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第五幕 悪夢
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「ああ、マグダレン、いつ見ても美しい」
そう言いながら相手はマンドリンを通り越してそこではない何かを見ていた。
「あのう?」
人違いですよとマンドリンは言いたいのだろう。私はマンドリンを助けに入らなければならない、しかし、足は凍り付いたように動かない。
ランサム・アーカイブ。私の求婚者。
しかし私は彼との結婚に乗り気ではない。
彼は将来有望な青年だと誰もが言う。そのうえ眉目秀麗で、文句のつけようもない求婚者だとそんな人がいて私は幸せだと私以外のだれが言ったとしても、私は全然幸せじゃないのだ。
家族は、彼との縁談に反対はしない。むしろ父は大いに乗り気だ。
ことあるごとに彼を進めてくる父にうんざりした私は、家族には内緒で、完全に事後承諾で、旅に出ることにしたのだ。
家族に対してせめてもの気持ちということで伯父の家にした。
「どうしよう」
小さく呟くが歯がカチカチなっている。小刻みに震えていることに今気づいた。
「マグダレン、どうしたんだい、こんなに愛している君に対して、どうしてこんなにひどいことができるんだい、どうして僕の愛を信じられない」
愛を信じる以前に存在自体がダメなんです。
あああの歯の浮きそうな言葉遣いを聞くだけで鳥肌が立つ。
なんだかわからないが、何もかもがダメだ。
「マンドリン、どうしたの」
いつの間にか、メアリアンが来ていた。
「あの、どちらさま?」
「どうしてわかってくれないんだ、マグダレン、君を愛していると言っているだろう」
どうしてわかってくれないんだろう、愛せないって。
「ちょっと、私の連れなんだけど」
メアリアンがマンダリンの腕をつかんだ。
そしてあのバカを睨みつける。
「お前のような女に用はない、何が連れだ」
そう言ってメアリアンを押しのけようとする。
メアリアンは軽く目を細めた。
「マンドリン、知り合い?」
マンドリンはぶんぶんと首を横に振る。
ごめん、どうしても足が動かない、出て言って説明すべきと分かっている、だけど、どうしてもやりたくないんだ。
メアリアンは視線を私に向けた。私は両手を顔の前に合わせる。
「マンドリン、貴方、この人と一緒に行きたい?」
マンドリンは首を横に振る。
「そういうことですから、お引き取りください、彼女は貴女と一緒に行きたくないそうです」
「ふざけるな、どうしてだマグダレン、あんな男と会うなんて、そのためにこの街に来たのか」
「それ、何のこと?」
男って何?
私はこの街で伯父以外の男とまともに接触する機会はなかった。
「三日前、男と腕を組んで、どうしてだ、僕がいるだろう、あんな中年男のどこがいいんだ」
どうやら、彼が接触したのは偽マンドリンだったようだ。
そうなると逆に興味がわいてくる。髪は鬘だとしても、どれだけ似ているんだろう。
私の元いた世界では世の中には同じ顔をした人が三人はいるというが、私とマンドリンは血縁関係でそっくりなので、カウントしないほうがいいと思われる。
「そうだよ、せっかく君の仕事相手の伝話を聞き出して、ここに先回りしたのに」
「ちょ、それ犯罪」
マンドリンとメアリアンが目をむく。
あのバカ、ランサムは魔法所持者上位の資格持ち、だから魔法関連をそういうことができるらしい、よくわからないけど、ただできるからってやっていいわけではない。
メアリアンとマンドリンは同時に掌をあのバカに向ける。
さすがに二人同時は避けきれないようだ。気絶した馬鹿を放っておいて、二人は私のほうに来た。
「ごめんなさい」
私は地面に膝をついて謝った。
そう言いながら相手はマンドリンを通り越してそこではない何かを見ていた。
「あのう?」
人違いですよとマンドリンは言いたいのだろう。私はマンドリンを助けに入らなければならない、しかし、足は凍り付いたように動かない。
ランサム・アーカイブ。私の求婚者。
しかし私は彼との結婚に乗り気ではない。
彼は将来有望な青年だと誰もが言う。そのうえ眉目秀麗で、文句のつけようもない求婚者だとそんな人がいて私は幸せだと私以外のだれが言ったとしても、私は全然幸せじゃないのだ。
家族は、彼との縁談に反対はしない。むしろ父は大いに乗り気だ。
ことあるごとに彼を進めてくる父にうんざりした私は、家族には内緒で、完全に事後承諾で、旅に出ることにしたのだ。
家族に対してせめてもの気持ちということで伯父の家にした。
「どうしよう」
小さく呟くが歯がカチカチなっている。小刻みに震えていることに今気づいた。
「マグダレン、どうしたんだい、こんなに愛している君に対して、どうしてこんなにひどいことができるんだい、どうして僕の愛を信じられない」
愛を信じる以前に存在自体がダメなんです。
あああの歯の浮きそうな言葉遣いを聞くだけで鳥肌が立つ。
なんだかわからないが、何もかもがダメだ。
「マンドリン、どうしたの」
いつの間にか、メアリアンが来ていた。
「あの、どちらさま?」
「どうしてわかってくれないんだ、マグダレン、君を愛していると言っているだろう」
どうしてわかってくれないんだろう、愛せないって。
「ちょっと、私の連れなんだけど」
メアリアンがマンダリンの腕をつかんだ。
そしてあのバカを睨みつける。
「お前のような女に用はない、何が連れだ」
そう言ってメアリアンを押しのけようとする。
メアリアンは軽く目を細めた。
「マンドリン、知り合い?」
マンドリンはぶんぶんと首を横に振る。
ごめん、どうしても足が動かない、出て言って説明すべきと分かっている、だけど、どうしてもやりたくないんだ。
メアリアンは視線を私に向けた。私は両手を顔の前に合わせる。
「マンドリン、貴方、この人と一緒に行きたい?」
マンドリンは首を横に振る。
「そういうことですから、お引き取りください、彼女は貴女と一緒に行きたくないそうです」
「ふざけるな、どうしてだマグダレン、あんな男と会うなんて、そのためにこの街に来たのか」
「それ、何のこと?」
男って何?
私はこの街で伯父以外の男とまともに接触する機会はなかった。
「三日前、男と腕を組んで、どうしてだ、僕がいるだろう、あんな中年男のどこがいいんだ」
どうやら、彼が接触したのは偽マンドリンだったようだ。
そうなると逆に興味がわいてくる。髪は鬘だとしても、どれだけ似ているんだろう。
私の元いた世界では世の中には同じ顔をした人が三人はいるというが、私とマンドリンは血縁関係でそっくりなので、カウントしないほうがいいと思われる。
「そうだよ、せっかく君の仕事相手の伝話を聞き出して、ここに先回りしたのに」
「ちょ、それ犯罪」
マンドリンとメアリアンが目をむく。
あのバカ、ランサムは魔法所持者上位の資格持ち、だから魔法関連をそういうことができるらしい、よくわからないけど、ただできるからってやっていいわけではない。
メアリアンとマンドリンは同時に掌をあのバカに向ける。
さすがに二人同時は避けきれないようだ。気絶した馬鹿を放っておいて、二人は私のほうに来た。
「ごめんなさい」
私は地面に膝をついて謝った。
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