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どす黒い
しおりを挟む男は従業員らしい男を引きずってきた。
そしていきなり殴り倒した。
「お前らが悪いんだ、お前らが」
叫ばずぶつぶつと呟くように繰り返しながら倒れた身体に蹴りを入れていく。
倒れた身体が蹴られて浮き上がる。相当強い力で蹴られているようだ。内臓破裂とか起こすかもしれない。
「何があったか知りたくもないな」
囁くような綺羅の声、まあ、どうせ胸糞悪いことなんだろうと俺も思う。
「ひ、ひいいぃ」
敦がまるで絞殺されそうな声で呻く。
俺は敦の肩を抱いて落ち着かせた。うかつに悲鳴を上げてあいつに近寄ってこられたらこっちも困る。まだ殺されては困る、俺の金のために。
「落ち着けよ、大丈夫だから」
なだめるように肩を撫でてやる。そして敦はしがみついてきた。
「どうしよう、どうしよう」
虚ろにぶつぶつ呟いている。いや、体格のいい男に抱き着かれてもうれしくもなんともない。
芝居なら、何度か抱き合ったが、芝居抜きで抱き合うようなことは無かった。
何やら鈍い音がした。
明らかに関節でないところで手足が曲がっている男を投げ飛ばしていた。
どうやらあの骨が折れた音だったらしい。
警察は何をしているんだろう。催涙弾ぐらいは投げ込んでくるかな。俺としては痛いのは御免なんだが。
綺羅がふらふらと立ちあがった。
「おい、あぶない」
俺がとっさに止めようとしたが。敦がしがみついて動けない。おれだって鍛えているのに、骨格のせいか? 骨格が貧弱だとつく筋肉の量が変わるのか?
そして、綺羅は男のいるほうに歩いていく。
「おい、気でも違ったのか?」
歩いていく綺羅に気が付いたのか男はどこか雲を踏むかのようなおぼつかない足取りで綺羅のいるほうに近づいていく。
俺は思わず目を背けそうになった。
さっき、まるで空き缶のように何度も蹴られていた男の姿が思い出されて。
綺羅の足取りは妙に落ち着いていた。
それなのに唐突に身体が沈みゆっくりと倒れていく。
綺羅に向かって手を伸ばした男の手が空を切った。
綺羅は男の足元に転がっていった。
床に倒れた綺羅の身体に男は見事に躓いてしまった。そして俺は綺羅の手が男のズボンに手を伸ばしたのを見た。
そして男と綺羅が重なり合うように倒れていく。そして広がる赤。
やや薄暗い照明で、どす黒い赤がゆっくりと広がっていくのが見えた。
「綺羅?」
俺は血の引いた顔でその赤を見ていた。
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