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5.EXCALIBUR
この青空は少年の心を晴らすことができるか
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今回の対戦のルールは……ああ、なんだったっけ。
どうしてかずっと頭が働かないような気がしている。いろんな(クソほど余計な)事を考えすぎている気がする。思考回路はショート寸前だ。
管理局での出来事はメグリ達には言ってない。
あれからほのかが姿を見せないことも。
オレが死から復活したことも。
しとりが言った捨て台詞の意味も。
ニュースにもなったテロ未遂事件のことも。
いつの間にか雷鎚使いのキリさんの連絡先が登録されていることも。
一気にまとめて雪崩れてきやがったその全てのごちゃごちゃに対して、オレは何一つとして納得できる結論を出せなかった。
だから、オレは何も言えなかった。オレ自身がまだ何も納得していないんだ、当たり前じゃないか。
でもさ。
いくらボーッとしてたからってさあ……
「ど、どうにかなるんか、これ!?」
(えへへ、わらわに空を飛ぶなぞという腑抜けた機能はない)
空中戦なんて聞いてない!
青空を高速で落下していく浮遊感。
無重力に無様に手足をばたつかせることしかできない不自由さ。
眼下の美しい雲間と、目も眩むほどの陽光が織りなす非現実。
空気抵抗のエフェクトまで完璧で息もできやしない!
「ねえねえー、そんな装備で大丈夫ー?」
「大丈夫なわけあるか! 問題だらけだ!」
オレの顔のすぐ前には、大きな茶色の瞳を無邪気に輝かせる少女のとびきりの笑顔。
無様に藻掻きながら落下するオレの顔を、今回の対戦相手、暴風乱覇のルールティアは上下逆さまになってまじまじと見つめてきやがる。ムカつくそれを振り払おうにも身体の自由が利かなすぎてぐるぐるするだけだった。
「この条件、オレに不利すぎないか!?」
「ええ~、そんなことないよ~、アタシがエントリーしてたのはランダムマッチングだけど、強さはランクに合わせてくれてるみたいだし?」
ふわり、ようやくオレの目の前から離れるルールティアは、オレよりもちょっと年下くらいで、実に少女らしい慎ましやかで華奢な身体に、オレンジ色の長袖のジャージと健康的な太ももが眩しいショートパンツ丈のジャージを履いていた。
そして。
そんなどこか近所に出かけるかのような気軽な服装に。
「な、なんじゃ、ありゃ……」
およそ人間が持てるはずがなさそうな重厚な武装が満載されている。
「それにさ~、」不敵に笑う逆さまの笑顔。
上下左右関係なく激しく飛び回る上に、四方八方から風を受ける少女のラフで緩めな服装は、なんか全体的にひらひらしていて……色々と実に危うい。
「この対戦を受けてくれたのはアナタの方じゃないの~?」
そして、今度は触れてしまいそうなほどにすぐ目の前で、捲れ上がったジャージから形のいいおへそを無自覚に見せつけながら、がぎりと重苦しくその武装をオレに突き付ける。
完全にオレの確認不足だ。だが、そんなのは決して認めない! 悪いのはオレじゃない!(完全に主が悪いと思うがな)
クソ、ちゃんとフィールドの設定を確認しておけばよかった。
籠手に込めたささやかな魔力じゃあ一瞬すら飛ぶこともできないし、そもそも呼吸すらままならんのだが!
「つーか、そんな色々聖遺物使いやがって卑怯だぞ!」
目の前のルールティアの腰を掴んでやろうと一生懸命手を伸ばしたけど「あ、おさわりは禁止です」結構なマジのトーンでそう言われながら、すいーっと距離を取られた。いや、そんなんじゃないんです、ただ目の前の健康的なおなかがちょっとエロかっただけなんです!
そう、この無自覚無警戒の無防備少女、ルールティアは、しかしながら。
燃え盛る両足の飛行ユニットや右手のプラズマランス、両腕にはめられた巨大な枷のような可変式打撃武装、それに、背中には魔弾射出砲塔まで装備している。
服装とはうらはらな、完全重武装。
いや、どういうことだ? 聖遺物の幻想具現化は同時にはできないはずじゃないのか? ひとつひとつの武装から溢れ出す凄まじい魔力出力はどう見ても聖遺物だぞ?
