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起承転結《 》
―― 【深層義肢】――⑥
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「さて、我はここに晒され続けていよう、今のところその方が世界は平和だ」
【深層義肢】のそんな言葉に、違うって反論したくて、そうじゃない何かを言いたくて、でも、わたしは何も言い返せないでいた。こんなひどい状態になっても、彼女のその機能は錯誤世界に必要不可欠で。
だからこそ、彼女のためにわたしが何もできないのがとても辛くて。
「よもや、そなたは希望の具現なのかもしれぬな。だからこそ皆そなたに力を託す。我もそなたの歩む旅路に幸あらんことを希う」
だけど、【深層義肢】は、思わず俯いてしまったそんなわたしに、こんなにも優しい言葉を掛けてくれる。それが一層わたしの胸を締め付ける。
“始源拾弐機関”は旅立ちに幸運を祈ってくれる、【不浄遺棄地域】も【論議主】も、それに、【軌条空論・紙一重】だってそうだった。わたしとラフィーナを送り出す【心励起/仇多羅急行】の表情が暗かったのは、きっとホントは戦場になんて行かせたくなかっただけなんだ、って今なら思える。だから、わたしもだれかを送り出すときがやってきたら、みんなと同じようにそうしよう。
快く旅立てるように、あらん限りの祝福を。
それが、何もできないわたしが唯一できるかもしれないことだから。
「よくわからないけど、こんな真っ白無色透明なわたしが希望の具現かあ、ふふ、そうなら嬉しいな」
「何を言うておる、我らが託した色だけではない、そなたは確かにそなたの色に彩られているであろうに」
「え?」
「我が視覚機能は抉り取られて破壊されているが、我には確かにそなたの色が見える。その色がどんなものなのかはそなたが探すのであろう?」
【深層義肢】にそう言われて、ハッとしてしまう。思わず顔を上げれば、【深層義肢】はうんざりするほどの青空にぎーぎーと軋み、わたしの横に佇むメルトは燃えるような紅い眼差しをわたしに向けていた。
そうだ、わたしの物語はそういうものだった。さっきまで自分でそう言ってたじゃない。わたしの、わたしだけの色を探すような、そんな物語。素敵な物語。
「しかし、これはそなたの物語なのであろう? 我らはそなたの物語に介入しようとは思わぬ。世界は斯様に変わってしまったが、それでもまだ広い。そなたはその足で好きなように歩めばよいのだ」
「そう、これはわたしの物語、そして、小鳥遊 小烏丸、とかいう女神にめちゃくちゃにされた物語。だから、この物語は自分の物語を取り戻すお話なの」
何も持っていない、剣も魔法も使えないただの子どもでしかないわたしが綴る物語だ。決して、神を殺す、世界を壊す、なんて、そんな物騒な物語じゃない。そんな壮大な物語でもないはずなんだ。他愛もない少女が世界を巡る、ただそれだけの物語。
「それに、わたしの物語ははじめから“始源拾弐機関”を探して、自分自身を知るための物語なんだから」
「そうか、ならば、他の“始源拾弐機関”を探すがよい、そなたの力となってくれるであろう」
「あ、そうだ、他の“始源拾弐機関”がどこにいるか知らないかしら?」
「ふむ、それならば【超弦骨格暫定式・波動帝國】は壊されてしまったが、まだ破片は遺されている。この世界の崩壊を防いでくれるというのならば彼女を奉っていた国に向かうとよい」
国、そうか、まだこの世界にも国はあるのか。神と転生者は何も完全にこの世界を滅ぼそう、ってわけでもなさそうなのね。
まあ、確かに本当に新たな世界を創造しようとするなら、【深層義肢】だって先に壊してしまうだろうし。もしかしたら、神だって存在定義を司るものが壊されたら存在できなくなってしまうのかもしれない。
「その国は、以前はジグレイヴィオンという王国“だった”」
「“だった”?」
「転生者の襲撃にあったのだ、今はどうなっているのかわからぬ」
「あ」
そこがまともな国である保証はどこにもない。もしかしたら、転生者の転生者による転生者のための国になっているかもしれない。少なくとも、この世界に生きる者たちの国ではないことだけは確かだ。元々そこに住んでいた国民が無事だといいけれど。
