邪剣を片手に、呪いを身体に

ソラ

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第二話 諍い

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洞窟から帰る道では珍しく、1回もモンスターと接触しなかった。面倒な戦闘はするだけ無駄だから、嬉しくはあった。
しかし、やはり妙だな。異様にこの剣を持ってからモンスターと遭わない。

そんなことを考えていると国の城壁がかすかに見えてきた。後もう少しで到着するだろう。

だが、油断はできない。ここは1m近くあるネズミのモンスターの生息地だ。大きな巣もこの近くで発見されている。奴ら自体の知能は低く、孤立している個体を討伐することはとても簡単だ。
しかし本能によって組まれる連携は厄介だ。
下手すると熟練の冒険者でも命を落とす場所となっている。

本来は馬車などを使ってここを通り過ぎるのだが、そんなことに使う金がもったいない。俺ほどの実力者ならば傷なく通り過ぎることができるだろう。

「やっと。お出ましだな。」

4方向を塞がれている。やはり厄介だ。だが、俺がこの辺りの地形に詳しくないはずがないだろう?
とりあえず北東にいた個体に距離を詰め、先程入手した剣で斬る。一瞬でも怯ませられればこっちのもんだ。

しかしこの剣「ソウルスレイヴ」の切れ味は凄まじく、予想以上の威力を出してくれた。
怯ませられればいいと思い、脳天に一撃振り下ろしたのだが、その勢いのまま頭を真っ二つにしてしまった。

非常なグロテスクな絵面で取り巻きのネズミ共は怯んだようだが、すぐに思い出したかのように俺を追いかけ始めた。

そこで俺は周りと比べて少し小高い丘に向かい、そこから飛び降りた。丘の下は軽い空洞になっていて隠れるには最適だ。

すぐに追ってきたモンスターが丘から飛び降りてきたのが見えたが、その時には既に俺のことは見失っていた。そんな状態では連携なんて取れるはずがない。
結局、生き物なんて予想外の行動をされたら冷静な判断はできない。それが戦場なら待ち受けているのは間違いなく死だ。

当然、1匹ずつ後ろから襲って殺していった。

「ふう。とりあえずは終わりだな。」

そうしてちょっとした戦闘を終わらせた俺は再び国へと向かった。

やっと着いたな。今日は不思議なことがたくさん起きたがそんな日もあるのだろう。
そうして城門を潜り、いつも通りの道で帰宅する。

少し遅い時間帯ということもあり、BARの看板が出ているところもある。完全に沈んでいない陽が物悲しさを奏でる。このような時間はあまり好きではない。

歩いていると群衆を見つけた。何やら掲示板に群がっているようだ。いつもの俺ならスルーしていただろう。しかしその言葉を聞いてから俺の気持ちは変わった。

「おい!聞いたか!?国王の勅令でモンスター討伐クエストが出たらしいぞ!」

なんだって?国王が動いた事件なんて本当に強大なモンスターが現れたということだぞ?

そもそも国王は普段民衆に姿すら見せようとすらしない。当然だ。暗殺でもされたらこの国が滅亡しかねないからだ。

どうやらそのクエストは緊急で用意されたもので報酬などを用意できなかったらしい。その代わりに

「勇者」の称号を与えると。

勇者の称号を与えられるということは人生を約束されたものにすると言っているようなものだ。
この国での優遇は計り知れる物ではないだろうし、他国でもその名が知れ渡ることは確実だろう。

いいじゃねえか。最近面白いことがなくて退屈していた所だ。やってやろうじゃねえか。

その勇者の称号、俺が貰う。

すぐにその掲示板に貼ってあった紙を剥がし、国の役所のような場所に向かった。通りゆく人からは好奇の視線で見られ、決して居心地がいいわけではなかった。だが、それよりもこれから起きるであろうことの方が俺にとっては重要だ。

役所に入るとすぐに俺に視線が集まった。当然だろう。俺は戦闘用の装備を身につけたままだからな。しかし次の瞬間には彼らの興味は無くなっていた。やはり強大なモンスターが現れたことに対してあたふたしているのだろう。

「このクエストを受けたい。要件を教えてくれ。」

すると受付のものは目を丸くして

「こ、これをですか!?えっとですね…。」

すると説明用の紙を渡してくれた。どうやらすぐには討伐にはいけないらしい。被害が出るのも問題だが、国にとって貴重な冒険者を無駄死にさせることの方が問題らしい。
まず規定のクエストを達成することで討伐のクエストに行けるという。また、討伐には原則4人で向かわなければならない。

