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第二幕 再会
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ホテルまで簡単な地図を書いてもらった。
しかし計算外だ。伯父の家に泊めてもらう予定だったので余計な出費がかさんでしまった。
基本的に裕福な家の娘であるわたしは、稼いだお金はほとんど使わず貯めていたので結構な資産がある。しかし、世の中何が起こるかわからない、極力減らしたくないとも思っていた。
それに帰りたくても帰れない事情がある、どうしてもしばらく家に戻るわけにはいかない。
頬にかかる長い髪を指先で弄ぶ。
このレッドブロンドが目印になるというなら、鬘をかぶるか帽子に押し込んでしまおうか。
そんなことを考えながら歩いていると目の前を見知らぬ男が立っている。体をよけようとすると別の男が道をふさぐ。
背後を振り返ると、また別の男がいる。
着ているものはまぶしいほどの原色。
赤や黄色、青、絵の具をじかに塗りたくったかのようなどぎつい配色はまるで有毒生物の警戒色のようだ。
このあたりのまっとうな紳士達はグレーやライトブラウンの穏やかな配色の衣装をお召しになっている。
それを考えれば、確実にまっとうな紳士ではないだろう。
そして、犯罪者というものも本職はもう少し地味な格好をしているものだ、それを考えれば、これから道を踏み外そうとしている男達というところか。
そしてこんな男達に取り囲まれた理由は、推測されるに二つ。
旅行者だから金を持っているだろうと思われ、実際持っている。強盗か、ふしだらという噂のあるマンドリンと間違われ、婦女暴行。
しまった、鬘や帽子をもっと早く思いつくべきだった。
取り囲まれ、絶体絶命というやつだ。
かつて読んだ転生者チートなど私には無縁だ。私はただの文学系転生者なのだから。
トランクは重すぎて振り回すに不向き、そしてハンドバックは軽すぎて、武器として役には立たないだろう。
顔を見ればどれも不細工で、実に嫌な笑いを浮かべている。
じりじりと男達の輪が狭まってくる。
私は嫌な汗をかきながら周囲を見回す。しかし男達を見た誰もがその場で後ろを向けてその場を立ち去ってしまう。
なんて民度の低い街だ。
ごつごつしたてが私の手をつかもうとしたときいきなり砂ぼこりが私の周りを包んだ。
スカーフで頭を包んだ女が私に駆け寄ってくる。そして、一人の男が何もない空間に殴り倒されたように吹っ飛んだ。
どうやら魔法を使える人間らしい。
魔法使いがやってきたと知って、男達は自らの不利を悟り、足早にその場を後にする。
きちんと吹っ飛ばされた相手も引っ張っていった。
魔法が使える人間もこの世界には昔からいる。
その存在は数百人に一人、転生者より生まれる確率は高いらしい。
しっかりと統計を取った話ではないので何となく感覚で言われている。
女が私の腕をつかんだ、スカーフの中の顔は一瞬鏡を見ているのかと思った。
「マンダリン?」
「もしかして、マグダレン?」
互いに顔を見合わせて、しばらく経ち尽くした。
「これからホテルに部屋を借りに行くの、その前に鬘を使うわ」
私はトランクから鬘を取り出した。
どこにでもいる、栗色の巻き毛の鬘だ。
鬘をかぶって、ホテルに向かう。旅券には白黒の肖像画ついている。鬘でも問題はないだろう。
「どうしてホテル? 家じゃないの?」
「家に行ったら伯父様に尼寺に連行されそうになったのよ」
見れば見るほど私にそっくりだ、むかし双子と間違われたが、今でもたぶん間違われる。
「いったい何があったのよ」
「私にもわからないの」
マンダリンの顔が泣きそうにゆがんだ。
しかし計算外だ。伯父の家に泊めてもらう予定だったので余計な出費がかさんでしまった。
基本的に裕福な家の娘であるわたしは、稼いだお金はほとんど使わず貯めていたので結構な資産がある。しかし、世の中何が起こるかわからない、極力減らしたくないとも思っていた。
それに帰りたくても帰れない事情がある、どうしてもしばらく家に戻るわけにはいかない。
頬にかかる長い髪を指先で弄ぶ。
このレッドブロンドが目印になるというなら、鬘をかぶるか帽子に押し込んでしまおうか。
そんなことを考えながら歩いていると目の前を見知らぬ男が立っている。体をよけようとすると別の男が道をふさぐ。
背後を振り返ると、また別の男がいる。
着ているものはまぶしいほどの原色。
赤や黄色、青、絵の具をじかに塗りたくったかのようなどぎつい配色はまるで有毒生物の警戒色のようだ。
このあたりのまっとうな紳士達はグレーやライトブラウンの穏やかな配色の衣装をお召しになっている。
それを考えれば、確実にまっとうな紳士ではないだろう。
そして、犯罪者というものも本職はもう少し地味な格好をしているものだ、それを考えれば、これから道を踏み外そうとしている男達というところか。
そしてこんな男達に取り囲まれた理由は、推測されるに二つ。
旅行者だから金を持っているだろうと思われ、実際持っている。強盗か、ふしだらという噂のあるマンドリンと間違われ、婦女暴行。
しまった、鬘や帽子をもっと早く思いつくべきだった。
取り囲まれ、絶体絶命というやつだ。
かつて読んだ転生者チートなど私には無縁だ。私はただの文学系転生者なのだから。
トランクは重すぎて振り回すに不向き、そしてハンドバックは軽すぎて、武器として役には立たないだろう。
顔を見ればどれも不細工で、実に嫌な笑いを浮かべている。
じりじりと男達の輪が狭まってくる。
私は嫌な汗をかきながら周囲を見回す。しかし男達を見た誰もがその場で後ろを向けてその場を立ち去ってしまう。
なんて民度の低い街だ。
ごつごつしたてが私の手をつかもうとしたときいきなり砂ぼこりが私の周りを包んだ。
スカーフで頭を包んだ女が私に駆け寄ってくる。そして、一人の男が何もない空間に殴り倒されたように吹っ飛んだ。
どうやら魔法を使える人間らしい。
魔法使いがやってきたと知って、男達は自らの不利を悟り、足早にその場を後にする。
きちんと吹っ飛ばされた相手も引っ張っていった。
魔法が使える人間もこの世界には昔からいる。
その存在は数百人に一人、転生者より生まれる確率は高いらしい。
しっかりと統計を取った話ではないので何となく感覚で言われている。
女が私の腕をつかんだ、スカーフの中の顔は一瞬鏡を見ているのかと思った。
「マンダリン?」
「もしかして、マグダレン?」
互いに顔を見合わせて、しばらく経ち尽くした。
「これからホテルに部屋を借りに行くの、その前に鬘を使うわ」
私はトランクから鬘を取り出した。
どこにでもいる、栗色の巻き毛の鬘だ。
鬘をかぶって、ホテルに向かう。旅券には白黒の肖像画ついている。鬘でも問題はないだろう。
「どうしてホテル? 家じゃないの?」
「家に行ったら伯父様に尼寺に連行されそうになったのよ」
見れば見るほど私にそっくりだ、むかし双子と間違われたが、今でもたぶん間違われる。
「いったい何があったのよ」
「私にもわからないの」
マンダリンの顔が泣きそうにゆがんだ。
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