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起《承》転結
ーー異世界仲直りーー⑥
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「さて、【透明幻想・錯綜少女基底】、貴女の物語に闘争は不相応であるが故、」
ばさりとボロボロのマントを翻し、その中の黒き孔がぐにゃりと歪み、強大な魔王がケヴィン達の前に立ちふさがる。
「ーー貴殿等のお相手は我が務めよう」
そして、我に返ったケヴィン達はゆっくりと立ち上がる。まだ、目の輝きは、戦う意志は消えちゃいない。それにピスクエルがケヴィンに新しい剣を渡していた。彼らはまだ戦える。
「さあ、【透明幻想・錯綜少女基底】達よ、我に構わず先に行くがよい」
あ、なんかその台詞、イヤな予感がするけど!? というか、正真正銘のラスボスである魔王を盾に逃走しようとするわたし達ってずいぶんいい御身分だな!
「ご安心を、【透明幻想・錯綜少女基底】。虚数を司りし我は此の実存世界に干渉不可能であるが故に、彼らに危害を加える事は叶わぬ」
わたしがあまりにも不安そうな表情をしていたからだろうか、【不浄遺棄地域】はそんなことを言ったけど、いや、心配しているのはケヴィン達じゃなくてアナタの方で。
だけど、彼はわたしの憂いなど構わず。
「さて、貴殿等の戦いはこれからだ!」
魔王がそれ言っちゃう!? 「うおおおッ!!」勇壮な雄叫びとともに各々の武器を構えて突撃するケヴィン達の後ろ姿と、それを両手を上げて真正面から受けて立つ黒い影のような魔王。あ、ちょ、ま、待って、やめて、やめて! その構図! あまりにも打ち切り最終回っぽい! まだ終わらないよ!
そして、わたし達は完全に蚊帳の外だ。
なんとなく思ったけどさ、真っ黒で古臭い喋り方だから良くわからなかったけど、【不浄遺棄地域】って案外ノリがいい性格なのかしら?
「じゃ、行こっか、キティさん」
「う、うーん?」
エルルカ、そんな、ちょっとお手伝いしてくれている間に私達は買い物でも行こっか、みたいなノリで言わないでくれるかな、今、結構大事なところだよ?
今まさに後ろで激しい戦闘を繰り広げている感じを演出する魔王と、全ての力を出さんとするケヴィン達勇者御一行をよそ目にいそいそと立ち去ろうとするわたし達。なんかちょっと気が引けるなあ。
【不浄遺棄地域】はただの孔、攻撃なんて効くはずもない。何千年と敵意剥き出しの訪問者による意趣返しを受け続けていた魔王がこんなところで倒されるわけがない。それでも、なんだかいたたまれない。
「我は此の世界を知らぬ。願わくば、貴女が創造し、此の先に見聞してきた世界がどのようなものであるか、我に聞かせてほしい」
「ええ! きっと、きっとここに戻ってきて素敵な物語をアナタに読んであげるって約束するわ! だから、必ず生き残ってね!」
あ、なんか不穏な台詞ばかりだ。でも、この約束はきっと守ってみせる。だから、わたしは死なない。
だって、わたしの物語を楽しみにしてくれる読者がひとりでもいてくれるっていうのはあまりにも心強いから。
それだけで、わたしは前に進もうって思えるんだ。
この物語を綴っていこうって頑張れるんだ。
この他愛もない執筆を楽しめるんだ。
「ーー貴女の旅路に多幸のかぎりの有らん事を」
アズの背中に乗るわたしの後ろから、そんな声がそっと聞こえたような気がした。
―― long long ago ――■■
ばさりとボロボロのマントを翻し、その中の黒き孔がぐにゃりと歪み、強大な魔王がケヴィン達の前に立ちふさがる。
「ーー貴殿等のお相手は我が務めよう」
そして、我に返ったケヴィン達はゆっくりと立ち上がる。まだ、目の輝きは、戦う意志は消えちゃいない。それにピスクエルがケヴィンに新しい剣を渡していた。彼らはまだ戦える。
「さあ、【透明幻想・錯綜少女基底】達よ、我に構わず先に行くがよい」
あ、なんかその台詞、イヤな予感がするけど!? というか、正真正銘のラスボスである魔王を盾に逃走しようとするわたし達ってずいぶんいい御身分だな!
「ご安心を、【透明幻想・錯綜少女基底】。虚数を司りし我は此の実存世界に干渉不可能であるが故に、彼らに危害を加える事は叶わぬ」
わたしがあまりにも不安そうな表情をしていたからだろうか、【不浄遺棄地域】はそんなことを言ったけど、いや、心配しているのはケヴィン達じゃなくてアナタの方で。
だけど、彼はわたしの憂いなど構わず。
「さて、貴殿等の戦いはこれからだ!」
魔王がそれ言っちゃう!? 「うおおおッ!!」勇壮な雄叫びとともに各々の武器を構えて突撃するケヴィン達の後ろ姿と、それを両手を上げて真正面から受けて立つ黒い影のような魔王。あ、ちょ、ま、待って、やめて、やめて! その構図! あまりにも打ち切り最終回っぽい! まだ終わらないよ!
そして、わたし達は完全に蚊帳の外だ。
なんとなく思ったけどさ、真っ黒で古臭い喋り方だから良くわからなかったけど、【不浄遺棄地域】って案外ノリがいい性格なのかしら?
「じゃ、行こっか、キティさん」
「う、うーん?」
エルルカ、そんな、ちょっとお手伝いしてくれている間に私達は買い物でも行こっか、みたいなノリで言わないでくれるかな、今、結構大事なところだよ?
今まさに後ろで激しい戦闘を繰り広げている感じを演出する魔王と、全ての力を出さんとするケヴィン達勇者御一行をよそ目にいそいそと立ち去ろうとするわたし達。なんかちょっと気が引けるなあ。
【不浄遺棄地域】はただの孔、攻撃なんて効くはずもない。何千年と敵意剥き出しの訪問者による意趣返しを受け続けていた魔王がこんなところで倒されるわけがない。それでも、なんだかいたたまれない。
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「ええ! きっと、きっとここに戻ってきて素敵な物語をアナタに読んであげるって約束するわ! だから、必ず生き残ってね!」
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それだけで、わたしは前に進もうって思えるんだ。
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この他愛もない執筆を楽しめるんだ。
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―― long long ago ――■■
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