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異世界神話創世少女
【透明幻想・錯綜少女基底】①
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小鳥遊 小烏丸の消失を目の当たりにして。
「あら、ワタシはラフィーナ、ただのラフィーナよ、よろしくね、【透明幻想・錯綜少女基底】」
それでも、豪奢な水色のエプロンドレスを優雅に揺らす少女、ラフィーナの無邪気な笑顔が歪むことはなかった。
こんなはずじゃなかった。
わたしの物語のはじまりはじまりにいてくれた謎の少女、ラフィーナとこんな壊れた世界で、まるっきり敵対する者同士みたいになんて会いたくなかったのに。
錯誤世界、ミスティカエラは壊れてしまって、物語も破綻しかけている。
どう見たってここには、ラフィーナに見せられるものは一文字だって存在していなかった。
「ワタシったらただの読者でしかなかったの、本当よ。だけれどもね、アナタが世界を創り上げたときにワタシもこの物語に組み込まれてしまったの」
そうして、ただの読者だったはずの金髪碧眼幼女わがままお姫様のラフィーナは、わたしがかんがえたさいきょうのしゅじんこう、としてこの世界に降臨してしまったのか。
「それじゃあ、どうしたらアナタの望む物語になるの? この世界を壊して満足なの?」
自分の好きなように物語を変えてしまえる登場人物、そんなのめちゃくちゃだ、現実改変者よりも質が悪い。登場人物に振り回されるようじゃ作者失格じゃないか。
「ワタシったらこの世界を壊したかったんじゃないの。全部【かみごろし】のせいでしょ? だけれども、ちょっとは面白くなったんじゃないかしら?」
「そんなわけない! ……わたしはこんな破滅的な物語なんて望んでなかったのに」
「それじゃあ、どんな物語にしたかったのかしら?」
「それは……」
すぐにでも反論しようとして。
でも、ワタシは真っ白なページを自分の力だけじゃ埋めることができなかった。
ワタシは未だにこの物語がどんなふうになるのかわかっていないんだ。
ワタシが言い淀んでいると。
「ふふ、ねえ、この物語はアナタが作ったのでしょうけれどもね、この物語の1ページ目を開いたのはどうしようもなくワタシなのよ?」
「そ、それはっ……」
「だってそうでしょ? この物語で一番に言葉を紡いだのはどうしようもなくワタシなのですから」
そう、この物語の始まりを告げたのは確かにラフィーナだった。そう、わたしじゃない、わたしは始まらない物語の真っ白なまま、そこにいただけだった。
きっと、わたしはあの時ラフィーナが話しかけてくるまでずっと無色透明だった。それはもはや存在していないのと同じだった。
「ワタシがいなかったら、この物語ったら本棚の隅っこで埃を被っていただけの真っ白な物語よ? それを手に取ったワタシこそこの世界の神様だとは思わないかしら?」
あまりにも尊大すぎるその言葉の意味を、ラフィーナはまるで気にも留めていないようだった。つまり、誰も疑いようもなくこの世界の神は自身である、という確信が。
「あら、ワタシはラフィーナ、ただのラフィーナよ、よろしくね、【透明幻想・錯綜少女基底】」
それでも、豪奢な水色のエプロンドレスを優雅に揺らす少女、ラフィーナの無邪気な笑顔が歪むことはなかった。
こんなはずじゃなかった。
わたしの物語のはじまりはじまりにいてくれた謎の少女、ラフィーナとこんな壊れた世界で、まるっきり敵対する者同士みたいになんて会いたくなかったのに。
錯誤世界、ミスティカエラは壊れてしまって、物語も破綻しかけている。
どう見たってここには、ラフィーナに見せられるものは一文字だって存在していなかった。
「ワタシったらただの読者でしかなかったの、本当よ。だけれどもね、アナタが世界を創り上げたときにワタシもこの物語に組み込まれてしまったの」
そうして、ただの読者だったはずの金髪碧眼幼女わがままお姫様のラフィーナは、わたしがかんがえたさいきょうのしゅじんこう、としてこの世界に降臨してしまったのか。
「それじゃあ、どうしたらアナタの望む物語になるの? この世界を壊して満足なの?」
自分の好きなように物語を変えてしまえる登場人物、そんなのめちゃくちゃだ、現実改変者よりも質が悪い。登場人物に振り回されるようじゃ作者失格じゃないか。
「ワタシったらこの世界を壊したかったんじゃないの。全部【かみごろし】のせいでしょ? だけれども、ちょっとは面白くなったんじゃないかしら?」
「そんなわけない! ……わたしはこんな破滅的な物語なんて望んでなかったのに」
「それじゃあ、どんな物語にしたかったのかしら?」
「それは……」
すぐにでも反論しようとして。
でも、ワタシは真っ白なページを自分の力だけじゃ埋めることができなかった。
ワタシは未だにこの物語がどんなふうになるのかわかっていないんだ。
ワタシが言い淀んでいると。
「ふふ、ねえ、この物語はアナタが作ったのでしょうけれどもね、この物語の1ページ目を開いたのはどうしようもなくワタシなのよ?」
「そ、それはっ……」
「だってそうでしょ? この物語で一番に言葉を紡いだのはどうしようもなくワタシなのですから」
そう、この物語の始まりを告げたのは確かにラフィーナだった。そう、わたしじゃない、わたしは始まらない物語の真っ白なまま、そこにいただけだった。
きっと、わたしはあの時ラフィーナが話しかけてくるまでずっと無色透明だった。それはもはや存在していないのと同じだった。
「ワタシがいなかったら、この物語ったら本棚の隅っこで埃を被っていただけの真っ白な物語よ? それを手に取ったワタシこそこの世界の神様だとは思わないかしら?」
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