転生転移を司る女神は転生する

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魔術の話2

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爆音に気付き教室に駆けつけたムリアスは状況を聞いて納得した顔をする。

メェルアーの容態を確認して無事なのがわかると周りに向けて注意喚起を始めた。

「このように不慣れな事をすると怪我をする。それから教室内では原則魔術禁止だ、次からやった者は素振り200回」

「校則にはなかった」

「常識外のことをするやつに合わせていては項目が増えるだけだ」

呆れ顔のムリアス。

メェルアーは大した事なく、少し髪の毛がボサボサになった程度。

「初級魔術にあんな攻撃は含まれていない。オレンズ君、わかっているか??」

「わかった」

この時間はまた外に出て剣術である。

複合訓練も終わり、生徒同士の打ち込み練習が開始されていたのだが。

「もっとしっかり振るえ」

体格差やそもそもの技量も相まって、中々合格点に至る者はいない。

「はぁぁぁ!!!」

「ミレーナ君もまだまだ、軸がズレている」

木刀で五歩斬り進み、五歩守りながら後退する練習形式。

転ける者や、途中で当ててしまう者も多い。

「とぉ、やぁっ、とお!」

「オレンズ君は弱い、もう少し音がなるように打て」

「わかった…アーフェ耐えてね」

腕力、速度、全てが上昇する。

掠った木刀同士が薄い紙のように飛んでいく。

「ちょっとメェルアー!打ち込みは五歩まででしてよ!」

負けじとアーフェリアが剣を受け流して、切先を地面へと蹴り埋めた。

「流石、扱い方を熟知している」

メェルアーは少し不服な顔をしつつ、削れて細くなった木刀を見つめる。

「ちからなら私のほうが上、剣のせい?」

「技ですわ、強い力も流されてはお終いですから」

「だから一週間もかけてれんしゅうをしたのか」

今更かよとムリアスとアーフェリアは頭を抱えた。

出来が悪いということでみんな一度基礎練からやることとなった。

授業が終わり食堂に入ったメェルアーたち。
三年生の付き添いはもう終わり、各自自由な席で食べるように案内をされた。

「さんねんせいとたべてるひともやっぱ居るんだね」

「そうですわね。高学年との交流は学校生活において何より重要ですから」

「そうだな。オレンズ君とミレーナ君」

日替わり定食のメェルアーと香草焼きのアーフェリアが居る丸テーブルにムリアスがやってきた。

「ムリアス会長」

「君たち二人が一番忖度無しで話しやすそうでね、私の授業ペースについて尋ねようかと」

メェルアーと同じ日替わり定食をテーブルに置き、席に腰を下ろした。

食事を摂りながら雑談を交えるムリアスは、授業について何か思うところがある顔をしている。

「私としては安全も加味するとこれくらいのペースでいいと思いますわ。ですが、魔術の方は実習を早めに取り入れなければメェルアーのように暴走する生徒も出てくると考えています」

