王様と籠の鳥

長澤直流

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第1章

選択の儀4

「ライアナ、もうその辺で……」
「殺してしまっては都合が悪かろう?」
 ブライアンを地に押え込み、シェリーの首に手をかけた時、そう言う両親の声は耳に入ってきたものの、ライアナにはやめる気はなかった。障害となるものは排除しておきたかったのだ。
 しかし、ここで唯一ライアナにとって想定外のことが起こった。シェルミーユが身じろいだのだ。思わず意識がそちらに傾き首を掴む手が緩むと、シェリーはここぞとばかりに攻撃を仕掛けてきた。ライアナは素早くシェルミーユを担ぎ直すとシェリーの鳩尾に軽く、しかし鋭く一撃を食らわす。シェリーは小さく呻くと意識を手放してしまった。
 結果としてライアナが大人5人を打ち負かすのに5分もかからなかった。
 誰もが彼を畏怖し、言葉を失う……。そんな中、1人の男が近づいてきた。
「派手にやったものだ。これは将来有望、楽しみよのう」
 そう言って笑ったのは現国王、ジョルジュだった。つまり現時点でクリムゾン王国最強とされている男だ。
 ライアナもさすがに警戒したが、シェルミーユを手放す気は少しもなかった。ライアナがジョルジュの出方を探っていると、彼は笑顔で両手を広げて言った。
「我々はお前に協力しよう」
「!」
 ライアナはジョルジュの言質に些か驚いた。
 国王の決定は絶対だ。クリムゾン王国の民である以上、王国最強である国王に異を唱えることは許されない。
「ただし、お前がもし国王になった時シェルミーユ以外の妻を持つ。それが条件だ」
「妻は――」
「国王に選ばれたらでいい、もちろんわざと辞退するような真似は許されないがのう」
「……」
「承諾するならばシェルミーユのことは黙認しよう」
「……わかった、条件をのもう。だが女の方が近寄なかった場合、その限りではない」
「相わかった」
「……俺は国王の器ではない。まとめる力などないからな、誰も選びはしない」
「はたしてそうかな?」
 そう言ってジョルジュは笑った。
 シェルミーユを大切そうに抱え直して去りゆくライアナの背中を見つめながら彼は呟く。
「国をまとめるのは臣下の考えることだ。国王はただ自他共に認める最強であり、絶対的支配者であり、畏怖され敬われるそんな存在でなければならない」
 それは国民に安心と誇りを与える。国王は最強の象徴でなくてはならないのだ。
「次期国王の誕生じゃのう……。ライアナか、少しくらい度を超えた方がちょうどいいわい」
 強き者が絶対的正義のこの国で、今日起こったことはライアナの存在を全国民に知ら示す結果となった。
 しかし齢5歳、ライアナは己の魅力に気づいてはいなかった。

 この年選択の儀を執り行った子供は2500名。
 崖を登り切った者は532名、背負われた者は387名、新しい地に向かった者は32名、崖から落ち負傷した者や尻込みした者等奴隷行き1549名、子供の死者は出なかった。
 ただ、崖下に青年と思われる死体が1体、崖上に大人の負傷者5名が出る結果となった。

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