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生存に必要なもの
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アストリッドは自分のつま先を見た。
すっかり泥に汚れているドレスの裾。そこアから濃い青に染められた皮の靴がのぞいている。
「しかし、どれほどの人間を使えば私たちをあそこから連れ出すことができるというの」
「そうですわ、このままでは同盟締結に支障が、いえ、下手をすればわれら三国の同士討ちにすらなりかねませんわ」
アストリッドとビアトリクスは真剣な表情でそう話し合っている。
「アストリッド様、ビアトリクス様、そのような話は殿方に任せておけばよろしいのですわ、私どもが考えてどうともなることではありませんもの」
ターシャがそれに割って入る。
「ターシャ様、そのような、私どもは王太子妃なのですよ」
「いいえ、いま私どもが考えなければならないのは飲み水をどうするかですわ」
そういって小柄な体を大きく広げる。
「水が飲めるか飲めないかで生存限界は二倍変わりますの、いま私どもがやらなければならないことは生き延びることでしょう」
そして真剣な顔でアストリッドに詰め寄る。
「助けが来るまでどれほど時がかかるかわかりませんわ、その間飲まず食わずでいいわけないでしょう。アストリッド様、この森にどれほどの頻度で泉がございますの? まず水場を確保してそれから食料ですわ」
「確か、この森には数本小川が流れているはずですが」
「小川ですか、魚は取れるでしょうか」
そう今は生き残ることこそ最重要。そのための努力を惜しむべきではない。
「まず、三方向に歩いてみるのはどうでしょう。目印をつけながら歩けば元来た場所に戻ることも難しくないでしょう」
そういって、ビアトリクスは長い黒髪をまとめていた長い飾りを引き抜いた。たっぷりとした黒髪をまとめていた髷が崩れ背の半ばほどある黒髪が垂れ下がった。
先端にエメラルドが飾られ、焼き肉の串ほどの長さのそれで、木の皮をひっかいて縦に二本線を引く。
「あらかじめ目印をそれぞれに分けておくのもよろしいかと」
そう言って木を指し示すと、アストリッドとターシャは頷いた。
アストリッドはバツ印、ターシャは横に二本と決めた。
散人は放射状に進むことにした、ある程度歩いたら、成果があるなしにかかわらず、起点となるここに戻ってくると取り決めた。
ターシャはゆっくりと歩いていた。
木の根や石が埋まっている森の地面はきゃしゃで細い踵で支えられた靴で歩むには適していない。
素足は危険なのでやむを得ずこの靴を履いているが、この状態が続くなら考えなければいけないと悩みながら、通りすがりの木に拾った石で時折刻み目を淹れながら進んでいく。
一度足を止めた。そしてゆっくりと空気を嗅いだ。ついで耳を澄ませる。
水の匂い、そして水を求める小鳥の声を探る。
水の音が聞こえた。
ターシャは必死に足を動かした。
小道ほどの幅の小川を見つけた。
再びターシャは元来た場所に戻り始めた。
急いでアストリッドやビアトリクスに知らさなくては。
生き延びるための第一段階は見つけた。
次は食料だ。
すっかり泥に汚れているドレスの裾。そこアから濃い青に染められた皮の靴がのぞいている。
「しかし、どれほどの人間を使えば私たちをあそこから連れ出すことができるというの」
「そうですわ、このままでは同盟締結に支障が、いえ、下手をすればわれら三国の同士討ちにすらなりかねませんわ」
アストリッドとビアトリクスは真剣な表情でそう話し合っている。
「アストリッド様、ビアトリクス様、そのような話は殿方に任せておけばよろしいのですわ、私どもが考えてどうともなることではありませんもの」
ターシャがそれに割って入る。
「ターシャ様、そのような、私どもは王太子妃なのですよ」
「いいえ、いま私どもが考えなければならないのは飲み水をどうするかですわ」
そういって小柄な体を大きく広げる。
「水が飲めるか飲めないかで生存限界は二倍変わりますの、いま私どもがやらなければならないことは生き延びることでしょう」
そして真剣な顔でアストリッドに詰め寄る。
「助けが来るまでどれほど時がかかるかわかりませんわ、その間飲まず食わずでいいわけないでしょう。アストリッド様、この森にどれほどの頻度で泉がございますの? まず水場を確保してそれから食料ですわ」
「確か、この森には数本小川が流れているはずですが」
「小川ですか、魚は取れるでしょうか」
そう今は生き残ることこそ最重要。そのための努力を惜しむべきではない。
「まず、三方向に歩いてみるのはどうでしょう。目印をつけながら歩けば元来た場所に戻ることも難しくないでしょう」
そういって、ビアトリクスは長い黒髪をまとめていた長い飾りを引き抜いた。たっぷりとした黒髪をまとめていた髷が崩れ背の半ばほどある黒髪が垂れ下がった。
先端にエメラルドが飾られ、焼き肉の串ほどの長さのそれで、木の皮をひっかいて縦に二本線を引く。
「あらかじめ目印をそれぞれに分けておくのもよろしいかと」
そう言って木を指し示すと、アストリッドとターシャは頷いた。
アストリッドはバツ印、ターシャは横に二本と決めた。
散人は放射状に進むことにした、ある程度歩いたら、成果があるなしにかかわらず、起点となるここに戻ってくると取り決めた。
ターシャはゆっくりと歩いていた。
木の根や石が埋まっている森の地面はきゃしゃで細い踵で支えられた靴で歩むには適していない。
素足は危険なのでやむを得ずこの靴を履いているが、この状態が続くなら考えなければいけないと悩みながら、通りすがりの木に拾った石で時折刻み目を淹れながら進んでいく。
一度足を止めた。そしてゆっくりと空気を嗅いだ。ついで耳を澄ませる。
水の匂い、そして水を求める小鳥の声を探る。
水の音が聞こえた。
ターシャは必死に足を動かした。
小道ほどの幅の小川を見つけた。
再びターシャは元来た場所に戻り始めた。
急いでアストリッドやビアトリクスに知らさなくては。
生き延びるための第一段階は見つけた。
次は食料だ。
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