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Prologue
異世界情緒ーー④
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そうして、いつの間にやら鎧に身を包んだ護衛兵やお城の学者、それに、小さな王子さままでもをがっしゃがっしゃと引き連れる大所帯となってしまった。どうしてこうなった? あと、なんかちょっと違うのと、不穏なのいなかった?
わたしとエルルカはなんだか気恥ずかしくなりながらも、みんなに教えてもらったようにお城を進むんだけど、なんだかどんどん廊下が薄暗くなっていってないかい? まるで、辺境の奥地に向かうような不安感。エルルカも困惑気味。
そして、この豪華絢爛なお城の隅っこに、まるで隠れ潜むようにその部屋の扉はあった。このちっぽけな木の扉だけが安っぽく古ぼけていて、まるでどこか違うところから持ってきて適当に貼り付けたような場違いな佇まいだった。
まるで未踏破の遺跡の扉であるかのように、その真鍮製のドアノブを慎重におそるおそる……
「あ、あのー失礼しまっくしゅんッ」
ドアを開けたその先は、本と埃でできていた。
窓から入る日光がきらきらと埃を綺麗に見せかけている薄暗い部屋。そこでは、もう一歩目から足の踏み場もないほど乱雑にうず高く積まれた本が、至る所で不安定な山脈を形成している。狭い部屋が本でぎっしりと埋め尽くされている光景は、圧巻の……圧巻の、
「くしゅんッ!」
そう、とにかく圧巻の埃っぽさだ。本なんて一切関係なく、何年も封印されてきた扉を開け放ったかのような荒廃感。ただただ埃がすごい。くしゃみが止まらない。
「おお、ワインドワーク様の部屋の扉が開いたぞ!」
「ワインドワーク様、どこにいらっしゃるのですか、是非姿をお見せになってくださらぬか」
「ねえ、この前みたいに色んなお話を聞かせてよ!」
……あれ、おじいちゃんってば、結構人気者なのかしら?
まるで一切の侵入を阻む城塞のような本の山も埃もなんのその、一気に狭い部屋へとなだれ込むエルルカ探検隊。
「なんじゃこの騒ぎは! 出ていけ! 一体何事じゃ、こんなに大勢で押しかけ寄ってからに、邪魔じゃ!」
のそりと本山脈の中から姿を現したのは、人類が未発見の未知なる生物……ではなく、
「おじいちゃん! 部屋をこんなに本と埃だらけにして! 身体に良くないわ!」
「なんじゃ、エルルカか、こんなところに何の用じゃ。久しぶりに来おってからにわざわざ文句でも言いに来たのか」
元々の加齢のせいなのだろう、杖をついた小柄なおじいちゃんは、少しだけ腰が曲がってさらに小さく見える。それでも、その迫力はどこから来るのだろうか。ぼさぼさの白髪がまるで頭の横に伸びたふわふわの角みたい。少し後退してしまった広めのおでこにしわだらけのしかめ面。
本の隙間からわたし達を威嚇するその姿は、縄張りを荒らされて不機嫌な老犬の様相。
「ねえ、ごめんなさい、みなさん。おじいちゃんはあんまり騒がしいのは得意じゃないの。今は私達だけにしてもらえるかしら」
きっと、図書館に行く人の何割かはエルルカ目当てだ。それにこの探検隊の中にもいるな、エルルカのファンが。
だって、ふわりと振り返って、困った表情でエルルカが申し訳なさそうにそう言うと、、探検隊隊員たちはやけにあっさりと身を引くんだもの。いや、これは、探検隊、というより、むしろエルルカ親衛隊か。
確かにエルルカは綺麗だし、少しおっとりしていて守りたくなるタイプだし、礼儀正しくて、眼鏡かけてるし、頭もいいし、いつもは図書館のゆったりした制服を着ているけどスタイルもいい。今日のコーディネートはエルルカファン諸君にはちょっと刺激が強すぎるかな。
そして、その全てを無自覚に周囲に振り撒くエルルカの無差別魅了爆撃は破壊力絶大すぎる。やはり胸囲……!! 胸囲は全てを解決する……!!
