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脱走
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看護師は在庫のマスクを取りに行ったはずだった。
しかし、どうも変だ、ドアノブを回してもいないのにあっさり開いた。
よく見ればドアノブは本来なら飛び出している部分が無くなっている。
「あれ、そこあいたの?」
通りかかった同僚が怪訝そうな顔をした。
「どうかしたの?」
「さっき鍵がかかっていたのよ、普段は受付終了時間まで鍵なんかかけないのに」
看護師は再びドアノブを観察した。そしてドアノブを回してみる。回らない、鍵がかかっていた時と同じ感触。
鍵がかかったままでそのカギは破壊されている。
数秒思考を空回りさせていたが。おもむろに中に踏み込んだ。
「どうかしたの?」
同僚が不思議そうに尋ねたが封が切られたリネンを見つけ慌てて周囲を見回す。
今は誰もいない。
「荒らされているみたい」
「ちょっと、こんなところをどうして荒らすわけ、貴重品なんておいてないのに」
ここはあくまで安価な備品を置いておくだけの部屋だ。鍵はあるが日常的に欠けられるわけではない。
「誰かいる?」
「いないけど、どうして?」
同僚は何やら考え込むような表情を浮かべた。
「リネン以外になくなっているものはない?」
在庫の詳しい状況は総務あたりに確認しなければならないが、差し当たってごっそり減っているものはないようだ。
ここは盗難の心配のあるようなものは置いてないはずだ。
例えば注射器や薬剤などという違法な利用法があるものは別の場所に置いてある。
そこはきっちり施錠できるようになっているし出入りは完全に調べられている。
「何か減っているような気はするけど、よくわからないわ」
看護師はそう言って首をかしげた。
「とにかく私は上に知らせてくるから」
そそくさと去っていく同僚を見ながら看護師はこのところおかしなことばかり起きるとこめかみをもんだ。
佐藤和夫は在庫置き場から持ち出したもので変装していた。
病院にいて一番目立たない格好、患者が着る寝間着を着こんでいたのだ。
マスクをすれば人相も隠せるし、こちらでは伝染性疾患が流行っているのでそれもごまかせる。
そして、佐藤和夫は今現在仮病ではなく本当に病人なのだ。この格好で待合室に座っていれば彼が侵入者だと気付ける人間はいない。
軽くせき込みながら周囲の様子を観察する。
人が多い。この規模の町ならいるであろう患者の数倍はいるだろう。
高齢化が進んでいるとしてもやはり感染は広がっている。
病人ではないが、何故か受付で途方に暮れている少年がそこに立ち尽くしていた。
そこに見覚えのある女が駆け寄ってくる。
さっきのホテルにいた受付嬢だ。
「大丈夫、お母さん居た?」
少年は泣きそうな顔で首を横に振る。
「本当に病院に行ったんだよね」
「奏よ、病院はここだって言ってた」
呉羽と一緒に行方不明になっているというホテル職員の話をしている。
この格好で話しかけるわけにもいかない、どうしようかと佐藤は首をひねった。
しかし、どうも変だ、ドアノブを回してもいないのにあっさり開いた。
よく見ればドアノブは本来なら飛び出している部分が無くなっている。
「あれ、そこあいたの?」
通りかかった同僚が怪訝そうな顔をした。
「どうかしたの?」
「さっき鍵がかかっていたのよ、普段は受付終了時間まで鍵なんかかけないのに」
看護師は再びドアノブを観察した。そしてドアノブを回してみる。回らない、鍵がかかっていた時と同じ感触。
鍵がかかったままでそのカギは破壊されている。
数秒思考を空回りさせていたが。おもむろに中に踏み込んだ。
「どうかしたの?」
同僚が不思議そうに尋ねたが封が切られたリネンを見つけ慌てて周囲を見回す。
今は誰もいない。
「荒らされているみたい」
「ちょっと、こんなところをどうして荒らすわけ、貴重品なんておいてないのに」
ここはあくまで安価な備品を置いておくだけの部屋だ。鍵はあるが日常的に欠けられるわけではない。
「誰かいる?」
「いないけど、どうして?」
同僚は何やら考え込むような表情を浮かべた。
「リネン以外になくなっているものはない?」
在庫の詳しい状況は総務あたりに確認しなければならないが、差し当たってごっそり減っているものはないようだ。
ここは盗難の心配のあるようなものは置いてないはずだ。
例えば注射器や薬剤などという違法な利用法があるものは別の場所に置いてある。
そこはきっちり施錠できるようになっているし出入りは完全に調べられている。
「何か減っているような気はするけど、よくわからないわ」
看護師はそう言って首をかしげた。
「とにかく私は上に知らせてくるから」
そそくさと去っていく同僚を見ながら看護師はこのところおかしなことばかり起きるとこめかみをもんだ。
佐藤和夫は在庫置き場から持ち出したもので変装していた。
病院にいて一番目立たない格好、患者が着る寝間着を着こんでいたのだ。
マスクをすれば人相も隠せるし、こちらでは伝染性疾患が流行っているのでそれもごまかせる。
そして、佐藤和夫は今現在仮病ではなく本当に病人なのだ。この格好で待合室に座っていれば彼が侵入者だと気付ける人間はいない。
軽くせき込みながら周囲の様子を観察する。
人が多い。この規模の町ならいるであろう患者の数倍はいるだろう。
高齢化が進んでいるとしてもやはり感染は広がっている。
病人ではないが、何故か受付で途方に暮れている少年がそこに立ち尽くしていた。
そこに見覚えのある女が駆け寄ってくる。
さっきのホテルにいた受付嬢だ。
「大丈夫、お母さん居た?」
少年は泣きそうな顔で首を横に振る。
「本当に病院に行ったんだよね」
「奏よ、病院はここだって言ってた」
呉羽と一緒に行方不明になっているというホテル職員の話をしている。
この格好で話しかけるわけにもいかない、どうしようかと佐藤は首をひねった。
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