パンデミック

karon

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疑惑の公務員

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「そのあたりでやめておきなさい」
 佐藤は本気で親切心でそう言ってやった。
 大貫呉羽のいる場所を探し出してくれただけで充分だと思ったからだ。
「あれ、佐藤さん?」
 磯野ゆかりは
 目を瞬かせた。
 佐藤の格好が不審すぎた。場所を考えれば適切な格好だがゆかりは佐藤が今朝まで健康体であったことを知っている。 
 その佐藤が入院着姿でどうして病院にいるんだろう。
「ちょっとまずいことになりかけていますよ」
 佐藤はそう教えてやった。
「まずいこと?」
 ゆかりとその知り合いの看護師は互いに顔を見合せる。
「やっぱり、なんか犯罪にかんでいます?」
 そう問いかけるが、その視線は佐藤への猜疑もあった。
 明らかにこの男もまっとうな勤め人なんかじゃないと悟る。
「まあ、話はあとに、危険ですよ」
 佐藤は完全に真顔だった。
「今まで気が付いていなかったの」
 思わず隣の看護師に尋ねた。看護師は首をぶんぶんと横に振る。
「とにかくこの建物から出ることですよ、二人共です、そしてできるだけ人の多い場所にいてください、決して人気のない場所に行かないように」
 佐藤はそう言って、扉を見る。
「ここに大貫さんがいるのは確かですか?」
 看護師は考え考え言う。
「あの、大貫さんって、目鼻立ちは整っているけれど、すべてのパーツが小作りで、ちょっと印象の薄い顔立ちで、あそこまで印象の薄い顔は珍しいって感じの人ですか?」
 さらっとひどいことを言うが、佐藤もその意見には同感だった。
 もっとも、佐藤も印象の薄い顔という評価には空前絶後と言われているのでどっちもどっちだろう。
「いいでしょう、ここを離れなさい、私の言ったことを忘れないように」
 銀縁眼鏡を光らせて佐藤は二人に言う。
 二人はそそくさとその場を後にした。

「何だろう、悪口を言われている気がする」
 ベッドに腰かけて呉羽は呟く。
 呉羽の体調に何ら異変はなかった。にもかかわらず入院させられている。
「何なんだろうこの悪徳病院」
 病院が何らかの犯罪組織と提携しているらしいというのはさすがに呉羽にも分かった。しかしどうして自分が巻き込まれたのかはいまだにわからない。
「あのおばさん無事かなあ」
 うっかり自分が送って言ったばっかりに余計な目に合わせてしまったのだろうか。
 呉羽はため息をつく。
 ピン。金属をはじいたような音がした。
 ゆっくりと扉が開く。
 呉羽はきょとんとした顔でそれを見ていた。
 
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