イマジンコード・オーバー・ザ・シンギュラリティ~少年は幻想魔剣の夢を見るか~

儀仗空論・紙一重

文字の大きさ
25 / 48
4.GAME 0.ver.

外殻はその兎を信用できるのか

しおりを挟む
「うわ、やっぱり目立ちすぎたか」

 案の定、というか、それはそうだよね、という感じで。

 騒ぎを聞きつけてぞろぞろと集まってくる獣人達。その凶悪な目つきと持っている銃に思わずひるんでしまう。

「ファンタズム・セットアップ、魔剣、アウラ!」ほとんど反射的に。

(えへへおほほ、ゲーム外なら殺してもいいのかや?)

「ダメに決まってんだろ、……できるだけな」

 オレが持つ魔剣やノルベルトのレーヴァテインのような完全に武器にしかならない聖遺物をゲームの外で使用することはほとんどない。そりゃそうだろ、だって、街中で武器なんて振り回してら危険この上ない。そんなやつはすぐに当局の治安維持部隊に拘束された上に、ゲームのアカウントを永久に剥奪される。

 だから、仮想フィールドでもないのに魔剣を引き抜いているのが不思議な感じがする。まるで安物の違法パッチでラリってるダセェ酔っ払いにでもなったような罪悪感。

「すまないね、こんな派手な攻撃になるとはね」

 メルベルトの攻撃は、レーヴァテインを振るうたびに全く同じ形状の剣を無数に作り出し、それを斬撃の軌跡に射出していた。さっきからむちゃくちゃド派手やな。ゲーム映えはしそうだけど、今は完全に余計だ。

 一方のオレはというと。

 もはやなりふり構わなくなったのかライオン頭の獣人が乱射する銃弾を魔剣でどろりと受け止めながら突貫。弾丸はその真っ黒な剣身がまるで沼底であるかのようにぬるりと沈んで消えていく。(不味いんじゃが!?)

「クソクソクソッ! 機械仕掛けのハリボテ共があッ!!」

 オレあるいは魔剣がそんなにも恐ろしいものにでも見えているのか、半狂乱で銃を乱射するライオン頭。……なんだ?

 構わずそいつの目の前で魔剣を地面に振り下ろすと、ぐちゃりと腐敗した肉片でも叩き付けたような不快な音を立てて魔剣の剣身が弾ける。汚らしくはね散らす血飛沫。ひとつひとつが刃となって周囲の敵を切り刻む。

 突然の範囲攻撃に咄嗟にガードできたやつもそうじゃないのも、もちろんライオン頭もまとめて白い床に沈む。

「……ルジネ君、なんか、その攻撃キモいな」

「自分でも思ってるんでそっと言うのやめてください、ナチュラルに傷つきます」

 彼らが立ち上がらないことを確認しながら、床に飛び散った魔剣をずるずると元に戻す。動きと音がいちいち不快感を催す。なんとかならんのか。(うふふ、もっと主を罵ってくりゃれ、いひひ)……キ、キモい。

「よし、増援が来る前にすぐにここから脱出しよう」

 足早にその場を離れて、オレには全くわからないけどどうやらこのモノリスからの出口があるのだろう場所までやって来たみたいだった。

 道中、何人かのテロリストと遭遇したけど、ぬるりと魔剣が触れれば全員昏倒した。

「メルベルトさんはあんまりその聖遺物使わないでください、敵に見つかります」

「うん、ルジネ君に任せたよ」

(害なす枝なんてクソじゃ! そんなもの何の役にも立たぬ!)

 もちろんオレの手の内でギャーギャー喚き散らしているアウラの声なんて聞こえているはずもないメルベルトさんは視線を上にして何かを操作しているみたいだけど。

「クソ、動かないな」

 その白い床には何も変化はなく。何も起きないことがこんなにも不安になるとは思ってもみなかった。

「仕方ない。まずは移動装置を起動しよう。おそらくあいつらが壊したかもしれない」

 さっきから何も状況が好転しない。オレは未だに銃を持ったテロリストが歩き回るここに閉じ込められっぱなしだ。うんざり吐息。

 けど、そんなことを嘆いていても仕方ない、今はメルベルトさんとここを脱出できるように動かないと。

「ところで、何でノルベルトさんみたいなランカーがここで働いてるんですか?」

「上位ランカーは当局の治安維持活動のために管理局のスカウトされることがあるんだ。あ、もちろんゲームにも参加できる」

 へえ、そうなのか、知らなかった。それじゃあ、オレが戦ってきた中にも当局の職員がいたかもしれないのか。今後気をつけないといけないな。

(主もこやつらのような機械頭になるのかや? わらわの主としてこれはちょっとわらわの趣味とは合わぬな)

