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【Imaginecode】
幻想聖剣 vs 幻想原子力空母
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「本物の聖剣があればボクだって」
小さな呟きは誰の耳にも届くことなく、この割れんばかりの大歓声の中で簡単に掻き消された。
このゲームをリアルタイムで視聴するアバター達は真っ白な仮想フィールドの外側、保護された観客エリアで今から始まる熱戦に心躍らせている。
ルールは一対一、相手を戦闘不能にした方が勝者、障害物無し。
実に単純明快。勝負は一瞬で決まるだろう、観客には悪いけど。
空中に展開された仮想フィールド、その広さはおそらく眼下に見えるこの街ひとつ分ほどもあるだろうか。
なんて大袈裟な。
思わず苦笑。
ボクは他人を圧倒できるような大した身体能力もないし、身体強化改造もしていない。
だけど、このゲームで勝敗を決めるのは筋力の強さじゃない。身体改造度でもない。
そう、だからこそボクはこの場所に立っている。
ボクはこの眩いばかりの仮想フィールドの端に立ち、今日の対戦相手と対峙する。
「さあ、とっとと始めようぜ、チャンピオン!」
その粗暴な口調のように乱雑な真っ赤な髪、それと相反する無機質な銀色の肌。顔の中心にある真っ赤に光る大きなモノアイからはその感情は見えない。だけど、にやりと大きく口角を吊り上げる不敵な笑み。大柄で屈強な身体にはさらに外装機関が追加されていてまさに、鋼鉄の塊、といった風情。ボクとは正反対だ。
彼こそはこのゲーム、【イマジンコード】のランカー2位、ギルデスタン・揺光・ブラックブラッド。通称、大艦隊のギルデス。
得意な戦法は絨毯爆撃と一斉砲火。
対個人に行われるこれがはたして戦法と呼べるのかは甚だ疑問ではあるけど。
そんな愚かな懸念など彼が知る由もなく。
「ファンタズム・セットアップ、ジェラルド・R・フォード級航空母艦、ドリス・ミラー!」
地響きすら感じる盛大な雄叫びと共に。
莫大な量の魔力がギルデスタンの身体の許容限界ギリギリまで内蔵されたナノマシンから解放される。
彼の背後に形成され、そびえ立つ聖遺物は、フィールドを埋め尽くす鋼の巨躯。
それは、遠い過去に存在した伝説の原子力空母艦。
全長337m、最大幅78m、最大乗員数役4500人、誇り高く語るべき数字はもっとたくさんあるだろうけど、そのどれもがボク達が考えうる全てを凌駕する超大規模。
こんな鋼鉄で完全武装した化け物が海の上に浮かんでいたなんて想像もできない。
そんなのが、今はボクの目の前で仮想フィールドの少し上を浮遊している。
圧倒的質量と火力。その威圧感だけで思わず尻込みしてしまいそうだ。
「はは、こりゃすごいな」
そんなものを目の当たりにして、こんな乾いた感想しか出てこない自身の口にうんざりする。
こんなものが対人兵器ではあるはずない、その出力はもはや対国兵器にも匹敵する。
つまり、この空母艦だけで一国を殲滅することが可能。
「また義体換装したのか?」
個人の魔力出力だけでこんな化け物じみた聖遺物を具現化させるなど到底不可能だ。
以前とは比べ物にならないほどの魔力。
そして、前回の対戦時とは明らかに異なる人間離れした身体構造。
「今回はそれだけじゃねえぞ、前も言ったろ、オレにはスポンサーが山ほど付いてんだよ。魔力出力増強改造に、最新鋭の外装起因機関も搭載したんだ」
もはや人間を人間たらしめる定義はとっくの昔に変わっている。それに、ここはそんなことを議論する場でもない。
「今のオレはマジで国ひとつと戦争起こせるんだぜ?」
