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4.異世界転職勇者

整理整頓、大事!

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「家事なら一通りはできるぞ。わたしは魔王討伐部隊に見出される前は侯爵の館でメイドをしていたんだ」

「なら、話は早い。働かざる者食うべからずだ!」

「了解だ! この世界のことわざは実務的で、わたしでもわかるのはとても助かるな」

 残念ながら一般家庭にはメイド服はない。それをとてつもなく後悔する。あとでこっそり買っておこうかな。こんな(見た目だけは)クール系美少女、フィリアスのメイド服姿なんてはてしなくギャップ萌えやろがい。自分、そういうのすごくすこです。

 それにしても、メイドから勇者に転身ってすごい境遇だな。異世界ではこれが普通なのかな。あとで聞いてみよう。

「これがガスコンロ。料理するためのもんだ」

「魔法もないのに火が点いたぞ! おい、火力調整はどうするんだ!」

「これは洗濯機。服を洗濯する機械だ」

「え、洗い物はこの中に? 一枚一枚手作業で干す? 魔法なら一発で」

「……これが掃除機。家をキレイに」

「掃除なんて魔法を使えばあっという間に」

「お前、もうこれからメイド名乗るんじゃねえ」

 異世界の魔法が便利すぎてうちのメイドが全く役に立たない件。

 まあ、異文化交流だと思えば仕方ないか。実際、異世界では魔法が使えて、こういう機械の方はあまり発展していないみたいだし。

 現在が率先してフィリアスを引き連れ、自分もよくわかっていないはずなのに自信満々で洗濯機の(間違った)使い方を教えているのを後ろで眺めつつ、この荒れ果てた家を居候の少女に片付けさせるのもなんか申し訳ないなあとも思う。

 そう、この家は荒れ果てている。

 どうしようもなく荒れ果てているんだ。

 大事なことなんで2回言っといた。テストで出るかもしれない。

 元々オレも五日香も整理整頓は得意じゃない。

 それでも床に何かが落ちているのだけは許せない性分のオレは、現在達と一緒におもちゃや彼らが脱ぎ散らかした服なんかは片付けるようにしていた。どっちみちまた盛大にぶちまけられるんだが。

 どちらかというと五日香の方がひどくて、オレや現在なんかが落ちている五日香の物を元に戻そうとしただけで怒られる。彼女曰く、どこに何があるか把握しているから問題ない、とのことだったが、そういう問題ではないんだ。部屋に物が散乱しているのが良くないんだ。それでよく永々遠がつまずいて転んでるし。

「部屋を片付けてくれるならどんな風にしても構わないし、多少お金をかけてもいいよ」

「ほほう、そこまで言われると元メイドとしての腕が鳴るじゃないか」

「ねえ、いいの? そんなこと言って」

「大丈夫だろ。フィリアスの部屋見ただろ? 彼女はやれる子だよ」

「でも……」

「そんなに心配なら、とりあえずその辺に散らばってる自分の物は回収したらいいんじゃないか? それならどこかにしまわれて失くされることもないだろ」

「うーん……」

 なんだか納得いっていないみたいだけど、五日香にはこれくらい言わないと何も許してくれない。オレが良かれと思って棚をつけようとしても全部却下されて、収納スペースすらまともに作れやしなかった。

 フィリアスには盾になってもらおう。これも我が家のための立派な勇者じゃないか?
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