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【Over the SINGULARITY】
世界はそれを
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世界はそんなに簡単には変わらない。
相変わらず喉元と眉間と心臓にクソッタレな現実を突き付けてくるし、オレはまだ【イマジンコード】の仮想フィールドに立っている。
それでも、幻想は現実を越える、そう信じている。
それでもまあ、ちょっと借りていたジャンクパーツは全部返したし、昼夜逆転もなくなったし、あのはちゃめちゃなチームはまだ解散しちゃいねえし、図書室は相変わらずコスプレ衣裳部屋だ。
カグヤ先生は図書室の再建を諦めて、大量の本を四次元空間の聖遺物に納めることにしたらしい。まあ、本には本の良さがあるってことか。あとでなんか借りてみるか。
アハルギはランカーに返り咲いた。相性差なんてモノともしねえゴリ押しで今やトップランカーの仲間入りだ。もう、ゲーム以外でアハルギに喧嘩を吹っかけてくる愚か者はいない。最近、大艦隊の二つ名を持つランカーを真っ向勝負で打ち破ったらしい。それ、もう人間越えてない? また再定義しちゃうよぉ~。
「やっぱり俺はこっちのほうがいいわ」
めでたく(?)義体もいつもの大男に戻っていた。あのナイスバディも、な、名残惜しくも……あるけど、まあ、見知った顔の男友達の方がつるんでいて気が楽だ。そう、あくまで、男友達、だ。それ以上でもそれ以下でもない。謎の進展を期待するメグリ達には悪いが、決してそうはならない。
あの対戦配信で学園でも電脳体だってことがカミングアウトされたわけだけど、どういうわけか不良の首領みたいだったアハルギの株が男女共に急上昇していた。本人も戸惑っていた。
一説には(メグリ談なので要検証の必要あり)、男子はそのナイスバディと荒々しさのギャップにやられ、女子はオレやほのかを気遣うギャップにやられたのだとか。最強か?
ほのかは内殻と外殻を繋ぐための架け橋として諜報活動に忙しいらしく、空に浮かぶホログラムスクリーンには、またとんでもないこっ恥ずかしい衣装に身を包んだ(さらけ出した?)ウサ耳の褐色少女が、他のケモ耳アイドル達と元気に歌い踊っていた。それでいいのか、ほのか。
「これも世を忍ぶ仮の姿、我の本当の正体を知る者は誰もいないのだ」
そう、もうみんながほのかのことを知っているのだ。ほのかはマジで世界的なインフルエンサーになっちまって、コイツがゲームで着たコスチュームは瞬く間に巷で流行してしまう。その歯に衣着せぬ頓珍漢で尊大な発言もなぜかバズってしまうみたいだった。
もちろん、この少し過激でセンシティブでかわいいほのかが男性諸君のハートを鷲掴みにしてしまったのも想像に難くない。黙ってりゃ確かに美少女ではあるからな。
内殻と外殻、お互いに分かり合える日ももしかしたら案外近いのかもしれない。
そうしたら、あのわからず屋のしとりもほのかを褒めてくれるのだろうか。ま、それは親子の問題だ、オレが口出しすることじゃないな。
そして、かのアーサーはというと、あの後、案外素直に負けを認めてメグリとその家族を解放し、自身の所有物であるはずの聖剣もすんなりと内殻へと引き渡した。
「実際、聖剣なんかなくたってボクはボクだからね」
ゲームを引退する際には世界中が混乱に陥ったのはもしかしたらアーサーの策謀なのかもしれないと勘ぐってしまった。そんなことは考えていなかったみたいだけど。
「この世界に興味が湧いてきたよ」
どうやら、この世界を支配する前にあちこち見て回りたくなったようで、伝説の王、アーサーとしてではなく、ただのアーサーとして世界中を旅することにしたらしい。そんなことしなくても今の世界じゃ一瞬で色んなところに行けるのに。
「旅というのは、ただ目的地に行くだけじゃない。歩いて目指すからこその道すがらの出会いと別れ、それもまた旅の目的なのさ。これは古きものからのアドバイスとしてキミに伝えておこうかな」
ふっと微笑んだその柔らかな表情こそが、コイツの本質だったような気がしたけどまあ、どっちんしろいけ好かねえキザ野郎だってことには変わりねえ。次に会っても容赦しねえからな。
『――さあ、今回のチャレンジャーは!』
そこには。
不気味な魔剣を使うランカー1位の男。不気味な姿の彼に人気はあまりない。スポンサーすら付かないのはなんか納得いかない。このゲーム、儲かるんじゃないの?