「それで、引きこもりのお前がわしなんぞに何の用じゃ」
「どうせこの部屋からほとんど出ていないおじいちゃんには言われたくないわね」
そんなことを言いながら、もうすでにワンピースの袖を捲ったエルルカの両手には箒とちりとり、それに、空中にはふわふわと様々なお掃除用具が浮いていた。
「まずは、お掃除ね。申し訳ないけど、キティさんも手伝ってくれる?」
「う、うん、わかった!」
わたしとエルルカはなんだか気恥ずかしくなりながらも、みんなに教えてもらったようにお城を進むんだけど、なんだかどんどん廊下が薄暗くなっていってないかい? まるで、辺境の奥地に向かうような不安感。エルルカも困惑気味。
そして、この豪華絢爛なお城の隅っこに、まるで隠れ潜むようにその部屋の扉はあった。このちっぽけな木の扉だけが安っぽく古ぼけていて、まるでどこか違うところから持ってきて適当に貼り付けたような場違いな佇まいだった。
まるで未踏破の遺跡の扉であるかのように、その真鍮製のドアノブを慎重におそるおそる……
「あ、あのー失礼しまっくしゅんッ」
ドアを開けたその先は、本と埃でできていた。
窓から入る日光がきらきらと埃を綺麗に見せかけている薄暗い部屋。そこでは、もう一歩目から足の踏み場もないほど乱雑にうず高く積まれた本が、至る所で不安定な山脈を形成している。狭い部屋が本でぎっしりと埋め尽くされている光景は、圧巻の……圧巻の、
「くしゅんッ!」
そう、とにかく圧巻の埃っぽさだ。本なんて一切関係なく、何年も封印されてきた扉を開け放ったかのような荒廃感。ただただ埃がすごい。くしゃみが止まらない。
「おお、ワインドワーク様の部屋の扉が開いたぞ!」
「ワインドワーク様、どこにいらっしゃるのですか、是非姿をお見せになってくださらぬか」
「ねえ、この前みたいに色んなお話を聞かせてよ!」
……あれ、おじいちゃんってば、結構人気者なのかしら?
まるで一切の侵入を阻む城塞のような本の山も埃もなんのその、一気に狭い部屋へとなだれ込むエルルカ探検隊。
「なんじゃこの騒ぎは! 出ていけ! 一体何事じゃ、こんなに大勢で押しかけ寄ってからに、邪魔じゃ!」
のそりと本山脈の中から姿を現したのは、人類が未発見の未知なる生物……ではなく、
「おじいちゃん! 部屋をこんなに本と埃だらけにして! 身体に良くないわ!」
「なんじゃ、エルルカか、こんなところに何の用じゃ。久しぶりに来おってからにわざわざ文句でも言いに来たのか」
元々の加齢のせいなのだろう、杖をついた小柄なおじいちゃんは、少しだけ腰が曲がってさらに小さく見える。それでも、その迫力はどこから来るのだろうか。ぼさぼさの白髪がまるで頭の横に伸びたふわふわの角みたい。少し後退してしまった広めのおでこにしわだらけのしかめ面。
本の隙間からわたし達を威嚇するその姿は、縄張りを荒らされて不機嫌な老犬の様相。
「ねえ、ごめんなさい、みなさん。おじいちゃんはあんまり騒がしいのは得意じゃないの。今は私達だけにしてもらえるかしら」
きっと、図書館に行く人の何割かはエルルカ目当てだ。それにこの探検隊の中にもいるな、エルルカのファンが。
だって、ふわりと振り返って、困った表情でエルルカが申し訳なさそうにそう言うと、、探検隊隊員たちはやけにあっさりと身を引くんだもの。いや、これは、探検隊、というより、むしろエルルカ親衛隊か。
確かにエルルカは綺麗だし、少しおっとりしていて守りたくなるタイプだし、礼儀正しくて、眼鏡かけてるし、頭もいいし、いつもは図書館のゆったりした制服を着ているけどスタイルもいい。今日のコーディネートはエルルカファン諸君にはちょっと刺激が強すぎるかな。
そして、その全てを無自覚に周囲に振り撒くエルルカの無差別魅了爆撃は破壊力絶大すぎる。やはり胸囲……!! 胸囲は全てを解決する……!!
「それで、引きこもりのお前がわしなんぞに何の用じゃ」
「どうせこの部屋からほとんど出ていないおじいちゃんには言われたくないわね」
そんなことを言いながら、もうすでにワンピースの袖を捲ったエルルカの両手には箒とちりとり、それに、空中にはふわふわと様々なお掃除用具が浮いていた。
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「う、うん、わかった!」
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