この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

文字の大きさ
24 / 235
Prologue

異世界情緒ーー④

しおりを挟む
 そうして、いつの間にやら鎧に身を包んだ護衛兵やお城の学者、それに、小さな王子さままでもをがっしゃがっしゃと引き連れる大所帯となってしまった。どうしてこうなった? あと、なんかちょっと違うのと、不穏なのいなかった?

 わたしとエルルカはなんだか気恥ずかしくなりながらも、みんなに教えてもらったようにお城を進むんだけど、なんだかどんどん廊下が薄暗くなっていってないかい? まるで、辺境の奥地に向かうような不安感。エルルカも困惑気味。

 そして、この豪華絢爛なお城の隅っこに、まるで隠れ潜むようにその部屋の扉はあった。このちっぽけな木の扉だけが安っぽく古ぼけていて、まるでどこか違うところから持ってきて適当に貼り付けたような場違いな佇まいだった。

 まるで未踏破の遺跡の扉であるかのように、その真鍮製のドアノブを慎重におそるおそる……

「あ、あのー失礼しまっくしゅんッ」

 ドアを開けたその先は、本と埃でできていた。

 窓から入る日光がきらきらと埃を綺麗に見せかけている薄暗い部屋。そこでは、もう一歩目から足の踏み場もないほど乱雑にうず高く積まれた本が、至る所で不安定な山脈を形成している。狭い部屋が本でぎっしりと埋め尽くされている光景は、圧巻の……圧巻の、

「くしゅんッ!」

 そう、とにかく圧巻の埃っぽさだ。本なんて一切関係なく、何年も封印されてきた扉を開け放ったかのような荒廃感。ただただ埃がすごい。くしゃみが止まらない。

「おお、ワインドワーク様の部屋の扉が開いたぞ!」

「ワインドワーク様、どこにいらっしゃるのですか、是非姿をお見せになってくださらぬか」

「ねえ、この前みたいに色んなお話を聞かせてよ!」

 ……あれ、おじいちゃんってば、結構人気者なのかしら?

 まるで一切の侵入を阻む城塞のような本の山も埃もなんのその、一気に狭い部屋へとなだれ込むエルルカ探検隊。

「なんじゃこの騒ぎは! 出ていけ! 一体何事じゃ、こんなに大勢で押しかけ寄ってからに、邪魔じゃ!」

 のそりと本山脈の中から姿を現したのは、人類が未発見の未知なる生物……ではなく、

「おじいちゃん! 部屋をこんなに本と埃だらけにして! 身体に良くないわ!」

「なんじゃ、エルルカか、こんなところに何の用じゃ。久しぶりに来おってからにわざわざ文句でも言いに来たのか」

 元々の加齢のせいなのだろう、杖をついた小柄なおじいちゃんは、少しだけ腰が曲がってさらに小さく見える。それでも、その迫力はどこから来るのだろうか。ぼさぼさの白髪がまるで頭の横に伸びたふわふわの角みたい。少し後退してしまった広めのおでこにしわだらけのしかめ面。

 本の隙間からわたし達を威嚇するその姿は、縄張りを荒らされて不機嫌な老犬の様相。

「ねえ、ごめんなさい、みなさん。おじいちゃんはあんまり騒がしいのは得意じゃないの。今は私達だけにしてもらえるかしら」

 きっと、図書館に行く人の何割かはエルルカ目当てだ。それにこの探検隊の中にもいるな、エルルカのファンが。

 だって、ふわりと振り返って、困った表情でエルルカが申し訳なさそうにそう言うと、、探検隊隊員たちはやけにあっさりと身を引くんだもの。いや、これは、探検隊、というより、むしろエルルカ親衛隊か。

 確かにエルルカは綺麗だし、少しおっとりしていて守りたくなるタイプだし、礼儀正しくて、眼鏡かけてるし、頭もいいし、いつもは図書館のゆったりした制服を着ているけどスタイルもいい。今日のコーディネートはエルルカファン諸君にはちょっと刺激が強すぎるかな。

 そして、その全てを無自覚に周囲に振り撒くエルルカの無差別魅了爆撃は破壊力絶大すぎる。やはり胸囲……!! 胸囲は全てを解決する……!!

「それで、引きこもりのお前がわしなんぞに何の用じゃ」

「どうせこの部屋からほとんど出ていないおじいちゃんには言われたくないわね」

 そんなことを言いながら、もうすでにワンピースの袖を捲ったエルルカの両手には箒とちりとり、それに、空中にはふわふわと様々なお掃除用具が浮いていた。

「まずは、お掃除ね。申し訳ないけど、キティさんも手伝ってくれる?」

「う、うん、わかった!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...