パンデミック

karon

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関係者は立ち入り禁止にしたい

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 警察に行ってみたが、はかばかしい返事はなかった。
 成人が数時間行方が知れないぐらいのことで、いちいち警察は動かない。
 むろん病人の送迎をしてくれたことも言ったが、警察の返事はもう少し待ったほうがいいとだけだった。
「いや、わかってたけどね」
 ゆかりはそう言って自分のシフトが終わる時間を確かめた。
 やはり一度総合病院に行って確かめるべきだと思った。
 シフト終了まで三時間、病院の面会時間までにはぎりぎりというところだろう。
 
 佐藤和夫は発熱からくるだるさに耐えていた。
 周りを見回せば、病院内の備品。使えそうなものを物色することはできそうだ。
 おそらく消毒薬の類と思われる瓶。未使用のリネン類。トイレットペーパーなどの備品。さすがに医療関係の道具は置いていない。
 箱買いされているマスクを引っ張り出してみた。
「消耗品倉庫だな」
 佐藤はリネンの包装紙を破った。
 真っ白な布を裂いて適当な幅の紐を作る。
 紐は役に立つ、けがの治療にも、敵を倒すにも。
 紐をポケットにしまう。さすがに病院で用意されているシーツだ、なかなか丈夫な布を使っている。
 閉じ込められているといってもこんな普通の施設の鍵付きの部屋をうまく破壊するなど彼にはたやすい。
 そろそろ動きますか。
 音に乗せないままそう呟く。
 ありがたいことにアルコールの瓶もあった。
 これにライターなどあれば本当に役に立つ。
 しかし、さすがに爆発物取り扱い免状が役に立つようなものは発見できなかった。
 そこはあきらめようと。息を吐く。
 ドアノブで鍵をかけたとしても、引っかかっている場所さえ切れてしまえば。
 服に仕込んだ糸鋸で、その部分を切断してしまえばドアの鍵など何の意味もなくなるのだ。
 ドアの隙間に差し入れられた糸鋸は簡単にドアノブを固定しているでっぱりを切断した。
 彼はノブを握る、鍵が破壊されたことを悟られないように固定して外の様子をうかがう。
 足早に歩き回る足音。いずれもらかいゴム素材の靴底の履物を履いているところから看護師と見ていいだろう。
 今病院で何が起きているのかわかっているのか、それとも何も知らないのか、もう少し人通りが落ち着くまで待つことにした。
 身体はだるいが、ごまかさすことはできるぐらいだ。
 本当にこれで大丈夫なのかは知らないが。この作戦を考えたやつを恨む以外にない。
 銀縁眼鏡を軽く押し上げた。
 眼鏡はもともと単なる偽装だ。彼の視力に何の問題もない、容姿を少しでもごまかすためと、何やらギミックでも仕掛けてあるのではと疑う者もいるので何の変哲もない眼鏡もおとり程度には役に立つのだ。
 目標はこの病院内にいるが、何も知らないであろう一般医師や看護師にはできるだけ情報を与えたくない。
 彼は息を詰めて廊下の様子をうかがっていた。
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