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白紙→描写
ーー 【 】 ーー②
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「おーい、大丈夫かー? そんなところで何してるんだー?」
遥か下の方から男の人の低い叫び声がした。わたしに声をかけているのかな。わからない、怖い、不必要な接触は危ないかもしれない。この世界ではじめてのコミュニケーションを取ろうとしている、怖すぎる。圧倒的に無防備だし隠れていよう。そっと身をよじると、木の枝がみりみりがさがさと盛大にわたしの居場所をお知らせしてくれた。
切なく吐息、わたしは隠れるのを諦めることにして、わたしの身体と行く末と命運の全てをこの大木に賭けることにした。
「おーい、そこの木の枝に絡まっているお嬢さーん、キミだー、キミに話しかけているぞー!」
あ、完全にバレてるな、これ。
こうなったらしょーがない、どんなにお粗末な物語でもとっとと始まるしかない。切なく吐息。終わりよければすべて良し、らしいし。
物語の導入なんて案外適当な方がいいのかもしれない。
「ねえ、わたしにはこの木から降りる方法がどうしても思いつかないの! 木の枝が邪魔で動けないの! どうか助けてくれないかしら!」
情けないほど必死の叫び声。嗚呼、わたしの声はなんでこんなにも綺麗じゃないのだろうか。
そうして、しばらくしてわたしの目の前にぬっと現れたのは、精悍で顎に少しだけ無精髭が伸びている口元だけ。分厚い茶色のフードで隠れていて良く見えなかったから不自由なわたしが見えたのはそこまで。だけど、きっとわたしよりも背は大きいしずっと大人だと思う。
「大丈夫か、怪我はないか?」
「うん、身体を動かせないからよく分からないけど、たぶん大丈夫だと思う」
「それなら良かった」
彼の表情はフードの奥でいまいち分からない。けど、きっとにこりと微笑んでいたんじゃないかな。
「あ、そこの鳥の巣は壊さないでほしいの。約束したんだ、壊さないって」
「はいはい、お気に召すままに、木の枝姫」
彼は巧みにナイフを操り、もちろん鳥の巣もなるべく壊さないようにしながら、わたしの身体から木の枝を解いてくれた。「しかし……、どうしたらこんなにも絶妙に絡まれるんだ」「ね、不思議よね」
彼は軽々とわたしを背負うと手慣れた動作で大きな木をするする降りていく。この大木みたいに大きな背中、きっとこの近くでこの森と一緒に暮らしているのだろう。
「さあ、もう大丈夫だ、お姫さま」
彼はニコリと笑んでひょいっとわたしを下してくれた。
そうして、わたしはようやく、ようやくこの世界に降り立ったのだ。
くしゃり、枯葉が敷き詰められたやわらかくて少しくすぐったい大地の感触。生の足の裏にふんわりかさかさした肌触りが心地良い。
両足で地面に立てば、わたしの極めて希薄な存在感でもしっかりと身体には重力を感じられる。わたしはこの世界に存在している、存在していいんだと改めて認められたような気がした。思わず微笑。
わたしの世界が変わってしまうのはイヤだったはずなのに、今はちょっとだけ嬉しいかも。
大きく深呼吸、少し苔っぽい湿った森の匂いも緑と茶色の色彩も木々が揺れ虫や鳥が囁く声も、ちゃんと大地を踏みしめながらなら余裕を持って感じることが出来る。
嗚呼、世界はなんて素晴らしい!
遥か下の方から男の人の低い叫び声がした。わたしに声をかけているのかな。わからない、怖い、不必要な接触は危ないかもしれない。この世界ではじめてのコミュニケーションを取ろうとしている、怖すぎる。圧倒的に無防備だし隠れていよう。そっと身をよじると、木の枝がみりみりがさがさと盛大にわたしの居場所をお知らせしてくれた。
切なく吐息、わたしは隠れるのを諦めることにして、わたしの身体と行く末と命運の全てをこの大木に賭けることにした。
「おーい、そこの木の枝に絡まっているお嬢さーん、キミだー、キミに話しかけているぞー!」
あ、完全にバレてるな、これ。
こうなったらしょーがない、どんなにお粗末な物語でもとっとと始まるしかない。切なく吐息。終わりよければすべて良し、らしいし。
物語の導入なんて案外適当な方がいいのかもしれない。
「ねえ、わたしにはこの木から降りる方法がどうしても思いつかないの! 木の枝が邪魔で動けないの! どうか助けてくれないかしら!」
情けないほど必死の叫び声。嗚呼、わたしの声はなんでこんなにも綺麗じゃないのだろうか。
そうして、しばらくしてわたしの目の前にぬっと現れたのは、精悍で顎に少しだけ無精髭が伸びている口元だけ。分厚い茶色のフードで隠れていて良く見えなかったから不自由なわたしが見えたのはそこまで。だけど、きっとわたしよりも背は大きいしずっと大人だと思う。
「大丈夫か、怪我はないか?」
「うん、身体を動かせないからよく分からないけど、たぶん大丈夫だと思う」
「それなら良かった」
彼の表情はフードの奥でいまいち分からない。けど、きっとにこりと微笑んでいたんじゃないかな。
「あ、そこの鳥の巣は壊さないでほしいの。約束したんだ、壊さないって」
「はいはい、お気に召すままに、木の枝姫」
彼は巧みにナイフを操り、もちろん鳥の巣もなるべく壊さないようにしながら、わたしの身体から木の枝を解いてくれた。「しかし……、どうしたらこんなにも絶妙に絡まれるんだ」「ね、不思議よね」
彼は軽々とわたしを背負うと手慣れた動作で大きな木をするする降りていく。この大木みたいに大きな背中、きっとこの近くでこの森と一緒に暮らしているのだろう。
「さあ、もう大丈夫だ、お姫さま」
彼はニコリと笑んでひょいっとわたしを下してくれた。
そうして、わたしはようやく、ようやくこの世界に降り立ったのだ。
くしゃり、枯葉が敷き詰められたやわらかくて少しくすぐったい大地の感触。生の足の裏にふんわりかさかさした肌触りが心地良い。
両足で地面に立てば、わたしの極めて希薄な存在感でもしっかりと身体には重力を感じられる。わたしはこの世界に存在している、存在していいんだと改めて認められたような気がした。思わず微笑。
わたしの世界が変わってしまうのはイヤだったはずなのに、今はちょっとだけ嬉しいかも。
大きく深呼吸、少し苔っぽい湿った森の匂いも緑と茶色の色彩も木々が揺れ虫や鳥が囁く声も、ちゃんと大地を踏みしめながらなら余裕を持って感じることが出来る。
嗚呼、世界はなんて素晴らしい!
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