白ける観客とブーイングやアンチチャットを飛ばす観客、それと少数の擁護派が入り乱れる場外乱闘も、もはやいつもの光景になってしまった。
【イマジンコード】の人気を一人で担っていたと言っても過言ではなかったアーサーが引退しても、このゲームはまだしぶとく存続していて、その生活への浸透はもはやインフラと言っても良かった。
「なんでまだオレの心臓に刺さっているんだよ、契約は破棄しただろうが」
(あら、わらわ達のあの甘い一夜が契約だなんて悲しいこと言うわね)
「んなことしてねえよ」
今、オレの心臓に刺さっているのは、ただの幻想だ、ただのエフェクトだ。魔法なんてあり得ない。魔剣なんて信じられるか。だから、オレが今手にしているのは、あの日、オレが確かに目にした魔剣の幻想だ。
「……え、そ、そうだよな? アウラ?」
(うふふ、さあ、どうじゃろうなあ)
まあ、どっちにしろ、だ。
たかがゲームだ、それに命を懸ける筋合いはねえさ。心臓に剣を突き刺すなんてイカれたことしなくたって。
そう、こんな世界じゃ。
『不思議の国、メグリ!』
そこにはいつもと変わらない幼なじみの姿。もう、茨にも玉座にも囚われていない。彼女はもう自由だった。オレが解き放った、そういうことでいいんじゃねえの?
「それじゃあ、いい勝負にしましょ、主人公くん」
「オーケー、このクソッタレな世界は楽しんだもん勝ちだ、受けて立つぜ、最強の幼なじみ!」
ーーImaginecode over the singularityーー
相変わらず喉元と眉間と心臓にクソッタレな現実を突き付けてくるし、オレはまだ【イマジンコード】の仮想フィールドに立っている。
それでも、幻想は現実を越える、そう信じている。
それでもまあ、ちょっと借りていたジャンクパーツは全部返したし、昼夜逆転もなくなったし、あのはちゃめちゃなチームはまだ解散しちゃいねえし、図書室は相変わらずコスプレ衣裳部屋だ。
カグヤ先生は図書室の再建を諦めて、大量の本を四次元空間の聖遺物に納めることにしたらしい。まあ、本には本の良さがあるってことか。あとでなんか借りてみるか。
アハルギはランカーに返り咲いた。相性差なんてモノともしねえゴリ押しで今やトップランカーの仲間入りだ。もう、ゲーム以外でアハルギに喧嘩を吹っかけてくる愚か者はいない。最近、大艦隊の二つ名を持つランカーを真っ向勝負で打ち破ったらしい。それ、もう人間越えてない? また再定義しちゃうよぉ~。
「やっぱり俺はこっちのほうがいいわ」
めでたく(?)義体もいつもの大男に戻っていた。あのナイスバディも、な、名残惜しくも……あるけど、まあ、見知った顔の男友達の方がつるんでいて気が楽だ。そう、あくまで、男友達、だ。それ以上でもそれ以下でもない。謎の進展を期待するメグリ達には悪いが、決してそうはならない。
あの対戦配信で学園でも電脳体だってことがカミングアウトされたわけだけど、どういうわけか不良の首領みたいだったアハルギの株が男女共に急上昇していた。本人も戸惑っていた。
一説には(メグリ談なので要検証の必要あり)、男子はそのナイスバディと荒々しさのギャップにやられ、女子はオレやほのかを気遣うギャップにやられたのだとか。最強か?
