『ヤンパラ』~攻略対象が全員ヤンキーの乙女ゲームのモブ、カースト底辺のパシラレキャラに転生してしまいました~

長澤直流

文字の大きさ
10 / 23

天羽8

しおりを挟む
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
~前回の適当なあらすじ~
天羽、ほっぺたを食まれた後の記憶がない。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「お前いったい何したの!?」

 翌日、やはりクラスに足を運んですぐに僕は高橋君に詰問されることになった。

 ですよね~。気になるよね~。
 学園のカースト上位者に連れてかれたからね~。
 僕もびっくりです……

「何で御堂さんがお前を呼びにくんの? 御堂さんが言ってた名前の人って……いや、まさか――」
「……朔夜君の事です」
「――っほんとお前なにしたの!!?」
「……先日、先輩達にからまれてるところを朔夜君に助けてもらいました」
「ああ~……うぇ!? 助けてもらいましたって……――朔夜陸に!?」
「そうです」
「なんでお前が……朔夜さんが……そんな――」

 高橋君はかなり動揺しているようだ。

「天羽、呼ばれてるぞ!」

 クラスの誰かが僕を呼んだ。
 ドキッとしながら恐る恐る教室の扉を見て……、僕は心底ほっとする。
 僕を呼んだのは琴吹さんだった。
 僕は高橋君に軽く頭を下げると、琴吹さんのところへと向かった。

「琴吹さん、先日はありがとうございました!」
「いいや、いいんだよ。そんなことより……あの後、大丈夫だった? 僕、転入してきたばかりで知らなかったんだけど、あの2人結構ヤバイって聞いて……」
「ああ~、そんなこと無いですよ。噂ほど悪い人達ではないです。ちょっと冗談がきついだけで……あの日も僕を寮まで運んでくれましたし……いい人達ですよ」

 嘘ではない、昨日だって意識のない僕を寮まで運んでくれたし、基本いい人達だと思う。
 それに、あんまり余計なことは言えない。
 主人公の攻略対象に対する印象に関わる。
 へたげなことを言って恋路を邪魔したら馬に蹴れるどころか2人に殺されかねない。

「……そう。まあ、何か困ったことがあったら何時でも相談してね」
「え? いいんですか?」
「いいよ! 僕達、友達になろうよ!」
「よ、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく! ……なんだか話し方がこの前より硬いね。もっと砕けていこ?」
「はいっ、あ……うん!」

 いや~、うれしい!!
 この男子棟で、唯一の女の子である主人公と友達になれるなんて夢のよう!!

「あ、あの琴吹さん、連絡先交換しよう?」
「うん、いいよ」
「俺も交換する」
「じゃあ、俺も」

 それは一瞬のことだった。

 ピロンッ……

 QRコードを出した瞬間に横から腕が伸びてきて友達登録されてしまう。

「さささ朔夜君とみみみ御堂君っ……どどうして普通クラスに? ふふふ2人も、僕と友達になりたいの?」

 青ざめた僕がそう聞くと、御堂君は片眉を器用に上げて言った。

 「ああ?……お前ビビり過ぎだろ。 俺のはおまけだよ、お・ま・け。……これから長い付き合いになりそうだからな。お前も早く登録しろ」

 できればケーキの件が片付いたらもう会いたくない。僕はそう思いながら苦笑いしてスマホを操作する。
 一方、朔夜君は……早速何か打ち込んでいる――――

「俺は違う。天羽君と友達になりたいわけじゃない」

 はっきりそう言われて少し胸が痛くなった。 
 昨日のことを思い出して、腹が立ってくる。
 イケメンの距離感はおかしいのだろうか?
 今すぐ、ブロックしてやろうか…………ばれたら怖いからしないけど……

「俺は天羽君の彼氏狙い」

 恥ずかしげも無くそう言い放つ朔夜君に僕は顔を赤らめた。

 ちょっとぉぉぉ! それダメでしょ! その発言アウトでしょ! 琴吹さん石みたいに固まってるよ!!

 苛立ちはなくなったが別の意味で胸の痛みが増してしまった。

「さ、朔夜君ってば冗談――」

 ピロンッ
 朔夜君が僕のスマホを鳴らす。
【お昼、2人で一緒に食べよう?】

 2人でって……僕は御堂君の方を見た。
 御堂君は僕の視線に気がつくと煩わしそうに軽く手を振って答えた。

 ピロンッ
【デザートは北海道の某スイーツメーカーのチーズケーキだよ!】

 チーズケーキ!! 某スイーツメーカーってまさかあの――!

 ピロンッ
【プライベートルームで待ってる。来てくれる……よね?】

 朔夜君のコメントの中で、白いうさぎがかわいく頭を傾げている。
 僕は頭を悩ませた。
 考えて考えて考えて――――訳がわからなくなった僕は、結局考えるのを放棄し、朔夜君のスマホのバイブを鳴らす。

【行きます】

 気づいたらそう打っていた。
 結局僕はスイーツには抗えなかった。

 それを機に、朔夜君は味を占めたかのように毎日スイーツをえさに僕をお昼に誘うようになった。

 そして、恐れていたことが現実となる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

五十嵐三兄弟の爛れた夏休みの過ごし方

ユーリ
BL
夏休み、それは学生にとって長い長い休日。爛れた関係にある五十嵐三兄弟は広い1Rでひたすらお互いを求め合う。山もなければオチもない、ただひたすら双子×義兄が過ごす爛れた夏休み。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

処理中です...