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3.【速報】美少女が居候することになりました

子どもにしかわからないこともある

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 さらに翌日。この日は休日。

「……………………」

「……………………」

「……………………」

 早朝6時30分、休日にしてはあまりにも早すぎる無情なる起き抜け。

 16歳(仮)と4歳と1歳7か月の無言の対峙。

 まるで、勇ましい柴犬とシャイなトイプードルと尊大なフレンチブルドッグの様相。

無言で互いを牽制するかのように見つめ合う三つ巴。

 彼らの中ではたして何があるのか何もないのかオレと五日香には計り知れない。ただ単に3人とも眠いだけかもしれない。

 あんなことがあったんだ、現在と永々遠はまだ少女を警戒しているみたいだけど、まあ、何日かすれば仲良くなれるんじゃないかな。彼女だって子どもが嫌いってわけじゃなさそうだし。

 それにあの戦う姿は、そして、落ちてきた天井からオレ達を守ってくれたあの姿は正直かっこよかった。

 荒廃の中、華麗に舞う姿は白い花が咲き乱れるようだった。

 だから、現在にはきっとヒーローに見えたんじゃないかな。最近日曜朝の特撮ヒーローにハマり始めてるし。ベルトは断じて買わない。

「というわけで、改めまして、しばらくうちで面倒見ることになった、えっと、」

「フィリアスだ。どうやら、わたしは異世界に転生してきたようだな」

「ねえ、マジでその設定で貫き通すわけ?」

「何? それはどういうことだ?」

「よろしくね、フィリアスさん。私は五日香(いつか)よ」

「はるかぎありか4さい!」

「えいー!」たぶん、えとわ、って言ってるな。

「オレは、この家の主、春嘉木 彼方(かなた)だ、ようこそ、我が家へ」

「はい、よろしくお願いします」

 こうして、ごく普通の一般家庭である春嘉木一家と、フィリアス、と名乗る自称異世界転生勇者による奇妙な生活の幕が開けるのだった。
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