「チッ。めんどくせえ条件だな。しょうがねえ。すぐに規定のクエストやらを終わらせてやるか。」

一先ず夜も老けてくる頃だ。今日の戦闘の疲れを癒す為にも帰宅して寝ることにしよう。

そうして寝床についてから俺は今後について考えた。まずは仲間集めが最優先だ。そこから…。そのまま意識は落ちた。


         🌙

今日はいつもよりも遅く起きた。いつもならモンスターの少ない早朝に起きるのだが、今日はその必要はない。
陽が出ているのを見るのは少し違和感だが。

出発準備を整え、家の外に出る。とは言っても今日は戦闘を行うつもりじゃないからソウルスレイヴは持って行かない。胸に短剣を忍ばせておくだけでいいだろう。

「さて、どうやって仲間を集めようか・・・。」

そんなふうに悩んでいると、声をかけられた。

「ようドウキ。元気そうで何よりだ。」

そうやって悪い顔をしてやってきた男は。

「チッ。リュータか。俺に何の用だ?」

リュータはこの国で腕っぷしの冒険者だ。少し前に大型モンスターを倒したことで有名になっていたことが印象的だ。かなりガタイのいい体格をしているため近所の人からは怖がられているようだ。

「なぜ俺の名前をお前が知っている?」

「なあに。そう警戒するなよ。お前、国王からの勅令の紙を持っていったんだってな。この辺りで話題になってたぜ。」

そうか。だからか。そりゃあんな大胆な行動をすれば話題にもなるか。有名になるんだったら国全体に知れ渡る程のものでないと意味がない。近辺での名声なんて興味ないな。

「お前、仲間が必要なんだろ?」

「・・・何が言いたい?」

そう言うと彼は含み笑いをしながら言った。

「俺と手合わせをしようじゃないか。そうしたら俺が仲間になってやるよ。」

はぁ?そんなもん御免だ。こんな信用できないやつ仲間にできるか。即席だとしても、モンスターを討伐した後にもし裏切られたら本末転倒だ。こんな爆弾入れる必要がない。


待て。なぜこいつは俺にそんなことを言ってき
た?


「何が目的だ?俺に加担しても何もいいことなんてないぞ?」

裏切ること目的ならば手合わせなんて申し込まないはずだ。

「そんな難しいことじゃない。俺は勇者の称号を最初から貰ってやろうと思っていた。しかし掲示の紙を剥がして挑戦する奴が出てきた。そんなやつ気にならないはずがないだろう?」

「・・・」

しまった。こんなことならあんなことしなければよかった。民衆の前で目立つことをして、こんな奴に絡まれるなんてな。まったく。不運だ。

「お前が真の実力の持ち主ならば俺はお前に従ってやる。何でもやってやるよ。だが、もしお前が俺に負けたらお前が俺に従え。それでいいな?」

よほどの自信があるようだ。まあいいだろう。腕が立って、俺に従うならこれ以上のものはない。さっさと勝ってしまおう。俺がこいつに負けるわけがないからな。

「いいだろう。受けてたつ。それで手合わせのルールは?」

「簡単だ。相手に致命傷を負わせられればそいつの勝利だ。回復はそこの診療所ですればいいだろう。金ならここにある。」

そう言うとリュータは金を懐から出した。

「いいだろう。ここじゃ周りに被害が出る。広場でやるぞ。」

そうして俺はリュータと共に国の中心部にある広場へと向かった。この体格さでは間違いなくパワー勝負では勝てないだろう。ならば俺の得意な、「戦略」で制すれば良い。

「さあ、着いたぞ。さっさと始めるとするか。」

そしてお互いが20メートル程離れたところでリュータが始めッと叫んだ。どうやら手合わせスタートのようだ。

「うぉぉぉぉぉッッッッ」

そう雄叫びをあげてリュータが近づいてくる。そして俺の目の前で体の2分の1はあるのではないかと思うくらい大きいアックスを出してきた。

どうやらリュータの武器はビックアックスらしいな。体格が大きい奴には適正だろう。だが、

ドンッッ

そんな大きい音を立ててビックアックスが地面に突き刺さった。とても重い武器の分避けるのも簡単だ。対して俺の武器は短剣。その身軽さを利用して、一瞬にしてリュータの背後へと回り込んだ。

「何ッ!?」

ビックアックス持ちにしては素早い動きだった。流石、有名になった男だ。だが、俺に勝てるわけがなかったな。

「じゃあな。俺の勝ちだ。」

そうして短剣を背中に刺そうとした。
しかし嫌な予感が俺を襲った。

よく見ると、さっきまであんなに深くまで刺さっていたビックアックスがもう抜けかかっている。

まずい!そう思った俺はすぐさま避ける体制になった。しかし次の瞬間には、俺の頬から血が流れていた。

ビュンッという音を立ててビックアックスの刃が俺の頬をかすめたのだ。
危なかった。あともう少し回避遅れていたら、死んでいたかもしれない。

こいつ・・。遠慮する気なんてさらさらねぇ!

「ほう?避けたか。これを避けたのはお前が初だ。誇るといいぞ。」

そう薄笑いを浮かべてリュータがこっちを向く。先程のは演技だったようだ。

この勝負。気を抜けそうにない。
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