亡推定時刻近辺に見かけたその女は黒づくめで、髪は帽子に押し込まれていたらしい。
 付近の住民はどうも女を髪型で見分けていたらしいので、顔の造作については細かいことは覚えていないらしい。
 この証言からわかるのは明らかに計画的犯行であり、髪を帽子に押し込んだのはどの女かわからなくするため、黒づくめの格好は返り血が目立たない色にまとめたからだからだろう。
 そして、普段の自分と全く別の格好をしたろうし、他の女と間違われたかった。他の女の存在をはっきりとわかっていたということだ。
 確率六分の一俺なら賭けない危うい賭けだ。
 そして、おばさまは死体発見の経緯を楽しそうに語る。
 なんでも二階堂の母親が訪ねてきたらしい。
 息子の所業を知っていたのかどうか叔母さまは親切に部屋まで案内したという。
 おそらくワクワクとした顔で、もしかしたら連れ込んだ女と母親が鉢合わせするかもしれないと期待していたと悪びれることなく語った。
 そしてもの言わぬ物体と化した男の面汚しを発見したという。
 以前聞いたとおり、扇を手に前方にさすように伸ばし、のばした先にあったのは姿見だった。
 そして背中に刃物が突き立っていた。おそらく出刃包丁。
 そして、部屋の中は整然と雑多のものが棚の中に鎮座していたという。
 言った何に使ったのか意味不明なもの。
 美術専攻なのでオブジェでもあったんだろうか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

いつまでもドアマットと思うなよ

あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

処理中です...