無能鑑定人のムューラ

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超難関事故_水中洞窟

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薄暗い洞窟内を大きなライトが照らしている。遺体は袋に入れられ近くに置かれている。少し進むと水面が見える。
状況は、なかなか潜って帰ってこない仲間を心配して見に行ったら動かなくなっていたとのこと。
 
「本件を委任された殺人課のボンだ、前回同様の毒殺だろうと踏んでいる」「特無官のムューラです。では早速現場を見させてもらいますね」

毒を生成する魔術もあれば毒を無味無臭にする魔術もある。その介入が痕跡にないとなれば、非魔力者による殺人の可能性。
死亡者二名、生き残りの六名共に無者である。

「魔導具で潜水するからこの辺の魔力係数は算出してから求めた。だいたい正常値だ」「ありがとうございます。ふむ、なるほど……先輩が難航したのもわかりますね」

毒と言われるものは自然性と人工性の二種類、魔力的関与がなければ前者。前者は特定が難しく、種類や系統も膨大になる。

「私が派遣された理由がわかりました。ちょっと水の中見てきますね」「おい装備は」「毒ならすぐわかるので」

水は凍らない程度に冷たい。流れはあまりない。生態系についても目ぼしい反応が散見できないため、その線は薄い。

「(全身を見たけど穴は空いてなかった。異臭もない、事前に作った毒でも魔力関与物はわかる。我々向けに公開されている特殊なデータベースでもそのような件はない。)」

死体の損傷はなく、無表情に近い死に顔であった。突然死、はたまた予見された死?

奥へ進むと通路が見える。水中洞窟はここからのことを指すようだ。少し地面に泳ぐ足が触れるだけで砂埃が舞い上がる、視界はこの目でも視界不良を起こすので、人の目ではわからないだろう。砂の動きからも流れがわかる。
さらに奥へ入ると道が細まってきた。呼吸器用のタンクに若干の凹みがあったのはこの辺を通ったからだろう。

「(これは勘だが事故。あるいは設備不良。現在タンクを製作できるのは二社、本件はどちらのものでも起きている。タンク製造の過程かもしくはそのもの)」

実報告書A―該当二社の製作するタンク内充填気体における人体実験の経過観察結果。
タンク利用時……吐き気、眩暈、多幸感等の医学的所見あり。
タンク使用後……最長一年に及ぶ呼吸障害。
今事件のタンク内オキシゲン濃度は24前後、市販品の50%越えと比べればかなり薄めである。

「(ただ、人が水中を克服できたという偉大な一歩を折らないために隠蔽されている可能性有り)」

殺人事件だとして、なぜわざわざ水の中で怪我を一切負わせずに殺せたのか。麻薬の類いも疑ったが、それは現場の検証魔術で解明可能だ。

「はい一通り見終わりました」「おいおい、どんな特殊能力だ?一時間は潜ってたぞ」「機密です。時間に関しては少し深かったもので」

死体は運搬が終わったようで、殺人課の人たちが水中装備を準備していた。

「あんまり遅いんで、物的証拠捜しついでにと思ってた所だ」「本案件は、もう解決いたしました。私は提出があるので帰ります」「なに?!って聞けないんだったな。まぁいい、俺らは一度捜査命令を出した以上は軽い視察等をする。念のためここは封鎖するが問題ないか?」「ええ、構いませんよ」

一人納得のいかない被疑者が何か言っていたので後で連絡先を渡すように殺人課のボンへ告げて後にした。
洞窟を抜けるともう朝になっていた。今から戻るのもアレなのでとカフェ"ノール"に寄る。

「いらっしゃいませ」「いつものお願いします」「今日も早いわね。また事件かしら」「そうです、最近多い水難関係の」

水難と聞いて何か思う節があったのか、変なメモ帳を渡してきた。

「これさ、客の忘れもんなんだけど。水難事件を調べてるフリーライターらしくてね?捜して渡すついでに何か聞いて見ては?」「本当ですか?!ありがとうございます」

メモ帳にはパーラス新聞社、コールズと書かれている。どうやら国政反対運動派記事で有名なパーラス社。国政機関の者が渡しにきたら何を思うだろうか。

「それからそれからまたパンね」「はーい。これお代です。臨時収入もくるからケーキ6個買います」

ケーキとパンを持ってパーラス新聞社へと進む。ちょうど道中なので楽でいい。というよりわかっているから託したのだろう。
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