「って言われてもさー、アタシの聖遺物は、宝貝、蓮華霊珠子なんだよねー」
ばさばさと鬱陶しく吹きすさぶ風の中で、なんとなくルールティアの言葉だけは聞き取れた。きっとキーキー騒がしいからだろうな。
秘密にしていればそれだけでアドバンテージが取れると思うけど、どいつもこいつもあっさりと自分の得物の正体を開示してしまうあたり、みんな揃いも揃ってバ……エンターテイナーなんだな。
そして。
こいつはオレの無様な姿を見て楽しんでやがる。
ついさっき砲塔を突き付けておいて無抵抗のオレにとどめを刺さなかったのはきっとそのためだ。性格悪すぎるだろ。(あはは、主の言う通りじゃ!)「いや、お前にだけは言われたくねえだろうよ」
「アタシはこの聖遺物を身体に埋め込んで魔力炉とする改造してるんだ~、」
すると、ルールティアはおもむろに。
「ほれ」
「なッ!?」
ルールティアはジャージのジッパーを惜しげも恥じらいもなく下げる(いや、今は逆さまになってるから上げているのか?)。どこからともなく観客の野太い歓声が聞こえてきそうな気がする。「ちょ、お前ッ!?」思わず目を塞いだオレだけが恥じらっている。
最近の女子はどうしてこうも露出癖がだだ漏れなのか! けしからんすぎる! (いいぞ、もっとやれ!)……アウラは黙っとれ。
それでも、性癖の乱れについて義憤に駆られながらも(男子としてはどうしても抗えない何かには勝てず)そっと指の間からルールティアを見てみると。
そのささやかな胸の真ん中、露わになるちょっとだけ大人っぽいスポーツブラの間には、陰陽の模様が刻まれた大きな宝玉が埋め込まれていた。
「だからさ、この聖遺物をコアに持つ哪吒という英雄の因子を扱えるのは当然っしょ?」
それが本当なら、こいつは哪吒という英雄が稼働を開始した時に所持していた聖遺物を同時に扱える。おっと、それに加えて哪吒のコアである魔力炉心、蓮華霊珠子もか。
その武装とその無尽蔵の魔法出力は哪吒に起因するものか。英雄自体が聖遺物で出来ているからこそ成せる裏技。
幻想を自身のコアユニットにするなんて。
ランカーにはバケモンしかいねえのか。
あとさ……
「早くそのジッパー上げてもらってもいいかな!?」
どうしてかずっと頭が働かないような気がしている。いろんな(クソほど余計な)事を考えすぎている気がする。思考回路はショート寸前だ。
管理局での出来事はメグリ達には言ってない。
あれからほのかが姿を見せないことも。
オレが死から復活したことも。
しとりが言った捨て台詞の意味も。
ニュースにもなったテロ未遂事件のことも。
いつの間にか雷鎚使いのキリさんの連絡先が登録されていることも。
一気にまとめて雪崩れてきやがったその全てのごちゃごちゃに対して、オレは何一つとして納得できる結論を出せなかった。
だから、オレは何も言えなかった。オレ自身がまだ何も納得していないんだ、当たり前じゃないか。
でもさ。
いくらボーッとしてたからってさあ……
「ど、どうにかなるんか、これ!?」
(えへへ、わらわに空を飛ぶなぞという腑抜けた機能はない)
空中戦なんて聞いてない!
青空を高速で落下していく浮遊感。
無重力に無様に手足をばたつかせることしかできない不自由さ。
眼下の美しい雲間と、目も眩むほどの陽光が織りなす非現実。
空気抵抗のエフェクトまで完璧で息もできやしない!
