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駆け引き
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全員疲労困憊して馬車を降りてきた。
侍女たちはそれぞれの主のもとに走る。
本日の予定では皇帝と皇后だけが泊まるはずだったのだが、予定外に貴妃と賢妃が増えてしまった。
調整しても一人分がやっとだという。
「わたくしの部屋に貴妃殿が休まれればいい、わたくしは陛下のもとで休みますから」
皇后がそう言い放った時空気が凍った。
ああ、これはあれだ、譲るつもりに見せかけた牽制だなと鈿花辺りは悟る。伊達に妓女の中で生活していない。
そして、慌てたのは賢妃付きの侍女たちだ。
この機会に陛下に賢妃を近づけたいのに、皇后の妨害が入ったと判断したのだ。
ある意味その通りだが、
そして、なぜ唐突に皇后がそんなことを言い出したのか、理解できなかった皇帝は直立不動で硬直している。
そして貴妃に皇后用の部屋を使わせろと言われた家臣団はそれはそれでけじめがつかないと青い顔になる。
今まで空気だった皇后がいきなり爆弾を落としたのだ。
「いいえ、皇后さまが陛下の部屋でお休みになるのならご自由に、ですが、わたくしに部屋を譲っていただかなくてもよろしゅうございます。わたくしは賢妃様と同じ部屋で十分です」
さっさと緊急回避をした貴妃を今度は賢妃が睨む。
「あらまさかわたくしが皇后さまの部屋を使ってよろしいの?」
決して許せるはずのないことを言い放つと賢妃はぐうの音も出ない。
その様子を皇后は冷めた目で見ていた。
結局妃二人同宿ということになった。ちなみに寝台は一つだ。
寝台はものすごく広い、鈿花の観点から知ればちょっとした小部屋ぐらいだ。だから、二人並んで雑魚寝は十分できるだろう。
「あの、大丈夫」
いくら何でもいきなり暴力に訴えられるということはないだろうが。
貴妃はにっこりと笑った。
「今でも、肩関節を決めるくらいできるから大丈夫」
耳元でそうささやかれてそれもそうかと息を吐いた。
至近距離で関節技なら大丈夫だろう。以前腕を決められたときものすごく痛かったことを思い出した。
至近距離で話し合っていると相手が妙にびくびくしだす。
「どうしたの、あれ?」
「さあ?」
どうやら不穏な気配を感じる程度には敏感な神経を持っていたようだ。
「食事は、皆さんご一緒ですって」
話をぶった切って賢妃はそう言った。
関わりたくないという気配が感じられた。
「思ったより、つまらない女」
皇后は爪を噛みながら呟いた。
先ほどの言動を聞いて、何やら夫である皇帝は自分に対して及び腰だ。むしろあの貴妃のほうが腰の座った反応をしてくれた。
「一体お前は何をしたいんだ?」
「別に」
何をしようとも思えない、ただ無性に腹立たしいだけ。
「妬んでいるだけよ」
は、と声を漏らす。
「貴方を愛しておりませんし、愛そうとも思いません、たまに傍観者でいるのがつまらなくなるのですよ」
そう言ってにんまりと笑った。
侍女たちはそれぞれの主のもとに走る。
本日の予定では皇帝と皇后だけが泊まるはずだったのだが、予定外に貴妃と賢妃が増えてしまった。
調整しても一人分がやっとだという。
「わたくしの部屋に貴妃殿が休まれればいい、わたくしは陛下のもとで休みますから」
皇后がそう言い放った時空気が凍った。
ああ、これはあれだ、譲るつもりに見せかけた牽制だなと鈿花辺りは悟る。伊達に妓女の中で生活していない。
そして、慌てたのは賢妃付きの侍女たちだ。
この機会に陛下に賢妃を近づけたいのに、皇后の妨害が入ったと判断したのだ。
ある意味その通りだが、
そして、なぜ唐突に皇后がそんなことを言い出したのか、理解できなかった皇帝は直立不動で硬直している。
そして貴妃に皇后用の部屋を使わせろと言われた家臣団はそれはそれでけじめがつかないと青い顔になる。
今まで空気だった皇后がいきなり爆弾を落としたのだ。
「いいえ、皇后さまが陛下の部屋でお休みになるのならご自由に、ですが、わたくしに部屋を譲っていただかなくてもよろしゅうございます。わたくしは賢妃様と同じ部屋で十分です」
さっさと緊急回避をした貴妃を今度は賢妃が睨む。
「あらまさかわたくしが皇后さまの部屋を使ってよろしいの?」
決して許せるはずのないことを言い放つと賢妃はぐうの音も出ない。
その様子を皇后は冷めた目で見ていた。
結局妃二人同宿ということになった。ちなみに寝台は一つだ。
寝台はものすごく広い、鈿花の観点から知ればちょっとした小部屋ぐらいだ。だから、二人並んで雑魚寝は十分できるだろう。
「あの、大丈夫」
いくら何でもいきなり暴力に訴えられるということはないだろうが。
貴妃はにっこりと笑った。
「今でも、肩関節を決めるくらいできるから大丈夫」
耳元でそうささやかれてそれもそうかと息を吐いた。
至近距離で関節技なら大丈夫だろう。以前腕を決められたときものすごく痛かったことを思い出した。
至近距離で話し合っていると相手が妙にびくびくしだす。
「どうしたの、あれ?」
「さあ?」
どうやら不穏な気配を感じる程度には敏感な神経を持っていたようだ。
「食事は、皆さんご一緒ですって」
話をぶった切って賢妃はそう言った。
関わりたくないという気配が感じられた。
「思ったより、つまらない女」
皇后は爪を噛みながら呟いた。
先ほどの言動を聞いて、何やら夫である皇帝は自分に対して及び腰だ。むしろあの貴妃のほうが腰の座った反応をしてくれた。
「一体お前は何をしたいんだ?」
「別に」
何をしようとも思えない、ただ無性に腹立たしいだけ。
「妬んでいるだけよ」
は、と声を漏らす。
「貴方を愛しておりませんし、愛そうとも思いません、たまに傍観者でいるのがつまらなくなるのですよ」
そう言ってにんまりと笑った。
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