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―― 【飢餓之太刀・饗宴姫】 ――⑤
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「あのクソ女神はオレらを騙しやがった」
アヴァリスのその人間性すら失いかけている狂気じみた表情がさらに醜く歪む。
ようやくあの女神様が彼ら転生者の救済者ではないと気付いた。でも、遅すぎた、転生してからではもう遅い。もう、神様の言う通り。
いつか、神様に使い潰される転生者の中から、その事実に気付く者がいるかもしれないと思っていた、いや、願っていた。もしかしたら、そんな彼らと共同戦線が張れるかもしれない、と。
だけど、それがアヴァリスだったのはあんまり嬉しくないし、どうやら、彼らは決してわたし達の味方でもないらしい。まあ、彼との共同戦線なんてこっちからお断りだしね。
「オレ達に救いはねえ。なら、自分達の手で何とかするしかねえだろ」
それじゃあ、彼らにとってこの錯誤世界は何だったんだろう。
ただ単に自分に都合のいいだけの全て遠き理想郷だったのだろうか。
この世界で彼らがやりたかったのは、本当にこんなことだったのか。
それとも、彼らが元いた世界での非業の死から立ち直るための新天地だったのだろうか。
どちらにしても、彼らはこの世界の住人であるわたし達を顧みることをしなかった。自分達の欲望と主人公補正を振りかざすだけのただの侵略者と成り下がってしまった。郷に入っては郷に従え、この世界で生きたいなら、そう、彼らの大好きなゲームのように、この世界におけるルールをしっかり把握するべきだったんだ。
自分達のことは自分達で救う、アヴァリスのその考え自体には激しく同意。
でも、それは、この世界ですることじゃない。転生する前にだってできることがあったはずだ。特に、女神によってこの錯誤世界に転生させられたような人格破綻者達は。
自身の救いを他者や世界に求めるのは少し違うと思う。まずは自分から手を伸ばす、話はそれからだ。誰も彼もそんなことも学びやしない。
主人公であるはずのわたしだってこの錯誤世界で一生懸命足掻いているっていうのに。……ん? 良く考えたら、主人公なのに無双も楽もできやしないなんて全くもってふざけてない?
「オレは神を殺す、殺してやる。そのためにお前らの力を利用する」
ああ、それだけを聞くと、なんだか力を得るためには手段を選ばないダークファンタジーの主人公みたいで、う、そんな時期がわたしにもありました。
アヴァリスのその人間性すら失いかけている狂気じみた表情がさらに醜く歪む。
ようやくあの女神様が彼ら転生者の救済者ではないと気付いた。でも、遅すぎた、転生してからではもう遅い。もう、神様の言う通り。
いつか、神様に使い潰される転生者の中から、その事実に気付く者がいるかもしれないと思っていた、いや、願っていた。もしかしたら、そんな彼らと共同戦線が張れるかもしれない、と。
だけど、それがアヴァリスだったのはあんまり嬉しくないし、どうやら、彼らは決してわたし達の味方でもないらしい。まあ、彼との共同戦線なんてこっちからお断りだしね。
「オレ達に救いはねえ。なら、自分達の手で何とかするしかねえだろ」
それじゃあ、彼らにとってこの錯誤世界は何だったんだろう。
ただ単に自分に都合のいいだけの全て遠き理想郷だったのだろうか。
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それとも、彼らが元いた世界での非業の死から立ち直るための新天地だったのだろうか。
どちらにしても、彼らはこの世界の住人であるわたし達を顧みることをしなかった。自分達の欲望と主人公補正を振りかざすだけのただの侵略者と成り下がってしまった。郷に入っては郷に従え、この世界で生きたいなら、そう、彼らの大好きなゲームのように、この世界におけるルールをしっかり把握するべきだったんだ。
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でも、それは、この世界ですることじゃない。転生する前にだってできることがあったはずだ。特に、女神によってこの錯誤世界に転生させられたような人格破綻者達は。
自身の救いを他者や世界に求めるのは少し違うと思う。まずは自分から手を伸ばす、話はそれからだ。誰も彼もそんなことも学びやしない。
主人公であるはずのわたしだってこの錯誤世界で一生懸命足掻いているっていうのに。……ん? 良く考えたら、主人公なのに無双も楽もできやしないなんて全くもってふざけてない?
「オレは神を殺す、殺してやる。そのためにお前らの力を利用する」
ああ、それだけを聞くと、なんだか力を得るためには手段を選ばないダークファンタジーの主人公みたいで、う、そんな時期がわたしにもありました。
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