香水のせいにすればいい

弓葉

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香水の落とし方

厭らしい手つき

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 だんだん香水斗の手つきが厭らしくなってきた。まさぐるように指の腹で撫で付け、少しでも抵抗するような素振りをすれば喉元に手を移動させる。その度にゾクリと背筋が凍るような感覚がし、ヒュッと喉が鳴った。

「なぁ、俺に触られるの嫌か?」

 喉仏に人差し指をかけながら言うんだから『嫌』だなんて言えるはずもない。

「嫌じゃない……」
 
 そう言えば香水斗は満足そうに僕のボトムに手をかける。

「え? ちょ、と待って! おかしいって!! そこはかけられてない!!」

 香水斗は胸の辺りを指で押し、そのままスーッと下半身へ移動させた。

「胸にかかった香水がシャツを通貫し、水滴が垂れたかもしれない。なら確認して洗わないと」

 本格的にベルトを外しだしたものだから慌ててその手を掴んだ。
 
「ま、待って待って! それなら明日にしよう!! 今日は困る!!」

 自分でも訳が分からないことを言ったと思う。なんだよ、今日はダメって意味が分からない。何言ってんだよ……。

「なんだその理由? もしかしてだっさい下着でも穿いているのか」

 香水斗は容赦なく僕の下着を見ようとしてくる。僕は必死に抵抗した。

「いや、そうじゃなくて色々と困るのが「もしかして、今日も風呂に入ってないと言わないよな?」

「え?」

「え? じゃねえよ。昨日挨拶しに来た時、汗臭かったじゃねえか」

 なんてデリカシーが無いのだろう。顔が一瞬で赤くなって言い返したいのに事実だから開いた口が塞がらない。

    
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