たとえるならばそれは嵐

karon

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香樹

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「死体が転がっている?」
 月姫は報告してきた愚連隊の仲間に訊き返した。
「どうもあの連中らしい」
「阿保か。どうせあいつらのことだ、適当に媚びておけば大丈夫とか考えたんじゃないか」
「ありそう」
 いろいろと適当に生きていた結果破落戸になったような連中なので、いまさら何をやっても驚かない。
「私達にはどうでもいいことよ、むしろ死んでくれてありがとうだ」
 あちらはこっちをいろいろと逆恨みしていたはずだ、状況も考えずにこちらの妨害工作をしてくる可能性もあった。それを考えれば、死んでいるのは都合がいい。
「あいつら、何も言わずに死んだかな?」
 こちらの反撃準備のことを色口走ったのではないか。そう言いたいらしい。
「もし聞いたら、悠長に期日まで待たないんじゃない」
 月姫はそう言って、自らの得物を軽く振った。
 月姫の武器は頑丈な網に石を詰めて、これまた頑丈な縄を点けたものだ。
 非力を補う手段を重点的にしている。体術も得意としているのは関節技だ。
 縄の長さの遠心力でより殺傷力を上げるためそして距離を稼ぎ接近戦を避けるためだ。
 縄を操る手はどれほど小さな的でも外すことはない。
 昨日、犬を殺した。
 事前に生き物を殺して、人を殺すためらいを消すという。軍隊式の初心者のための練習だった。
 ついでに犬はみんなで美味しくいただいた。
 犬は猫より美味しいらしい。猫は小さくて食いでがないので獲物にはしなかった。
 人を殺すことに抵抗はあるが、殺さなければ殺されるという状況なので、その辺は割り切ることにした。
「とりあえず、街の皆の反応はどう?」
「あいつらが殺されたことなら、それほど動揺はねえな、ざまあみろと思っている連中のほうが多いかと」
 先日の街を焼き払われたことに比べれば、些細な問題だ。
「それじゃ、計画に支障はないね」
 明日、たぶん自分は死ぬ。
 月姫は空を仰いだ。空は喧嘩を売っているのかと思うくらい青くすがすがしい。
 愚連隊は一番危険な場所を引き受ける。月姫は特に。それが言い出した人間の責任だと思った。
「親父さんは?」
 そう聞かれて苦笑する。
「いつも通りだわ」
 常に無言で何か着物をしている時もあるが、それだけだ。
 家のことを月姫ができるようになったら最低限のことすらやらなくなった。何を考えているのかもわからない。
「陽輝もそろそろ最低限のことができるようになったし、何とかなるかな、その時はお願い」
 相手の顔も引き締まる。他人ごとではなく自分もだと覚悟を決めた。
「いよいよ明日よね」
 ニコニコと香樹が同じ役目を果たす女達とやってきた。
「とりあえず、手筈は教えたとおりだけど、大丈夫」
 香樹は初っ端からかなり危険なやり取りをしなければならない。そのことを気にかけたが。幸寿は笑い飛ばした。
「いい、地獄に送った男の数こそ、美女の誉れというものよ」
 からからと明るい。
 思わず気圧されそうになる。
 背後の女たちは一応に強張った顔をしている。だが、抜けるというものは一人もいない。これが生き延びられるかの一馬場千佳の機会だとわかっているのだ。
「それに、一番危険なところに、年下のあんたが行くのよ」
 そう言われてしまえば何も言えない。
 立ち去る幸寿の後ろ姿をじっと見ていた。
「どうかしたのか?」
「ちょっと引っかかったの」
 その引っ掛かりを追求する心の余裕はなかった。
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