それはそうだろう。このゲームが始まって以来無敗の絶対的王者を倒せるかもしれないと期待されている彼にはスポンサーが全世界中にいる。そんな無尽蔵に湧いてくる財力をもってすれば全世界に戦争をしかけても全く無傷で勝てそうな怪物を作り出すことも可能だろう。
それを、ボクを倒すためだけに使おうだなんて。
なんて平和な世の中だ。
もはや物理的な戦争なんて時代遅れだ。
ほんのわずかな国境線の引き直しに意味はなくなった。ヴァーチャルに国境なんて関係ないからだ。
誰も戦争なんてしたがらないのは、誰も戦争に興味がなくなってしまって儲からないからだ。
ああ、なんて平和なんだろう。
そんな世界に感謝するように、ボクは両手を前にかざす。
「ファンタズム・セットアップ、」
まるで祈りのようじゃないか。幻想なんて信じていやしないのに。
ボクは静かに聖遺物具現化を実行する。
「――聖剣、エクスカリバー」
それは、一振りの剣。
誰しもが憧れた幻想の究極。
身の丈ほどの光り輝く幅広の両刃。
装飾はあまりなく、それでも金色に輝く柄の先には大きな宝石が煌めいている。
その圧倒的な神々しさはまさに、聖剣と呼ぶにふさわしい威厳を放っている。
しかし。
白きフィールドでさえ眩ませるほどの白光を放つ聖剣ですら、目の前の強大な鋼の怪物と対峙するにはあまりにも心許なく見えてしまう。
円卓の原典でさえ実現しなかった聖剣による怪物退治。
それが今まさに実現しようとしている。
それでも、あまりにも分が悪すぎる。
いくらなんでもさすがにそんなこと無理なのではないか。チャンピオンの勝利を確信していたギャラリーでさえそう思わせる絶望的な質量差。
不意に訪れる静寂。
観衆の、ギルデスタンの、そして、ボクの心臓の音だけが高まる無音の中に響き渡るよう。
誰しもがその瞬間を固唾を飲んで見つめている。
そう、そのコールの瞬間を。
そして。
『ランク1位、アーサーvsランク2位、ギルデスタン、ゲームスタート!』
高らかに宣言されるデスゲームの始まり。
互いの聖遺物が具現化された瞬間がゲーム開始の合図。
いよいよ始まるトップランカー同士の対決。
歓喜の最高潮。
揺れる仮想フィールド。
それとリンクするように。
凪いでいるはずの意思に反して昂揚する心臓。
ああ、さすがにこんな状況じゃボクだって興奮するさ。
「旧式だがコイツの活躍はもはや伝説だ、テメエだって名前くらいは知ってるだろ? いつまでもそんな手垢まみれで古ぼけた神話じゃあ勝てねえぞ!」
巨大な砲台がぬるり、獲物を見つけ鎌首をもたげるように機敏に照準を合わせる。満載されたミサイルがボクを冷たく睨み付けている。蛇に睨まれたカエルってところか。
「全弾発射!!」
鬨の声を上げるギルデスタン。呼応、枷から解放されたかのように。何の躊躇もなく全てのミサイルがボクに向かって狂う。
超至近距離、照準なんて合わせなくてももはやその威力と爆風だけで一瞬後には消し炭にされるだろう。
躱すタイミングすらない、どこにも逃げ場はない。だから言ったんだ、こんな広いフィールドは無意味だって。
真っすぐに突撃してくる明確な死の旋風。
「聖剣使い、今日こそテメエを倒してやる」
フルバースト状態のギルデスタンは動けない。いや、動く必要すらないだろう。
そこにあるだけで全てを殲滅する鋼鉄の要塞。
だけど、それでも。
「そんな幻想だけじゃボクには勝てない、少しは現実を直視した方がいいよ」
真っすぐに迫り狂うミサイルの嵐を見つめ、それでも、せっかく昂ったはずのボクの心臓はまた冷えてしまった。もう、あの熱い心音は聞こえない。
まだ足りない。
仮想現実が作り出しただけの贋作ではボクにはまだ届かない。
なぜならば、願いとは決してまやかしの幻想ではないからだ。
「聖剣、とは人々の願いの収束点だ、」
ゆっくりと聖剣を掲げる。
光り輝く剣。それはあまりにも神々しく、