「ねえねえー、そんな装備で大丈夫ー?」
「大丈夫なわけあるか! 問題だらけだ!」
オレの顔のすぐ前には、大きな茶色の瞳を無邪気に輝かせる少女のとびきりの笑顔。
無様に藻掻きながら落下するオレの顔を、今回の対戦相手、暴風乱覇のルールティアは上下逆さまになってまじまじと見つめてきやがる。ムカつくそれを振り払おうにも身体の自由が利かなすぎてぐるぐるするだけだった。
「この条件、オレに不利すぎないか!?」
「ええ~、そんなことないよ~、アタシがエントリーしてたのはランダムマッチングだけど、強さはランクに合わせてくれてるみたいだし?」
ふわり、ようやくオレの目の前から離れるルールティアは、オレよりもちょっと年下くらいで、実に少女らしい慎ましやかで華奢な身体に、オレンジ色の長袖のジャージと健康的な太ももが眩しいショートパンツ丈のジャージを履いていた。
そして。
そんなどこか近所に出かけるかのような気軽な服装に。
「な、なんじゃ、ありゃ……」
およそ人間が持てるはずがなさそうな重厚な武装が満載されている。
「それにさ~、」不敵に笑う逆さまの笑顔。
上下左右関係なく激しく飛び回る上に、四方八方から風を受ける少女のラフで緩めな服装は、なんか全体的にひらひらしていて……色々と実に危うい。
「この対戦を受けてくれたのはアナタの方じゃないの~?」
そして、今度は触れてしまいそうなほどにすぐ目の前で、捲れ上がったジャージから形のいいおへそを無自覚に見せつけながら、がぎりと重苦しくその武装をオレに突き付ける。
完全にオレの確認不足だ。だが、そんなのは決して認めない! 悪いのはオレじゃない!(完全に主が悪いと思うがな)
クソ、ちゃんとフィールドの設定を確認しておけばよかった。
籠手に込めたささやかな魔力じゃあ一瞬すら飛ぶこともできないし、そもそも呼吸すらままならんのだが!
「つーか、そんな色々聖遺物使いやがって卑怯だぞ!」
目の前のルールティアの腰を掴んでやろうと一生懸命手を伸ばしたけど「あ、おさわりは禁止です」結構なマジのトーンでそう言われながら、すいーっと距離を取られた。いや、そんなんじゃないんです、ただ目の前の健康的なおなかがちょっとエロかっただけなんです!
そう、この無自覚無警戒の無防備少女、ルールティアは、しかしながら。
燃え盛る両足の飛行ユニットや右手のプラズマランス、両腕にはめられた巨大な枷のような可変式打撃武装、それに、背中には魔弾射出砲塔まで装備している。
服装とはうらはらな、完全重武装。
いや、どういうことだ? 聖遺物の幻想具現化は同時にはできないはずじゃないのか? ひとつひとつの武装から溢れ出す凄まじい魔力出力はどう見ても聖遺物だぞ?
「って言われてもさー、アタシの聖遺物は、宝貝、蓮華霊珠子なんだよねー」
ばさばさと鬱陶しく吹きすさぶ風の中で、なんとなくルールティアの言葉だけは聞き取れた。きっとキーキー騒がしいからだろうな。
秘密にしていればそれだけでアドバンテージが取れると思うけど、どいつもこいつもあっさりと自分の得物の正体を開示してしまうあたり、みんな揃いも揃ってバ……エンターテイナーなんだな。
そして。
こいつはオレの無様な姿を見て楽しんでやがる。
ついさっき砲塔を突き付けておいて無抵抗のオレにとどめを刺さなかったのはきっとそのためだ。性格悪すぎるだろ。(あはは、主の言う通りじゃ!)「いや、お前にだけは言われたくねえだろうよ」
「アタシはこの聖遺物を身体に埋め込んで魔力炉とする改造してるんだ~、」
すると、ルールティアはおもむろに。
「ほれ」
「なッ!?」
ルールティアはジャージのジッパーを惜しげも恥じらいもなく下げる(いや、今は逆さまになってるから上げているのか?)。どこからともなく観客の野太い歓声が聞こえてきそうな気がする。「ちょ、お前ッ!?」思わず目を塞いだオレだけが恥じらっている。
最近の女子はどうしてこうも露出癖がだだ漏れなのか! けしからんすぎる! (いいぞ、もっとやれ!)……アウラは黙っとれ。
それでも、性癖の乱れについて義憤に駆られながらも(男子としてはどうしても抗えない何かには勝てず)そっと指の間からルールティアを見てみると。
そのささやかな胸の真ん中、露わになるちょっとだけ大人っぽいスポーツブラの間には、陰陽の模様が刻まれた大きな宝玉が埋め込まれていた。
「だからさ、この聖遺物をコアに持つ哪吒という英雄の因子を扱えるのは当然っしょ?」
それが本当なら、こいつは哪吒という英雄が稼働を開始した時に所持していた聖遺物を同時に扱える。おっと、それに加えて哪吒のコアである魔力炉心、蓮華霊珠子もか。
その武装とその無尽蔵の魔法出力は哪吒に起因するものか。英雄自体が聖遺物で出来ているからこそ成せる裏技。
幻想を自身のコアユニットにするなんて。
ランカーにはバケモンしかいねえのか。
あとさ……
「早くそのジッパー上げてもらってもいいかな!?」
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