この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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最終章:第二次新異世界大戦

ーーRe:新異世界リスポーンデッドライフーー②

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 一方、明らかに強者感が溢れ出ている彼女はというと、

「アタシは、成ㇽ阿久世 鍵炉火、はは、化け物じみてるだろ。アタシだってこんな名前イヤだっつーの」

と、改めて自身の名を高らかに宣うと、健在な方の左手で剣を鞘から引き抜いた。「じゃ、頼むぜ、フランカルマ」

 その刀身はまるで種類の違う白と黒の鋼を無理矢理継ぎ接ぎして鋼の糸で縫い合わせたかのような、異様、だった。そんなのがまともな剣だとはとても思えなくて、わたしの魔剣みたいに、実は剣としての機能はなく、触れたら即死、そんな馬鹿げたカタチなんじゃないかって気さえもしてしまう。

 あまりにも個性のクセが強い彼女にどんな物語があるのか想像もつかない。もしかしたら、その物語では彼女こそが主人公で、こっちの方こそがただのスピンオフ、もしくはゲスト参加的なヤツなのかもしれない。

 だけど、そうだとしても、ここで彼女に主人公の座を明け渡すわけにはいかない。どんなに彼女が主人公っぽくても、だ。

「アナタはどうして戦うの? なんだか戦いたくなんてなさそうなのに」

「おいおい、主人公がそんなこと言うなよ、アタシが惨めになっちまうじゃん」

 ふわりと舞う、その結わえてもなお顔を覆うほどの長い黒髪から垣間見えた彼女の真っ赤な瞳、その右下には酷く粗い縫い痕があった。あまりにも個性が強い! 特徴描写の化け物かよ!

「アタシはこの世界に用はねえんだわ。なんでもいいからさっさと殺してくれねえか?」

 そうは言いつつ、どうやら彼女もおとなしく殺されるのを待つような性分でもないらしい。しかも、その異能によってほとんど無敵だし。

 鍵炉火みたいな死にたがりに与えられた異能としてはあまりにも不憫だ。

 小さく吐息。こんなにも無価値な殺し合いが未だかつてあっただろうか。

「わかったわ、この世界では生死は巡りめく機能、【飢餓之太刀・饗宴姫】――世界を継続させるものが管理しているの」

 わたしは帽子に飾り付けられた銀の葉っぱのブローチに触れる。あの子の機能が頭上で光り輝き、そして、わたしの右手で収束する。

「生殺輪廻、キガノタチ・キョウエンヒメ」

 わたしの手の中にあったそれは、葉っぱが付いた木の枝をそのままにしたような小さな髪飾りだった。

「おお、かんざしじゃん、アタシのこれと一緒だ」

 何故か鍵炉火が嬉しそうに自分の頭を指さす。そうか、ああやって結わえた髪に差すものなのか。

 そこに差されたいくつもの髪飾りの豪華さとは比べ物にはならないけど、なんだか思い入れがある気がするのはこの機能の切ない物語を知っているからだろう。……え、これでどう戦えと?

「さあ、早くアタシを殺してくれよ」

 彼女はこの世界に囚われている。

 彼女を解放できるのはわたしだけかもしれない。

 この髪飾りこそが死に逝く彼女への手向けになるかもしれない。だからこそ、わたしはこの小さな髪飾りを強く握りしめた。

「ああ、今度こそ元の世界に生き返るかなあ」

「死ね」


 ーーFor now the hundred years were at an endーー
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