恋の無駄騒ぎ

karon

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第十章

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 ヨハンは一同が立ち去った後、そっとその場に立った。
 そのわきには自分の配下が控えている。
「どうやら首尾よく運んだようだな、忌々しいことだが」
「ああ、お気を落とされますな」
 ポラチョがそう言って主を慰める。
「何やら手立てがあってそのような口を利くのであろうな」
「それはもちろん、自分にその手立てはございます」
 そしてポラチョはいかにも卑しく笑う。
「ご主人様のお望み通り、あの得意顔を恥辱にまみれさせ、ついでにこの城の城主レイナートとその娘に障害残る傷を負わせて差し上げよう、そして傷物になった花嫁を無残にクローディスに捨てさせて大いに恥をかかせて差し上げる手立てが間違いなくございます」
「興味深いことだな」
「むろんまともな手立てではございます。これは間違いなく悪辣な罪、罪の果実を手に取る覚悟さえあればいくらでもそのような手立てはできるのです」
「むろんその手立ては闇から闇へと葬り去れるのであろうな」
 ペドロは身を乗り出した。
「では語るがいい、その罪深い舌で、その手立てとやらを話すがいい」
 ポラチョはにんまりと笑った。
「すでにこの手にその手蔓がございます。実はヒローインの侍女マーゴットはすでに我がものとなっております、あれは私がどうしろと言えばその通りにするでしょう」
「侍女一人でどうするのだ」
「あれはヒローインの部屋に自由に出入りできるのですよ、それを使ってクローディスめに偽りを自由自在に吹き込んで差し上げましょう」
「そんなことでどうなるというのだ」
 ペドロはポラチョの言葉に少し懐疑的になる。
「何の、つまりはそれを利用してヒローインこそ不貞の女だと信じ込ませればいいのです。ほれ込んだ女が飛んだ淫売、さぞやクローディスの誇りが傷つきましょう、そしてそんな女と廷臣の縁談を取りまとめたペドロさまの御名もさぞや汚れましょう」
「あの兄の名が汚れるならこんなめでたいことは無いな」
「いかにもいかにも、そして、淫売とあだ名されるヒローインは面目を無くしその生涯を泣き暮らすしかありますまい、そして一人娘が淫売とあってはレイナートは死んだほうがましでしょうな」
「ああ、聞くだに心躍る。ぜひそうなってほしいものだ、人の不幸ほ甘いものはない」
「きっとそうなりますとも首尾よう行けば」
 ペドロは目を細めた。
「無事にそれをやり遂げたならばお前に千払おう。それも金貨で」
「洗米の金貨でございますか、それは何と気前のいい」
「あの兄の名を汚すためなら私はいくらでも払おうとも、そしてその泣きっ面を拝んで笑ってやるのだ」

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