ほのかは内殻と外殻を繋ぐための架け橋として諜報活動に忙しいらしく、空に浮かぶホログラムスクリーンには、またとんでもないこっ恥ずかしい衣装に身を包んだ(さらけ出した?)ウサ耳の褐色少女が、他のケモ耳アイドル達と元気に歌い踊っていた。それでいいのか、ほのか。
「これも世を忍ぶ仮の姿、我の本当の正体を知る者は誰もいないのだ」
そう、もうみんながほのかのことを知っているのだ。ほのかはマジで世界的なインフルエンサーになっちまって、コイツがゲームで着たコスチュームは瞬く間に巷で流行してしまう。その歯に衣着せぬ頓珍漢で尊大な発言もなぜかバズってしまうみたいだった。
もちろん、この少し過激でセンシティブでかわいいほのかが男性諸君のハートを鷲掴みにしてしまったのも想像に難くない。黙ってりゃ確かに美少女ではあるからな。
内殻と外殻、お互いに分かり合える日ももしかしたら案外近いのかもしれない。
そうしたら、あのわからず屋のしとりもほのかを褒めてくれるのだろうか。ま、それは親子の問題だ、オレが口出しすることじゃないな。
そして、かのアーサーはというと、あの後、案外素直に負けを認めてメグリとその家族を解放し、自身の所有物であるはずの聖剣もすんなりと内殻へと引き渡した。
「実際、聖剣なんかなくたってボクはボクだからね」
ゲームを引退する際には世界中が混乱に陥ったのはもしかしたらアーサーの策謀なのかもしれないと勘ぐってしまった。そんなことは考えていなかったみたいだけど。
「この世界に興味が湧いてきたよ」
どうやら、この世界を支配する前にあちこち見て回りたくなったようで、伝説の王、アーサーとしてではなく、ただのアーサーとして世界中を旅することにしたらしい。そんなことしなくても今の世界じゃ一瞬で色んなところに行けるのに。
「旅というのは、ただ目的地に行くだけじゃない。歩いて目指すからこその道すがらの出会いと別れ、それもまた旅の目的なのさ。これは古きものからのアドバイスとしてキミに伝えておこうかな」
ふっと微笑んだその柔らかな表情こそが、コイツの本質だったような気がしたけどまあ、どっちんしろいけ好かねえキザ野郎だってことには変わりねえ。次に会っても容赦しねえからな。
『――さあ、今回のチャレンジャーは!』
そこには。
不気味な魔剣を使うランカー1位の男。不気味な姿の彼に人気はあまりない。スポンサーすら付かないのはなんか納得いかない。このゲーム、儲かるんじゃないの?
白ける観客とブーイングやアンチチャットを飛ばす観客、それと少数の擁護派が入り乱れる場外乱闘も、もはやいつもの光景になってしまった。
【イマジンコード】の人気を一人で担っていたと言っても過言ではなかったアーサーが引退しても、このゲームはまだしぶとく存続していて、その生活への浸透はもはやインフラと言っても良かった。
「なんでまだオレの心臓に刺さっているんだよ、契約は破棄しただろうが」
(あら、わらわ達のあの甘い一夜が契約だなんて悲しいこと言うわね)
「んなことしてねえよ」
今、オレの心臓に刺さっているのは、ただの幻想だ、ただのエフェクトだ。魔法なんてあり得ない。魔剣なんて信じられるか。だから、オレが今手にしているのは、あの日、オレが確かに目にした魔剣の幻想だ。
「……え、そ、そうだよな? アウラ?」
(うふふ、さあ、どうじゃろうなあ)
まあ、どっちにしろ、だ。
たかがゲームだ、それに命を懸ける筋合いはねえさ。心臓に剣を突き刺すなんてイカれたことしなくたって。
そう、こんな世界じゃ。
『不思議の国、メグリ!』
そこにはいつもと変わらない幼なじみの姿。もう、茨にも玉座にも囚われていない。彼女はもう自由だった。オレが解き放った、そういうことでいいんじゃねえの?
「それじゃあ、いい勝負にしましょ、主人公くん」
「オーケー、このクソッタレな世界は楽しんだもん勝ちだ、受けて立つぜ、最強の幼なじみ!」
ーーImaginecode over the singularityーー
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