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7.REALEFFECT
王の凱旋に世界は震撼するか
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『ゲ、ゲームスタート!』
誰も聖遺物を具現化させず、なんとも盛り上がらないままゲームは始まる。観客すら声を上がるタイミングを見失っている。
だが、オレ達もアーサーも動かない。まだ、話は終わっていない。
「アーサー、俺らが勝利したときの報酬はもう提示されてるはずだ」
「政治犯メグリとその家族の無罪と、それにこの聖剣の譲渡か」
「メグリはそんなんじゃねえ!」
伝達魔法を介さないオレの声だけがフィールドに響き渡る。何のことかわからない観客達は、オレに対して不信感を露わにするチャットを表示させる。それが観客席のほとんど全面を覆っていた。アウェーすぎる。
「お、落ち着けって、ルジネ」
政治犯だと? メグリはそんな大層なもんなんかじゃねえ。ただのちっさい生徒会長でオレの幼なじみだ。
「しかし、キミの企業グループも良くそんな突拍子もないことを提示できたな」
「それでもよ、アンタらはこの条件を飲まなきゃいけない」
アハルギはにやりと不敵に笑む。アハルギサイドもオレの知らないところで色々やってたんだな。高度な政治戦はオレらにはさっぱりで、またしても何も知らないほのかもキョトンと首を傾げている。
「確かに、ボクも管理局と繋がっていることはできれば表沙汰にはしたくないし、」
小さく吐息。このやり取りは非公開の伝達魔法で行われていて、開戦を今か今かと待ち望む大歓声には完全に秘匿されている。
「ボクのスポンサーが認めたなら仕方ない、」
ふっと口元が緩んだのは、おそらく苦笑、あるいは嘲笑。どっちにしろ、完全にオレらを、いや、もはやこの世界そのものを嘲笑っていたのかもしれない。それでも、その表情はすぐにまたいつもの怜悧たるものに戻った。
「ま、ボクに勝てたらの話だけどね」
そう。
結局のところ、オレ達にはアーサーに勝つ以外の方法がない。
無謀とも思える作戦。もはや、聖杯を手に入れるような蛮行に等しいのではないだろうか。
しかし、絶対に負けられない戦いがここにあるオレ達に対して。
「ボクにはもうこんなくだらないゲームをする意味もヒマもないっていうのに」
アーサーはもうすでにこのゲームへの熱意はなくなっている。彼の目的はもう果たされているのだ。コイツにはこのゲームで得るものが何もない。
「こんな物、ただのレプリカ以下のオモチャだ、ボクが欲したのは本物の聖剣だ」
手の内でクルクルと無造作に弄ばれる聖剣、いや、その聖遺物。何を言ってるかわからねえが、アーサーがオモチャだと唾棄したそれは、あの夜、本物の魔剣を持つはずのオレを簡単に圧倒したものだ。
「かの有名なアーサー王の伝説の象徴である聖剣はその記憶媒体だ」
アーサーの手の中から霧散する聖剣。アーサーはその様をまるで感慨なく無機質に見つめている。
「もう、こんなオモチャは不要だ」
かちゃり、アーサーは腰の聖剣に手を掛ける。
「おいおいおい、お前は何を言っちゃってんの? 本物の聖遺物なんてゲームで使ったらルール違反だぜ?」
オレが通達されたBANの理由を今度はアーサーに突き付ける。そう、オレ達はこのゲームで戦わなきゃいけねえんだ。本物のファンタジーなんかに付き合ってられるか。
しかし。
オレの言葉なんて完全に無視して。
引き抜かれる、その剣は。
「これこそが真の聖剣、世界にたった一つの真なる聖遺物だ」
何千年の時を経てなお、その剣にはほんのわずかな錆はおろか一切の刃こぼれすらもなかった。
見た者全ての目を眩ませんと光り輝く剣のなんと見事なことか。
全人類は幻想が現実になる瞬間を見た。
それは人類の夢が叶った瞬間なのではないだろうか。
伝説の王の帰還。
それが今目の前にいる。
本物の英雄と本物の聖剣。
「今までのボクはただのクローンだった。でも今は違う」
この神々しいまでの聖剣を祈りのように掲げてなお、その表情は依然として冷ややかだった。
そう、アーサーの伝説は今まさに始まったばかりなのだ。これはただの序章にすぎない。
「このゲームごと人々が抱く幻想を打ち砕こう。そうすることで、ボクの新たなる伝説が始まるのだ。今日、その瞬間を人々は見るだろう」
しまった、ゲーム内なら本物を使わないと思っていた。こいつにだって勝者の矜持があるはずだと。
甘く見ていた。
こいつは、このゲームのことをなんとも思っていなかった。ただの児戯だと吐き捨てた。
いきなり本物の聖剣を引き抜きやがった。
「――見よ、これこそが真の聖剣、エクスカリバーだ」
観客がどよめく。今起きていることが何か理解できていない。今アーサーが持っている物が何かわかっていない。聖遺物? 本物? 本物だとしたらそれはルール違反ではないのか?