「聖剣なら負けない、聖剣は強い、聖剣は壊れない、聖剣はどんな強敵にも打ち克つ、聖剣こそが正義。人々による、聖剣はこうあるべきという形になる、そういう幻想だ」
目も眩むほどの真っ白な光が剣に収束するように渦巻く。
まさに、戦場を照らす希望の光。その集束。
「約束された勝利のイメージを具現化する最強の聖遺物。それこそが聖剣、エクスカリバーだ」
威風堂々と振り下ろされた大剣は、しかし、その要塞じみた空母艦から見ればほんの些細な小枝にしか見えず。その聖剣は、弾幕の如く発射されたミサイルのその一発より小さい。
この状況を覆すには奇跡でさえ物足りない。予定調和でさえ破綻する。
誰しもがそう思っている。
聖剣使いの姿を見るのはこれが最後かもしれない、と。
そして。
護国の英雄が放つ大量破壊と、人々の希望の光が衝突する。
その衝撃はすさまじく、ありとあらゆる不測の事態を想定しているはずの仮想フィールドにすら至る所にノイズが走り、情報の過負荷によって多数のバグが生じる。
アバターであるはずの観客ですらその規格外の衝撃に、悲鳴を上げパニックを巻き起こし、一時騒然となる。
警告音、何も見えないフィールドの全容、勝敗のコールすらない。
動揺は次第に収まるが、次には騒然としたざわめき。
そんな中で。
晴れていく光と粉塵から姿を現したのは。
『聖遺物消失、ギルデスタン再起不能! 勝者、アーサー!』
ようやくされたコールに。
観客はさっきまでの不安なんて無かったかのように狂喜する。今度はこの大歓声こそがフィールドを壊してしまうのではないか、そんな気さえしてしまう。
そんなノイズもバグもまだ収まっていない仮想フィールドの片隅で。
互いの思惑と幻想が真っ向から衝突したはずの爆心地で。
ボクはただ立ち尽くす。
「こんな贋作で手にした栄光は本当に勝利といえるのか」
幾度となく聞いた大歓声の中、ボクはいつまでも虚しくそこに立っていた。
「本物の聖剣があればボクだって」
小さな呟きは誰の耳にも届くことなく、この割れんばかりの大歓声の中で簡単に掻き消された。
ーーPhantasm setupーー
小さな呟きは誰の耳にも届くことなく、この割れんばかりの大歓声の中で簡単に掻き消された。
このゲームをリアルタイムで視聴するアバター達は真っ白な仮想フィールドの外側、保護された観客エリアで今から始まる熱戦に心躍らせている。
ルールは一対一、相手を戦闘不能にした方が勝者、障害物無し。
実に単純明快。勝負は一瞬で決まるだろう、観客には悪いけど。
空中に展開された仮想フィールド、その広さはおそらく眼下に見えるこの街ひとつ分ほどもあるだろうか。
なんて大袈裟な。
思わず苦笑。
ボクは他人を圧倒できるような大した身体能力もないし、身体強化改造もしていない。
だけど、このゲームで勝敗を決めるのは筋力の強さじゃない。身体改造度でもない。
そう、だからこそボクはこの場所に立っている。
ボクはこの眩いばかりの仮想フィールドの端に立ち、今日の対戦相手と対峙する。
「さあ、とっとと始めようぜ、チャンピオン!」
その粗暴な口調のように乱雑な真っ赤な髪、それと相反する無機質な銀色の肌。顔の中心にある真っ赤に光る大きなモノアイからはその感情は見えない。だけど、にやりと大きく口角を吊り上げる不敵な笑み。大柄で屈強な身体にはさらに外装機関が追加されていてまさに、鋼鉄の塊、といった風情。ボクとは正反対だ。
彼こそはこのゲーム、【イマジンコード】のランカー2位、ギルデスタン・揺光・ブラックブラッド。通称、大艦隊のギルデス。
得意な戦法は絨毯爆撃と一斉砲火。
対個人に行われるこれがはたして戦法と呼べるのかは甚だ疑問ではあるけど。
そんな愚かな懸念など彼が知る由もなく。
「ファンタズム・セットアップ、ジェラルド・R・フォード級航空母艦、ドリス・ミラー!」
地響きすら感じる盛大な雄叫びと共に。