「確かにそうだな。魔術学校で魔術より剣術の方が先に実戦となれば反感も買うわけだ」

食事中に失礼と紙を取り出し手っ取り早くメモを取っていく。

「わたしもはやくてきをたおしたい」

「オレンズ君は勇者という自覚を持とう」

その言葉で思い出したかのようにアーフェリアは辺りを見渡す。

ムリアスがこの席に来ていなければ、聞き耳を立てている他のクラスや上級生が来たに違いない。

「そうですわ、あなたは気付いていないかも知れませんが…沢山の方に見られていますわよ」

「いわれてみれば。たにんのしょくじをのぞくとはこの学校のしつけも悪いものだ」

「それを言われては心苦しいばかりだ。前例のない事に翻弄されるようでは一流の魔術師に成れやしない」

「兄貴だって翻弄されまくりだろ」

パンと焼いた鶏肉だけの簡素な食事をテーブルに置いたエンリアル。

「えんりあるおそかったね。寮長きびしかった?」

「あー。俺らはもう打ち合いやってるからな、ついついみんな時間忘れてて」

「ではそろそろ失礼するよ。エンリアルはもう少し握り方を緩めた方がいい、手がボロボロだ」

「わかってるよ、オロー式に慣れすぎて痛めただけだから」

「そうか、ならいいがな」

「かいちょー!探しましたよ?!ささ、早くいかないと会議に遅れますわよー!」

「たいへんなんだ、かいちょうは」

「まぁな。学年主席で学校随一の実力者、なおかつカリスマ性。これがなければ立てない」

「なるほどわたしでもなれそうだ」

「メェルアーは学力だけだろー」

「そうですわね、最低でも必要な気品が足りませんわ」

「あと三年もあればかんたんにとっぷおぶざとっぷ」

「四年生はまだ下走りだぞ?会長目指せんのは五年生からだ」

「勇者特権とかない?」

「今の待遇でわかる通り、半信半疑で好奇の目に晒されているだけ。もっとインパクトのあることを…あー」

エンリアルが学内掲示板を見て何か思いついた。
アーフェリアも同じ方を向き同じ顔をした。

「剣魔術闘技祭に出て成果を残せばいい」

「ちょうど来週に候補者の選別がありますわ」

「なるほど、わたしの剣技と魔術でかんきゃくをみりょうさせれば」

「俺女子の方見てないからさ、どんなけ強いか分からないけど、兄貴から聞いた話じゃここの試験の時にめちゃくちゃな結果は残したって言ってたから」

「エンリアルが期待の目を向けるのも分かりますが、ただ単に力のコントロールが出来ないだけですわ」

「コントロールは最近練習している」

「最近夜に出る理由が分かりましたわ、教えてもらえれば指南に行けたのですが」

食事も終わり、午後の授業が開始された。

「今日は外に集まってもらった。校長から剣魔術闘技祭に向けた強化練習をしろとあってな。まだ基礎も教えていないのに撃たせるのは不服だが、教えるからには二流まで来れるように尽力しよう」

撃たずに魔力を両面に纏う抵抗魔術組と、一番弱い初級魔術を撃つ組に分かれて始まった。

剣術と違い魔術は男女混合で行われる。

「光の魔術よ、我が力に呼応して敵を痺れさせろ!」

「火の魔力よ、我が力に呼応して肉体を守り抜け」

危険がないようにスパイラルショットのみの縛りで実技が始まった。

痺れるもの、魔力切れに疲弊するもの、調子に乗って攻撃魔術を撃ちムリアスに説教されるもの。

「魔術ってたのしいね、スパイラルショット」

「闇の魔力よ、我が力ぁ」

相手の男子が痺れて地面に倒れ込む。

「オレンズ君、詠唱を省略しない」

「私を守って魔力さん」

「光の魔術よ、我が力に呼応して敵を痺れさせろ!」

「うーん、ビリビリするけどこれくらいなら動ける」

頓珍漢な詠唱に抵抗魔術は発生したものの、精度が悪くメェルアーは髪の毛が逆立ち、ピリピリと全身が震えていた。

「ご、ごめんなさいオレンズさん!」

「大丈夫大丈夫、このていどならかんたんにうごける」

「オレンズ君……君が出たいと直訴したから授業のカリキュラムが変わったという自負はあるかね?」

食事後すぐに校長室に駆け込み、謎のセールストークを披露したメェルアー。

「ムリアスかいちょうこわい。わたしはじこりゅうでなりあがる」

その熱意と勇者という立場に負けて校長はカリキュラムの変更を余儀なくされた。

「それで年間何人も倒れては生徒会としても示しがつかないからやっているんだ。しっかりと指導書通りに撃つ、わかったか?」

「ゔぇーい。いくよ…光の魔術よ、我が力に呼応して敵を痺れさせろ」

スパイラルショットにしてはかなり広大な電気ネットが飛び出た。

「闇の魔力よ、我が力に呼応して肉体を守り抜け!が、ぁぁぁぁぃぁああ」

痙攣して動かなくなる対象。

「ムリアスかいちょー、これどうするの?」

「医務室へ運んでくる。オレンズ君、素振り200回」

倒れた生徒を軽く担ぎ消えていくムリアス。

「うーん、ちょうせいができない」

言で縛る現世のルールは適用されにくい。

これは全ての世界において実地試験を行えるように調節された女神ならではの悩みでもある。

「メェルアー・オレンズについての天界データは参照した事がありませんし、詳しいことは分からない」

素振りを200回終えて、一人悩むメェルアー。

「どうした神妙な面持ちをして。同級生への罪悪感なら、胸に秘めて次に活かせ」

「ムリアスかいちょう。私はほんとうにゆうしゃなんでしょうか?まじゅつがへたでけんもよわい」

「あの研究所で出たデータと女神降臨の件、それから特質な力を含めて間違いないだろ。謙遜する気持ちもわかるし、周りの期待に応えれない気持ちも理解はしてやる」

「なるほどムリアスかいちょうはまわりのきたいにこたえれていないと」

「俺の話はいいだろ。そうだが、いや実にそうだ。会長になった理由だって優秀だからってだけ。俺自体は一般の生徒となんなら変わらないんだと思う」

「なるほど、たちばちがえどなやみはおなじ」

「だから今は言われたことをやれる限りに尽くしてやればいい。間違えれば叱るだけだ」


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