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第二幕 聴取
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ホテルのツインルームに宿泊手続きをして、私とマンドリンはベッドの脇にある小さなソファセットに落ち着いた。
マンドリンはぼそぼそと事情を話し始めるが、本人もよくわかっていないようで、要領を得ない。
要約すると、マンドリンと誤認される女が現れたらしい。ただ誤認されるだけでなく、どうも随分といかがわしい行動をとっているらしい。具体的にどういかがわしいのかはマンドリン自身もわかっていないらしい。
ビクトリアチックだから、おそらく噂も随分とぼかした内容なのだろう、そのぼかした部分が余計いかがわしさを増すという悪循環に陥っているらしい。
「私だって、誤解だと何度も主張したのよ、でも誰も信じてくれなくて」
「伯父様まで信じているってよっぽどのことよね」
「あの、マグダレン、貴女いつこっちに来たの」
唐突な言葉に私は旅券を見せた。
国境を越えた日のハンコを見てマンドリンはため息をつく。
どうやら私を疑ったらしい、確かに私ならできるかもしれないが動機がない。
「それでマンドリンは今までどうしていたの」
おそらく家に帰っていないのではないか、それであそこまで伯父が錯乱したのではと問いただすと、友人のところに泊まっていると答えた。
「私を信じてくれたただ一人の人なの」
「どうして?」
「その、私じゃない間違われた人がいたっていう時、その友達と一緒だったの、その仕事で同じシフトで、だからそれは私じゃないって説明してくれたんだけど、私に頼まれてうそをついてるって言われて、その人まで巻き込んで」
さめざめと泣き崩れるマンドリンを見て私はため息をつく。
「とにかく、その友達に来てもらいましょう、三人で何とか解決の糸口を探るの」
「助けてくれるの」
「こうなれば仕方ないでしょう」
さっさと帰りの列車に乗れば済むのだが、ここでマンドリンを見捨てられない程度には情がある、それに私には帰りたくても帰れない理由があるのだ。
マンドリンがその友達に伝話〈魔法で伝える通信方法、基本的に同じ町しか使えない〉をすると相手はすぐにやってきた。
私達が宿泊している部屋にやってきたマンドリンの友達はいきなり私の襟首をつかんだ。
「違うの、メアリアン、その証拠もあるの」
誤解するのはわかるが、とにかく首を話してほしい、苦しい。
私の旅券を見たメアリアンは首から手を放すと私の手のひらをつかんだ。
「嘘、マグダレン・カーフィールなの?」
キラキラした目で私を見る。
「サインください、ああこんなことならハムレットを持ってくるんだった」
どうやら愛読者の一人らしい。しかし私がハムレットの作者ではない、あくまで私は記憶でハムレットを紹介したに過ぎない。
ハムレットの作者は、エイボンの不滅の詩人だ。
その旨を伝えて、私は興奮したメアリアンを抑えた。
メアリアンは黒髪にそばかすのある平凡な顔立ちの少女だ。そして物腰を見ると確実に富裕層の生まれではない。
マンドリンとメアリアンは魔法が使える人間だ。
幼い頃に会ったきりなので私も知らなかったが、そうなのだそうだ。マンドリンも私が転生者だと知らなかった。
いろいろと知らないことがある。
魔法を使える人間は少ないが、その必要性から、結構な高額で雇われていることが多い。マンドリンが家を出て何とかやっていけたのもその資産のおかげもあったらしい。
メアリアンとマンドリンはこの街の通信関係の仕事、伝話や伝報を届ける機関に魔力を提供することだという。
魔器と呼ばれる道具がこの世界の文明の根幹を支えている。
それに魔力を提供するのが魔法使いの仕事だ。
魔力が強い土地で、魔性を帯びた鉱石を使う場合もあるが、効果で安定供給が難しいので人間に頼ることが多い。
この街では数少ない魔法持ちの若い娘ということで二人は仲がいいらしい。
「さて、これから考えることは、まず、マンドリン、貴女人に恨まれることがあった?」