莫大な量の魔力がギルデスタンの身体の許容限界ギリギリまで内蔵されたナノマシンから解放される。
彼の背後に形成され、そびえ立つ聖遺物は、フィールドを埋め尽くす鋼の巨躯。
それは、遠い過去に存在した伝説の原子力空母艦。
全長337m、最大幅78m、最大乗員数役4500人、誇り高く語るべき数字はもっとたくさんあるだろうけど、そのどれもがボク達が考えうる全てを凌駕する超大規模。
こんな鋼鉄で完全武装した化け物が海の上に浮かんでいたなんて想像もできない。
そんなのが、今はボクの目の前で仮想フィールドの少し上を浮遊している。
圧倒的質量と火力。その威圧感だけで思わず尻込みしてしまいそうだ。
「はは、こりゃすごいな」
そんなものを目の当たりにして、こんな乾いた感想しか出てこない自身の口にうんざりする。
こんなものが対人兵器ではあるはずない、その出力はもはや対国兵器にも匹敵する。
つまり、この空母艦だけで一国を殲滅することが可能。
「また義体換装したのか?」
個人の魔力出力だけでこんな化け物じみた聖遺物を具現化させるなど到底不可能だ。
以前とは比べ物にならないほどの魔力。
そして、前回の対戦時とは明らかに異なる人間離れした身体構造。
「今回はそれだけじゃねえぞ、前も言ったろ、オレにはスポンサーが山ほど付いてんだよ。魔力出力増強改造に、最新鋭の外装起因機関も搭載したんだ」
もはや人間を人間たらしめる定義はとっくの昔に変わっている。それに、ここはそんなことを議論する場でもない。
「今のオレはマジで国ひとつと戦争起こせるんだぜ?」
それはそうだろう。このゲームが始まって以来無敗の絶対的王者を倒せるかもしれないと期待されている彼にはスポンサーが全世界中にいる。そんな無尽蔵に湧いてくる財力をもってすれば全世界に戦争をしかけても全く無傷で勝てそうな怪物を作り出すことも可能だろう。
それを、ボクを倒すためだけに使おうだなんて。
なんて平和な世の中だ。
もはや物理的な戦争なんて時代遅れだ。
ほんのわずかな国境線の引き直しに意味はなくなった。ヴァーチャルに国境なんて関係ないからだ。
誰も戦争なんてしたがらないのは、誰も戦争に興味がなくなってしまって儲からないからだ。
ああ、なんて平和なんだろう。
そんな世界に感謝するように、ボクは両手を前にかざす。
「ファンタズム・セットアップ、」
まるで祈りのようじゃないか。幻想なんて信じていやしないのに。
ボクは静かに聖遺物具現化を実行する。
「――聖剣、エクスカリバー」
それは、一振りの剣。
誰しもが憧れた幻想の究極。
身の丈ほどの光り輝く幅広の両刃。
装飾はあまりなく、それでも金色に輝く柄の先には大きな宝石が煌めいている。
その圧倒的な神々しさはまさに、聖剣と呼ぶにふさわしい威厳を放っている。
しかし。
白きフィールドでさえ眩ませるほどの白光を放つ聖剣ですら、目の前の強大な鋼の怪物と対峙するにはあまりにも心許なく見えてしまう。
円卓の原典でさえ実現しなかった聖剣による怪物退治。
それが今まさに実現しようとしている。
それでも、あまりにも分が悪すぎる。
いくらなんでもさすがにそんなこと無理なのではないか。チャンピオンの勝利を確信していたギャラリーでさえそう思わせる絶望的な質量差。
不意に訪れる静寂。
観衆の、ギルデスタンの、そして、ボクの心臓の音だけが高まる無音の中に響き渡るよう。
誰しもがその瞬間を固唾を飲んで見つめている。
そう、そのコールの瞬間を。
そして。
『ランク1位、アーサーvsランク2位、ギルデスタン、ゲームスタート!』
高らかに宣言されるデスゲームの始まり。
互いの聖遺物が具現化された瞬間がゲーム開始の合図。
いよいよ始まるトップランカー同士の対決。
歓喜の最高潮。
揺れる仮想フィールド。
それとリンクするように。
凪いでいるはずの意思に反して昂揚する心臓。
