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崩壊
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「あれは本当に馬鹿々々しい話だった」
翡翠は笑う。
「少しばかりの反撃が効いたように見えたとたん群衆は勝機と勘違いして反乱軍に襲い掛かった、もっともそちらが反撃を食らって狼狽しなければ結果は逆になっていたでしょうねえ」
翡翠の傍らには剣を構えた男がいる。
そのあとやってきたのは二人、そのすべてが武器を携帯していた。
「日和見って、場合によっては怖いわねえ」
翡翠の手には笄が握られている。いつでも投擲できる格好だ。
「あの時はしょうがなかった、最短時間ですべてを終わらせなければならなかったから、あっさり即死させてしまった。本当は、一思いに殺してくれと、三度は叫ぶほどになぶり殺しにしたかったのよ」
うっとりと夢見るような眼差しと言っていることの内容の乖離がすごすぎた。
「貴方はあの男の仇討に来たんでしょう、なら、あの男の代わりになぶり殺しにしてもいいわよねえ」
晴れ晴れとした笑顔で、穏やかならざることを口走っている。
いつでも次を放てると背後の妓女は笄を構えているし、おそらく兵役についていると思われる男達は抜刀してすでに足を負傷している相手でも油断はしないという顔だ。
隠れている黒曜はガタガタと震えていた。
このままでは聞きたくもない音とか声が聞こえてくるのではないだろうか。
人の頭を叩き割った経験者の翡翠と違って、こちらは生粋の箱入りだ。そんなものを聞いてしまったら向こう十年はうなされる。
「そこまでにしておけ」
耳慣れた声が聞こえた。
「え?」
予想外の顔を見て、翡翠の顔が強張る。
「皇帝の子を身籠った妃を殺めようとした場合、死罪以外求刑されないが、妃とはいえ、自ら処刑しようとするのは越権である」
重々しく皇帝は宣言した。
翡翠の傍らにいる男達はそれぞれ顔を見合わせて、どう出ようかと悩んでいた。
「あら、何か誤解があるのでは」
「いや、誤解も何も、結構前から話は聞いていたんだが」
ちっと翡翠が舌打ちした。
「できる限りむごたらしい形で処刑するから、その辺にしておけ」
妓女が慌てて翡翠に駆け寄る。
皇帝の背後から護衛兵が駆け込んできて、男を取り押さえる。翡翠の傍らの兵装の男にも手を出そうとしたとき翡翠がよろけながら立ち上がった。
「やめて」
「ああ、そうだな、お前がおとなしくしている限り、その連中に手を出さないようにしてやる」
そして皇帝はにんまりと笑った。
「少しは身の程を知るがいい、所詮最初の戦で使い物にならなくなった、その程度の女ならな」
ぎりっと翡翠は唇をかみしめた。
冷たい殺気を込めた視線を簡単にいなす。
「たった一回しか戦を経験せず、ましてやその傷を引きずっている程度の女が吠えるな」
フルフルと握りしめた拳から血が滴った。
「ちょっと待って」
とっさに妓女が翡翠を抑える。
こうした顔をした時、暴力に向かわなかったことは少ないが、さすがに今はまずい。
「姉さん」
陽輝も抑えに向かう。
「わかるものか、わかるものか」
嗚咽のような声、しかし抑えている妓女と弟の肩に置いた手はかぎづめのように曲がりぎりぎりと食い込んでいく。
「死を賭して戦うと最初に決めたなら、死んだとしても納得して死んだはずだ、いまさら、仇討など望むものか、お前とて、死んだあと仇をとってほしかったのか?」
その言葉に、足元が崩れた。
嗚咽はかすれるようにしていつまでも続いた。
翡翠は笑う。
「少しばかりの反撃が効いたように見えたとたん群衆は勝機と勘違いして反乱軍に襲い掛かった、もっともそちらが反撃を食らって狼狽しなければ結果は逆になっていたでしょうねえ」
翡翠の傍らには剣を構えた男がいる。
そのあとやってきたのは二人、そのすべてが武器を携帯していた。
「日和見って、場合によっては怖いわねえ」
翡翠の手には笄が握られている。いつでも投擲できる格好だ。
「あの時はしょうがなかった、最短時間ですべてを終わらせなければならなかったから、あっさり即死させてしまった。本当は、一思いに殺してくれと、三度は叫ぶほどになぶり殺しにしたかったのよ」
うっとりと夢見るような眼差しと言っていることの内容の乖離がすごすぎた。
「貴方はあの男の仇討に来たんでしょう、なら、あの男の代わりになぶり殺しにしてもいいわよねえ」
晴れ晴れとした笑顔で、穏やかならざることを口走っている。
いつでも次を放てると背後の妓女は笄を構えているし、おそらく兵役についていると思われる男達は抜刀してすでに足を負傷している相手でも油断はしないという顔だ。
隠れている黒曜はガタガタと震えていた。
このままでは聞きたくもない音とか声が聞こえてくるのではないだろうか。
人の頭を叩き割った経験者の翡翠と違って、こちらは生粋の箱入りだ。そんなものを聞いてしまったら向こう十年はうなされる。
「そこまでにしておけ」
耳慣れた声が聞こえた。
「え?」
予想外の顔を見て、翡翠の顔が強張る。
「皇帝の子を身籠った妃を殺めようとした場合、死罪以外求刑されないが、妃とはいえ、自ら処刑しようとするのは越権である」
重々しく皇帝は宣言した。
翡翠の傍らにいる男達はそれぞれ顔を見合わせて、どう出ようかと悩んでいた。
「あら、何か誤解があるのでは」
「いや、誤解も何も、結構前から話は聞いていたんだが」
ちっと翡翠が舌打ちした。
「できる限りむごたらしい形で処刑するから、その辺にしておけ」
妓女が慌てて翡翠に駆け寄る。
皇帝の背後から護衛兵が駆け込んできて、男を取り押さえる。翡翠の傍らの兵装の男にも手を出そうとしたとき翡翠がよろけながら立ち上がった。
「やめて」
「ああ、そうだな、お前がおとなしくしている限り、その連中に手を出さないようにしてやる」
そして皇帝はにんまりと笑った。
「少しは身の程を知るがいい、所詮最初の戦で使い物にならなくなった、その程度の女ならな」
ぎりっと翡翠は唇をかみしめた。
冷たい殺気を込めた視線を簡単にいなす。
「たった一回しか戦を経験せず、ましてやその傷を引きずっている程度の女が吠えるな」
フルフルと握りしめた拳から血が滴った。
「ちょっと待って」
とっさに妓女が翡翠を抑える。
こうした顔をした時、暴力に向かわなかったことは少ないが、さすがに今はまずい。
「姉さん」
陽輝も抑えに向かう。
「わかるものか、わかるものか」
嗚咽のような声、しかし抑えている妓女と弟の肩に置いた手はかぎづめのように曲がりぎりぎりと食い込んでいく。
「死を賭して戦うと最初に決めたなら、死んだとしても納得して死んだはずだ、いまさら、仇討など望むものか、お前とて、死んだあと仇をとってほしかったのか?」
その言葉に、足元が崩れた。
嗚咽はかすれるようにしていつまでも続いた。
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