イマジンコード・オーバー・ザ・シンギュラリティ~少年は幻想魔剣の夢を見るか~

儀仗空論・紙一重

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3.GAMESTART

新しい拠点はランカー達に馴染むか?

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「ルジネ! ランキングに載ってたわよ!」

「ランキング? ああ、アハルギに勝ったからか」

 メグリに工房の場所を教えたのは良くなかった。オレの唯一の安息の地が失くなっちまった。

 毎日のように襲来してくるメグリから逃げるために潜伏先を変えたっていうのに。

 それなのに。

「ねぇぇぇ~、図書館では静かにしてよー、っていうか変な工具持ち込まないでよー」

「先生だって役に立たない紙ベースの本集めて、それでも飽きたらずにコスプレまでして完全に私物化してるじゃないですか」

「それとこれとは別じゃない!?」

 クソ、すぐバレたじゃねぇか。灯台下暗し、って言ってたのはカグラ先生だ、やっぱり信用ならねぇ。

「っていうか、生徒会長のメグリちゃんまでサボりに来ないでよ! わたしが怒られちゃうじゃん!」

 なんか横でギャーギャー騒いでる図書館の主は無視しとく。

「ランカーを倒したんだから当然ね、とりあえず100位だって」

「別にそんなの興味ねえよ、オレはゲームがやりたかったわけじゃねえ」

 オレは世界を変えたかっただけで。

 なんか理不尽な喧嘩売られたのを買っただけで。

 とどのつまり、ただの逆張りなだけで。

 そういえば、そうは言っても確かに世界は変わった気はしたんだ。

 あの対戦の日から。

「相変わらず授業には出てないよね」

「ああ、まあ、そうだな、かったりぃし」

「だからって図書館には来ないで! 保健室行ってよー!」

 オレはとりあえず学校には通っている。

 工房を図書館に移したこともあるけど、それよりも。

 オレには心臓にぶっ刺さってる魔剣があって、もう夜な夜な裏道のジャンク屋巡りをしなくても良くなったからだ。

 昼間に部屋に引き込もってたんじゃメグリの母親にどやされるのが鬱陶しい。

「そういえばアハルギは平気だったのか? 見た目完全に死んでたぞ? 【イマジンコード】って死人が出るようなデスゲームじゃないよな」

「大丈夫じゃないかな、仮想フィールドなら安全装置も働いてるだろうし」

「ねえ、メグリちゃんまでわたしを無視しないでよぉー」

 いや、あんな真っ二つになってて大丈夫なのかなぁ。

 あんな大観衆の中での公開殺人でも逮捕されてないんだから大丈夫なのか?

 あんな負け方を公開生配信しちゃってるんだ、もう喧嘩売られることもないだろう。あとでお礼参りに学校に来てるかだけでも確認してやるか。

「普通はあそこまで損傷する前に聖遺物が強制的に解除されるはずなんだけど」

(おや、そうなのか? なら次はバレぬように気をつけようか、いひひ)

 魔剣がなんか意味不明なことを気をつけようとしてる。

 結局のところ、オレはあの対戦からこいつの正体が何かを掴むことはできなかった。

 というか、それどころじゃなかった。

 死ぬ気しかしなかった。

「たかがゲームよ? 失うものなんて何もない。無課金で遊べて、運営やスポンサーから賞金まで出るんだからお小遣い稼ぎにはもってこいじゃない」

 メグリはそう言って笑ってるけどさ。

 【イマジンコード】のプレイヤーはみんなあんな恐怖を味わっているのか。

 ……イカれてやがる。

「そうだ、ちょっと自分の財布確認してみなよ、ルジネ」

「ん?」

 カグラ先生の机の邪魔な本をどかして、「いやぁー!?」がしゃりと籠手を置きホログラムディスプレイを開いてみる。

「……な、なんだ、この金額は……」

「そ。これがゲームの賞金よ、すごいでしょ」

「しょ、賞金……」

 ごくり、思わず唾を飲み込んでしまう。

 だってそうだろ、いたって普通の男子高校生じゃ一生懸命バイトしても手に入らないようなお金を今オレなんかが手にしてるんだ。どどどど動揺しちゃうのも無理ないだろがい。

 こ、このまま勝ち進むのも、う、うん、その、まあ、あれだ、わ、悪くはないな。別に賞金に目がくらんだわけじゃないけど。

 つーか、ランカーすげえ。オレよりさらに上位のメグリやアハルギはもっと稼いでるのか。……しゅ、しゅごい。

 このゲームのために身体改造までしたがるヤツの気持ちがなんとなくわかったかもしれない。

 幻想が現実になる。

 それだけがこのゲームの魅力じゃない。

 世の中、金だ! 金こそが全てだ!

「で、次のゲームはどうするの?」

 メグリがバンッと机を叩いてすごい詰め寄ってくる。さらり、スカイブルーの髪が揺れるのを右手で耳にかける。

 オレンジと青色の魔眼の機能はオフにしてるみたいだけど、そんなにどアップで覗き込まれたらなんか色々まずいだろ!

 メグリだって別にかわいくないわけじゃない。というか、普通にモテる。

 喋らなければ、守ってあげたくなるような華奢で清楚な感じだし。

 喋らなければ、成績優秀文武両道な生徒会長だし。

 喋らなければ、ちょっとその前屈みでオレの顔を覗き込む体勢はいくらちんちくりんだっていっても制服の中が見えてしまいますし。

 そう、つまり、実はとっても残念系な美少女なわけで。

「や、やる気なんてねぇよ。ランキング入りしたのだって喧嘩売られたアハルギがただ強すぎただけだ、これからはのんびりやるよ」

 オレは無意識に視線を逸らし、身体を仰け反らせる。

 いや、つーか、これだけの賞金があればそれだけでしばらくは不自由なく遊べるし。

 それにいちいちあんな死の恐怖に苛まれるのはごめんだ。死んだってやりたくねぇ。

「あ、ほら、見て、早速対戦の申請来てるよ」「……人の話聞かねえじゃん」

「ねえ、やってみようよ!」

「メグリ、お前って実は人の話聞かない人なの?」
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