ああ、さすがにこんな状況じゃボクだって興奮するさ。
「旧式だがコイツの活躍はもはや伝説だ、テメエだって名前くらいは知ってるだろ? いつまでもそんな手垢まみれで古ぼけた神話じゃあ勝てねえぞ!」
巨大な砲台がぬるり、獲物を見つけ鎌首をもたげるように機敏に照準を合わせる。満載されたミサイルがボクを冷たく睨み付けている。蛇に睨まれたカエルってところか。
「全弾発射!!」
鬨の声を上げるギルデスタン。呼応、枷から解放されたかのように。何の躊躇もなく全てのミサイルがボクに向かって狂う。
超至近距離、照準なんて合わせなくてももはやその威力と爆風だけで一瞬後には消し炭にされるだろう。
躱すタイミングすらない、どこにも逃げ場はない。だから言ったんだ、こんな広いフィールドは無意味だって。
真っすぐに突撃してくる明確な死の旋風。
「聖剣使い、今日こそテメエを倒してやる」
フルバースト状態のギルデスタンは動けない。いや、動く必要すらないだろう。
そこにあるだけで全てを殲滅する鋼鉄の要塞。
だけど、それでも。
「そんな幻想だけじゃボクには勝てない、少しは現実を直視した方がいいよ」
真っすぐに迫り狂うミサイルの嵐を見つめ、それでも、せっかく昂ったはずのボクの心臓はまた冷えてしまった。もう、あの熱い心音は聞こえない。
まだ足りない。
仮想現実が作り出しただけの贋作ではボクにはまだ届かない。
なぜならば、願いとは決してまやかしの幻想ではないからだ。
「聖剣、とは人々の願いの収束点だ、」
ゆっくりと聖剣を掲げる。
光り輝く剣。それはあまりにも神々しく、
「聖剣なら負けない、聖剣は強い、聖剣は壊れない、聖剣はどんな強敵にも打ち克つ、聖剣こそが正義。人々による、聖剣はこうあるべきという形になる、そういう幻想だ」
目も眩むほどの真っ白な光が剣に収束するように渦巻く。
まさに、戦場を照らす希望の光。その集束。
「約束された勝利のイメージを具現化する最強の聖遺物。それこそが聖剣、エクスカリバーだ」
威風堂々と振り下ろされた大剣は、しかし、その要塞じみた空母艦から見ればほんの些細な小枝にしか見えず。その聖剣は、弾幕の如く発射されたミサイルのその一発より小さい。
この状況を覆すには奇跡でさえ物足りない。予定調和でさえ破綻する。
誰しもがそう思っている。
聖剣使いの姿を見るのはこれが最後かもしれない、と。
そして。
護国の英雄が放つ大量破壊と、人々の希望の光が衝突する。
その衝撃はすさまじく、ありとあらゆる不測の事態を想定しているはずの仮想フィールドにすら至る所にノイズが走り、情報の過負荷によって多数のバグが生じる。
アバターであるはずの観客ですらその規格外の衝撃に、悲鳴を上げパニックを巻き起こし、一時騒然となる。
警告音、何も見えないフィールドの全容、勝敗のコールすらない。
動揺は次第に収まるが、次には騒然としたざわめき。
そんな中で。
晴れていく光と粉塵から姿を現したのは。
『聖遺物消失、ギルデスタン再起不能! 勝者、アーサー!』
ようやくされたコールに。
観客はさっきまでの不安なんて無かったかのように狂喜する。今度はこの大歓声こそがフィールドを壊してしまうのではないか、そんな気さえしてしまう。
そんなノイズもバグもまだ収まっていない仮想フィールドの片隅で。
互いの思惑と幻想が真っ向から衝突したはずの爆心地で。
ボクはただ立ち尽くす。
「こんな贋作で手にした栄光は本当に勝利といえるのか」
幾度となく聞いた大歓声の中、ボクはいつまでも虚しくそこに立っていた。
「本物の聖剣があればボクだって」
小さな呟きは誰の耳にも届くことなく、この割れんばかりの大歓声の中で簡単に掻き消された。
ーーPhantasm setupーー
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