イマジンコード・オーバー・ザ・シンギュラリティ~少年は幻想魔剣の夢を見るか~

儀仗空論・紙一重

文字の大きさ
33 / 48
5.EXCALIBUR

この空の青さは幻想世界でも有効なのか

しおりを挟む
「おっとっと」

 ルールティアが無駄にゆっくりとコアユニットをまたジャージの下に収める。おい、その人を小馬鹿にしたようなニヤニヤ笑いを今すぐやめろ。

「ま、アタシ的にはギャラリーも盛り上がるし、あのままでもよかったんだけどねえ~?」

 と、とにかくだ、これで対戦相手を直視できない、とかいう圧倒的不利な状況からはなんとかなりそうだ。(うぶな童貞とはメンドクサい生物よな)「だまらっしゃい」

 だけど。

 結局、オレが空を落ち続けている、という状況は依然として変わっていない。

 姿勢すら上手く制御できず、相変わらず息苦しいままだ。

 とてもじゃないけど勝負どころの話じゃない、それ以前の問題だ。

 それでも。

 なぜか、オレには降参するという考えはひとつも思い浮かばなかった。

 世界を変える。

 オレはそのために【イマジンコード】をプレイしている。

 ここで引き下がるなら、オレの世界はこのままだ。なんとなくそんな気がするんだ。

「っていうかー、ルジネってさー、パッと見さ、身体改造してないじゃん。マジ? もしかして、身体拡張精神不適合症候群?」

 燃え上がる飛行ユニット、風火輪と、その手に持つ長大なプラズマランス、火尖槍の熱気を感じる。墜落しながらもなおその温度を、その熱風を感じるのだからそれらの聖遺物が凄まじい出力なのは確かだ。

「……んなはずねえだろ」

「それじゃあ、なんで身体改造しないのー?」

 ルールティアがつんッと、……こ、恋人みたいに(斯様なわけがあるかや)オレのほっぺをつつくと、ようやく姿勢制御のコツも掴みかけてきて、せっかく落ち着いて(落下して)いたオレの身体はまたぐるぐる回転して彼女の元から無様に離れていく。

 ルールティアの外見には特に変わったところはない。しいて言えば、関節の駆動部が少し機械化しているくらいか。それでも、ここまで未機械化をボロクソに言うからにはどこかしらの身体改造はしているんだろう。というか、していないオレの方がおかしいんだが。

 まあ、最近少し話題にはなっていた。

 あの内殻のイカれた宗教団体によるテロ事件は、ほんの一瞬だけホログラムを通過した。もちろん管理局の情報統制によって、あの世界を壊してしまうかもしれなかった事件は他愛もない爆発事故に成り下がってはいたけど。

 だけど、そのたった一瞬で。

 ありとあらゆる情報が世界を駆け巡った。

 アンダーグラウンドなネットワークによって、あの時一体何が起きたのか、みんながうっすらわかってしまった。

 そう。

「内殻の野蛮な原始人じゃないんだからさー、肉体に意味を見出すとか超ダサいじゃん」

 あれは事故なんかじゃなくて、内殻からの侵入者が起こしたテロ事件だったのだ、と。

 今まで地面の下に何がいるか、なんて全くもって気にしていなかったオレ達外殻の住人が。

ほんの少しだけ内殻には何があるのか関心を持った。

 もちろん、内殻について誰がどう思おうがそんなのはそいつ次第だ。

 ルールティアに悪意なんてない、あ、いや、言葉にはあったかもしれないけど、こいつは特に何も考えていないだろう。

 だから、そんな言葉なんて気にしなくても良かったんだ。どうせ、オレは内殻のことなんて良く知らない。外からギャーギャー騒いでいるその中にいるようなただの部外者でしかないんだ。

 だけどさ。

 なんとなく、カチンときてしまった。

 きっと、オレは自分の仲間をバカにされた気がしてしまった。

 まだ、ほのかを仲間だと思っている。そのことをまだモヤモヤ考えている。

 そんな、煮え切らない、何一つとして吹っ切れていないオレ自身のことを。

 そう、オレが。

「お前なんかがそんな簡単に内殻を騙るんじゃねえ! オレは最近ちょっと色々あって内殻の話題にはナイーブになってんだぞ!」

「知らんけど!?」

 ああ、クソ、せっかく気持ちよくスカイダイビングかましてたっていうのに。

 何なんだ、このクソッタレな気分は。世界が変わるとかほざいてたやつを飛行装置無しでこの仮想フィールドに放り投げてやりたい。

 オレはどう足掻いたって世界を変えられてねえんだぞ!

 ああ、そうだな、そうだよ。

 今はごちゃごちゃ考えてる場合じゃねえ。

 目の前の物事に集中しろ。

 相手は完全武装の人型汎用兵器だ、一瞬でも見失えばあっという間に穴だらけで墜落だ。ただのしょーもない撃墜数にカウントされるのだけはごめんだ。

 けどさ。

 ただ墜落しているだけのオレに何ができる?

 この心臓にぶっ刺さった魔剣に何ができる?

 いや、そんなのは初めからわかってんだ。

 ああ、そうだよな、オレらができることなんてたったひとつじゃねえか。

(いひひ、主は死を超越したのじゃ。ならば、その力はさらに強まっていようぞ)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...