ーー ーー
【深層義肢】のそんな言葉に、違うって反論したくて、そうじゃない何かを言いたくて、でも、わたしは何も言い返せないでいた。こんなひどい状態になっても、彼女のその機能は錯誤世界に必要不可欠で。
だからこそ、彼女のためにわたしが何もできないのがとても辛くて。
「よもや、そなたは希望の具現なのかもしれぬな。だからこそ皆そなたに力を託す。我もそなたの歩む旅路に幸あらんことを希う」
だけど、【深層義肢】は、思わず俯いてしまったそんなわたしに、こんなにも優しい言葉を掛けてくれる。それが一層わたしの胸を締め付ける。
“始源拾弐機関”は旅立ちに幸運を祈ってくれる、【不浄遺棄地域】も【論議主】も、それに、【軌条空論・紙一重】だってそうだった。わたしとラフィーナを送り出す【心励起/仇多羅急行】の表情が暗かったのは、きっとホントは戦場になんて行かせたくなかっただけなんだ、って今なら思える。だから、わたしもだれかを送り出すときがやってきたら、みんなと同じようにそうしよう。
快く旅立てるように、あらん限りの祝福を。
それが、何もできないわたしが唯一できるかもしれないことだから。
「よくわからないけど、こんな真っ白無色透明なわたしが希望の具現かあ、ふふ、そうなら嬉しいな」
「何を言うておる、我らが託した色だけではない、そなたは確かにそなたの色に彩られているであろうに」
「え?」
「我が視覚機能は抉り取られて破壊されているが、我には確かにそなたの色が見える。その色がどんなものなのかはそなたが探すのであろう?」
【深層義肢】にそう言われて、ハッとしてしまう。思わず顔を上げれば、【深層義肢】はうんざりするほどの青空にぎーぎーと軋み、わたしの横に佇むメルトは燃えるような紅い眼差しをわたしに向けていた。
そうだ、わたしの物語はそういうものだった。さっきまで自分でそう言ってたじゃない。わたしの、わたしだけの色を探すような、そんな物語。素敵な物語。
「しかし、これはそなたの物語なのであろう? 我らはそなたの物語に介入しようとは思わぬ。世界は斯様に変わってしまったが、それでもまだ広い。そなたはその足で好きなように歩めばよいのだ」
「そう、これはわたしの物語、そして、小鳥遊 小烏丸、とかいう女神にめちゃくちゃにされた物語。だから、この物語は自分の物語を取り戻すお話なの」
何も持っていない、剣も魔法も使えないただの子どもでしかないわたしが綴る物語だ。決して、神を殺す、世界を壊す、なんて、そんな物騒な物語じゃない。そんな壮大な物語でもないはずなんだ。他愛もない少女が世界を巡る、ただそれだけの物語。
「それに、わたしの物語ははじめから“始源拾弐機関”を探して、自分自身を知るための物語なんだから」
「そうか、ならば、他の“始源拾弐機関”を探すがよい、そなたの力となってくれるであろう」
「あ、そうだ、他の“始源拾弐機関”がどこにいるか知らないかしら?」
「ふむ、それならば【超弦骨格暫定式・波動帝國】は壊されてしまったが、まだ破片は遺されている。この世界の崩壊を防いでくれるというのならば彼女を奉っていた国に向かうとよい」
国、そうか、まだこの世界にも国はあるのか。神と転生者は何も完全にこの世界を滅ぼそう、ってわけでもなさそうなのね。
まあ、確かに本当に新たな世界を創造しようとするなら、【深層義肢】だって先に壊してしまうだろうし。もしかしたら、神だって存在定義を司るものが壊されたら存在できなくなってしまうのかもしれない。
「その国は、以前はジグレイヴィオンという王国“だった”」
「“だった”?」
「転生者の襲撃にあったのだ、今はどうなっているのかわからぬ」
「あ」
そこがまともな国である保証はどこにもない。もしかしたら、転生者の転生者による転生者のための国になっているかもしれない。少なくとも、この世界に生きる者たちの国ではないことだけは確かだ。元々そこに住んでいた国民が無事だといいけれど。
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