今後の対策として、マンドリンの心当たりを徹底的に話してもらわなければならない。
マンドリンはぼそぼそと事情を話し始めるが、本人もよくわかっていないようで、要領を得ない。
要約すると、マンドリンと誤認される女が現れたらしい。ただ誤認されるだけでなく、どうも随分といかがわしい行動をとっているらしい。具体的にどういかがわしいのかはマンドリン自身もわかっていないらしい。
ビクトリアチックだから、おそらく噂も随分とぼかした内容なのだろう、そのぼかした部分が余計いかがわしさを増すという悪循環に陥っているらしい。
「私だって、誤解だと何度も主張したのよ、でも誰も信じてくれなくて」
「伯父様まで信じているってよっぽどのことよね」
「あの、マグダレン、貴女いつこっちに来たの」
唐突な言葉に私は旅券を見せた。
国境を越えた日のハンコを見てマンドリンはため息をつく。
どうやら私を疑ったらしい、確かに私ならできるかもしれないが動機がない。
「それでマンドリンは今までどうしていたの」
おそらく家に帰っていないのではないか、それであそこまで伯父が錯乱したのではと問いただすと、友人のところに泊まっていると答えた。
「私を信じてくれたただ一人の人なの」
「どうして?」
「その、私じゃない間違われた人がいたっていう時、その友達と一緒だったの、その仕事で同じシフトで、だからそれは私じゃないって説明してくれたんだけど、私に頼まれてうそをついてるって言われて、その人まで巻き込んで」
さめざめと泣き崩れるマンドリンを見て私はため息をつく。
「とにかく、その友達に来てもらいましょう、三人で何とか解決の糸口を探るの」
「助けてくれるの」
「こうなれば仕方ないでしょう」
さっさと帰りの列車に乗れば済むのだが、ここでマンドリンを見捨てられない程度には情がある、それに私には帰りたくても帰れない理由があるのだ。
マンドリンがその友達に伝話〈魔法で伝える通信方法、基本的に同じ町しか使えない〉をすると相手はすぐにやってきた。
私達が宿泊している部屋にやってきたマンドリンの友達はいきなり私の襟首をつかんだ。
「違うの、メアリアン、その証拠もあるの」
誤解するのはわかるが、とにかく首を話してほしい、苦しい。
私の旅券を見たメアリアンは首から手を放すと私の手のひらをつかんだ。
「嘘、マグダレン・カーフィールなの?」
キラキラした目で私を見る。
「サインください、ああこんなことならハムレットを持ってくるんだった」
どうやら愛読者の一人らしい。しかし私がハムレットの作者ではない、あくまで私は記憶でハムレットを紹介したに過ぎない。
ハムレットの作者は、エイボンの不滅の詩人だ。
その旨を伝えて、私は興奮したメアリアンを抑えた。
メアリアンは黒髪にそばかすのある平凡な顔立ちの少女だ。そして物腰を見ると確実に富裕層の生まれではない。
マンドリンとメアリアンは魔法が使える人間だ。
幼い頃に会ったきりなので私も知らなかったが、そうなのだそうだ。マンドリンも私が転生者だと知らなかった。
いろいろと知らないことがある。
魔法を使える人間は少ないが、その必要性から、結構な高額で雇われていることが多い。マンドリンが家を出て何とかやっていけたのもその資産のおかげもあったらしい。
メアリアンとマンドリンはこの街の通信関係の仕事、伝話や伝報を届ける機関に魔力を提供することだという。
魔器と呼ばれる道具がこの世界の文明の根幹を支えている。
それに魔力を提供するのが魔法使いの仕事だ。
魔力が強い土地で、魔性を帯びた鉱石を使う場合もあるが、効果で安定供給が難しいので人間に頼ることが多い。
この街では数少ない魔法持ちの若い娘ということで二人は仲がいいらしい。
「さて、これから考えることは、まず、マンドリン、貴女人に恨まれることがあった?」
今後の対策として、マンドリンの心当たりを徹底的に話してもらわなければならない。
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