いや、そもそも本物の聖剣なんてありえるのか、と。
混乱する観客の動揺がフィールドを包む。なにやら良くない流れな気がする。なぜかオレにばかりアンチチャットが投げ付けられる。
だけど。
誰も聖遺物を具現化させず、なんとも盛り上がらないままゲームは始まる。観客すら声を上がるタイミングを見失っている。
だが、オレ達もアーサーも動かない。まだ、話は終わっていない。
「アーサー、俺らが勝利したときの報酬はもう提示されてるはずだ」
「政治犯メグリとその家族の無罪と、それにこの聖剣の譲渡か」
「メグリはそんなんじゃねえ!」
伝達魔法を介さないオレの声だけがフィールドに響き渡る。何のことかわからない観客達は、オレに対して不信感を露わにするチャットを表示させる。それが観客席のほとんど全面を覆っていた。アウェーすぎる。
「お、落ち着けって、ルジネ」
政治犯だと? メグリはそんな大層なもんなんかじゃねえ。ただのちっさい生徒会長でオレの幼なじみだ。
「しかし、キミの企業グループも良くそんな突拍子もないことを提示できたな」
「それでもよ、アンタらはこの条件を飲まなきゃいけない」
アハルギはにやりと不敵に笑む。アハルギサイドもオレの知らないところで色々やってたんだな。高度な政治戦はオレらにはさっぱりで、またしても何も知らないほのかもキョトンと首を傾げている。
「確かに、ボクも管理局と繋がっていることはできれば表沙汰にはしたくないし、」
小さく吐息。このやり取りは非公開の伝達魔法で行われていて、開戦を今か今かと待ち望む大歓声には完全に秘匿されている。
「ボクのスポンサーが認めたなら仕方ない、」
ふっと口元が緩んだのは、おそらく苦笑、あるいは嘲笑。どっちにしろ、完全にオレらを、いや、もはやこの世界そのものを嘲笑っていたのかもしれない。それでも、その表情はすぐにまたいつもの怜悧たるものに戻った。
「ま、ボクに勝てたらの話だけどね」
そう。
結局のところ、オレ達にはアーサーに勝つ以外の方法がない。
無謀とも思える作戦。もはや、聖杯を手に入れるような蛮行に等しいのではないだろうか。
しかし、絶対に負けられない戦いがここにあるオレ達に対して。
「ボクにはもうこんなくだらないゲームをする意味もヒマもないっていうのに」
アーサーはもうすでにこのゲームへの熱意はなくなっている。彼の目的はもう果たされているのだ。コイツにはこのゲームで得るものが何もない。
「こんな物、ただのレプリカ以下のオモチャだ、ボクが欲したのは本物の聖剣だ」
手の内でクルクルと無造作に弄ばれる聖剣、いや、その聖遺物。何を言ってるかわからねえが、アーサーがオモチャだと唾棄したそれは、あの夜、本物の魔剣を持つはずのオレを簡単に圧倒したものだ。
「かの有名なアーサー王の伝説の象徴である聖剣はその記憶媒体だ」
アーサーの手の中から霧散する聖剣。アーサーはその様をまるで感慨なく無機質に見つめている。
「もう、こんなオモチャは不要だ」
かちゃり、アーサーは腰の聖剣に手を掛ける。
「おいおいおい、お前は何を言っちゃってんの? 本物の聖遺物なんてゲームで使ったらルール違反だぜ?」
オレが通達されたBANの理由を今度はアーサーに突き付ける。そう、オレ達はこのゲームで戦わなきゃいけねえんだ。本物のファンタジーなんかに付き合ってられるか。
しかし。
オレの言葉なんて完全に無視して。
引き抜かれる、その剣は。
「これこそが真の聖剣、世界にたった一つの真なる聖遺物だ」
何千年の時を経てなお、その剣にはほんのわずかな錆はおろか一切の刃こぼれすらもなかった。
見た者全ての目を眩ませんと光り輝く剣のなんと見事なことか。
全人類は幻想が現実になる瞬間を見た。
それは人類の夢が叶った瞬間なのではないだろうか。
伝説の王の帰還。
それが今目の前にいる。
本物の英雄と本物の聖剣。
「今までのボクはただのクローンだった。でも今は違う」
この神々しいまでの聖剣を祈りのように掲げてなお、その表情は依然として冷ややかだった。
そう、アーサーの伝説は今まさに始まったばかりなのだ。これはただの序章にすぎない。
「このゲームごと人々が抱く幻想を打ち砕こう。そうすることで、ボクの新たなる伝説が始まるのだ。今日、その瞬間を人々は見るだろう」
しまった、ゲーム内なら本物を使わないと思っていた。こいつにだって勝者の矜持があるはずだと。
甘く見ていた。
こいつは、このゲームのことをなんとも思っていなかった。ただの児戯だと吐き捨てた。
いきなり本物の聖剣を引き抜きやがった。
「――見よ、これこそが真の聖剣、エクスカリバーだ」
観客がどよめく。今起きていることが何か理解できていない。今アーサーが持っている物が何かわかっていない。聖遺物? 本物? 本物だとしたらそれはルール違反ではないのか?
いや、そもそも本物の聖剣なんてありえるのか、と。
混乱する観客の動揺がフィールドを包む。なにやら良くない流れな気がする。なぜかオレにばかりアンチチャットが投げ付けられる。
だけど。
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