寓意による遺言

karon

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 うちに帰ると母親は暗い顔をして居間に座り込んでいる。
 食事は最近煮込み料理ばっかりだ。材料を刻んで鍋に入れておけばってやつ。
 昨日はカレー、おとといはシチュー、その前はおでん。
 煮込んでる鍋を見ながらぼうっとしている。
 普段はこれにサラダなんかの副菜もつくけど、それもなし。
「なんかあった?」
「電話があったの、二階堂さんから」
「何やってんだよ警察、何で人んちの電話番号ばらすんだよ」
 こういう無責任な行動でストーカー殺人が起きたってのに学習しないのかよ。
「あの人、今大変みたい」
 だろうなと思うが、どこか生気の抜けた顔で母ちゃんはぶつぶつ呟く。
「ご近所中にひそひそされてるんだって、みんなが後ろ指さして笑うって、私たち被害者なのにって泣いてた」
 まあ死んだいきさつがいきさつだ、そりゃそうなるだろう。
「昔ね、お母さんも漫画なんか読んだのよ」
 いきなり脈絡のない話になる。
「主人公の女の人がね、恋人のお葬式に出席したの。そうしたら親公認の彼女って人が泣いて居て、それから友達が彼女はこっちだろうって、もう一人の女の子を指さすの、それで大揉めになって帰ろうとしたら、あの時一緒にいた人だって主人公が引っ張り出されて」
「ああ、修羅場だな」
「そうなの、このご両親、お葬式終わったら引っ越さなきゃって思ったわ、そこまで描いてなかったけど」
 だからいったい何が言いたいの。
「あのご両親は今それより悪い状況よね」
 そりゃ、殺人だし、騙した女の数も倍だし。
 俺はこめかみをもんだ。
「あのな、母ちゃん。他人事じゃねえんだよ、今うちが、毛利さんのお嬢さん、男に騙されて刺したんですってッて、ご近所でひそひそされる瀬戸際なんだよ」
 他人に同情できる立場じゃねえし、それに諸悪の根源二階堂さんちの坊ちゃんだし、何考えてんだよ。
「そんなこと言わなくても」
 母ちゃん、涙目、もう知らん。
「飯いらね」
 付き合っていられんし、食欲もない。
 とりあえず、引き籠ってる姉貴と情報整理だ。
 姉貴はプリントアウトしたサイト閲覧したページを机の上に積んでぐっすり寝ていた。
 俺はプリントアウトした紙をちょっと見てみた。
 プリントアウトした画像は日本画だった。
「おいこら?」
 ベッドを蹴って姉貴を叩き起こした。
「なんで日本画なんか検索してんだよ」
「だってしょうがないじゃない、扇って、日本発生なんだもん」
「え、そうなの? でもマリーアントワネットとか扇持ってる肖像があるよね?」
「そうよ、扇に関する情報をググりまくったの」
 画像には扇を散らした屏風の写真が貼られていた。
「うーんでも相手は西洋画で」
「何言ってるの、相手は学問でやっていたのよ、日本画と西洋画が影響しあってっていうのは有名じゃない、ゴッホの描いた日本画模写って知らないの?」
 聞いたことはある。
 俺は無心に紙をめくった。
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