「どう? 君もやってみない?」

「ちょっと考えていいですか、魔剣がわがまま言って聞かないんで」

 冗談でそうは言ってみたけど、というよりも、こんな状況で自分の将来なんて決めたくない。それに、色んなところから“借り物”をしているオレには絶対に無理だ。

「彼らの中に義装でも外装起因機関でもない身体拡張者がいた。あれはたぶん内殻のやつらだ」

 なんかしきりに機械仕掛けとか外殻ガーとか騒いでたしな。それじゃあ、あの鱗や体毛はやっぱり彼らの遺伝子由来なのか。

 内殻の倫理観はどうなってるんだ? 

 遺伝子の操作は完全に違法だ。それを行った者も、そうして作られた者も全て死罪になるほどの重罪だぞ。

 だけど、そんなのがたくさんいる。その中にはウサギ耳のほのかもいるのかもしれない。

「幸い、【イマジンコード】のシステムには侵入されていないみたいだ、内殻の原始人相手には物理でぶん殴ろう」

 爽やかに言ってるけどめっちゃ物騒だな。

 メルベルトさんの謎の血気盛んさに少し引きながら歩いていると。

「あ、そこにもいるぞ、いけるかい、ルジネ君?」

「あ、待ってください、あいつは……」

 その見覚えありまくる後ろ姿を見つけたオレは魔剣を構えて気付かれないようにゆっくりと近づくと。

「おい、ほのか! なんじゃこりゃあ!」

「うひゃあ!? ル、ルル、ルルジネ殿!?」

 そこにいたのはバニーガール姿の褐色ウサギ耳、ほのかだった。耳元で叫ぶついでに、腹いせにそのもふもふの耳をわさわさしとく。

 あまりにもびっくりしすぎたのか、飛び上がってこちらを見つめるその緋い瞳は涙目だし、大事な得物であるつらぬき丸も落っことして霧散してるし。

 つーか、あの目的地にはたどり着けないことで有名なイカロスの翼でよくここまで来れたな。

「ルジネくん、彼女と知り合いなのか?」その声に滲むは、不信。

「え、ええ、こいつはほのか、オレのチームのメンバーです」

「そうか、あのバニーガールは本当にウサギ耳だったのか」

 オレ達がほのかを見つけたとき小刀の聖遺物、つらぬき丸を逆手に持った彼女がこのテロリストを倒したのは一目瞭然だった。仲間割れか。

「おい、ほのか、こんなことして許されると思ってんのか? さすがにオレも庇いきれんぞ」

「い、いやいや、我ではない!」

「ああ? もっとうまく言い訳しろよ。お前がこいつらを手引きしたのは明らかだろうが」

「それが我にもさっぱりわからんのだ。こやつらはもしかして……」

 ほのかは考え込むようにその無駄に形の良い唇に右手を添えるが、こいつには全く似合わない。

 こいつは、なんていうか、ただの能天気で鬱陶しい、人懐っこいウサギでいいんだ。

 そう。

 テロリストとか刺客とか内殻人とかそんなのはどうでもよくて。

「というか、何をしているんだ、ルジネ殿、早くここから逃げなくては」

「ほのかちゃん、かな? 僕はノルベルト、この管理局で職員兼治安維持部隊として勤務している。この施設の扉や移動装置は全てテロリストにジャックされてしまっていてね、ここから出ようにもまずは管理中枢区画へと行ってそこを奪還しなくちゃいけないんだ」

「な、なるほどなー、大体わかった」

「……ぜってえわかってねえだろ」

「君がルジネ君の仲間だというなら信用しよう、僕達と協力してくれるかな?」

「いや、こいつ、全然信用できねえっすよ」

「ルジネ殿がそれ言っちゃったらダメでしょうが!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...