死後の世界のハローワーク

半次郎

文字の大きさ
8 / 8

閻魔襲来

しおりを挟む
死後の世界のハローワーク関東支店、年度始め。

支店長が今年度の数値的な計画、目標を話し終えたところだった。

「えー、最後に。今日から関東支店に配属する事になりました、新人巫女の水仙さんです。一言お願いします。」

「はじめまして。今日からお世話になります、水仙です。早く仕事を覚えられるよう頑張ります。宜しくお願いします。」

(パチパチパチ…)

歓迎の拍手が鳴り終わり、支店長が続けて話す。

「水仙さんの教育担当は…桜さん、お願いします。」

「はっ、はい!」

緊張気味に桜が応えた。

新人がひとり立ちするまで、先輩巫女が仕事を教え、サポートしていく。水仙と比較的年齢が近い桜が今回任命された。

朝礼終了後、楓が桜に話しかける。

「遂に桜も先輩かぁー。時が経つのは早いねぇー。」

「私もいつの間にか新人じゃなくなってたんですね。水仙さんにしっかり教えられるか不安ですよ。」

「大丈夫!私が桜を育てたように、青葉姐さんが私を育てたように、皆んな普通に仕事出来るようになるんだから平気だよ!」

「そうですね!ありがとうございます!頑張ります!」

(キーンコーンカーンコーン…)

時刻は9時となり、建物のシャッターが開き、次々と面談者がやってきた。

楓は窓口に座り、最初の面談者を呼び込む。

「受付番号1番の方ー」

「おはよー!楓ちゃん!」

「…おはようございます。龍二さん。」

やって来たのは常連面談者の武田龍二だった。

「あれ?桜ちゃんの横にいるの新人さん?」

「そうです。今日から入った新人ですよ。」

「フレッシュで良いねー。でも気をつけて。今の子はすごくデリケートだからさ。話す内容ひとつとっても慎重にならないと、パワハラやセクハラで訴えられるかもしれないよ!」

「そうなんですか?そんな風には感じませんが…」

「分からないよー。人の心は読めないからね。とりあえず大事に育ててあげな。」

「分かりました。それで、龍二さん。そろそろ天国に行く決心はつきましたか?」

楓はいつも通り、武田に転生先の希望を聞かず、天国行きを勧める。

「何言ってんの!天国なんて退屈そうな場所、真っ平御免よ!今回はゲームの世界に転生したいと思ってんの!」

「…ゲームですか?」

「そう!ゲームの悪役貴族に転生するの流行ってるんでしょ?ちょっとやってみたいなぁと思ってさ!」

「それはホントにやりたい事なんですか?流行りや興味だけで転生先なんて紹介出来ませんよ。」

「へへっ。やっぱそうなるよね…。最近ちょっと悩んでるんだよ。俺は何がしたいんだろうって。」

珍しく武田がブルーになっている事に楓は驚いた。

「現世で刑事やってた時は、がむしゃらに働いて、気が付いたら一日が終わってるみたいな事ばっかりで。それが今じゃ一日終わるのが長くて退屈だ。そう考えると生きていた時は凄く充実してたんだなぁとしみじみ思うよ…。」

(…龍二さんなりに悩んでたんだ。)

武田の気持ちを知らずに、ぞんざいな対応をした事を楓は悔いる。

「申し訳ないです、龍二さん。何かお役に立てそうなスカウト探します!」

「ありがとう。俺の暇つぶしにいつも付き合ってくれて。ちょっと死後の世界の身の振り方、真剣に考えるよ。今日は帰るね。」

武田は楓に告げると静かに帰っていった。

死後の世界では天国か転生かの二択を選ばなければならない。(地獄行きの者を除く。)面談者にとっては両方とも未知の世界。武田のように迷うのも当然だ。しっかり自分が納得出来る行き先を見つけてくれる事を楓は願った。

「楓さん、ちょっと来て下さい。」

支店長から急に声が掛かった。

「はい!」

(げっ!支店長の横にいる人ってまさか…)

一際大きな体格と鬼ような顔の人物が立っている。閻魔だ。菩薩同様、この事業所の最高権力者になる。

「お前が楓か。」

図太い声が見た目と相まって迫力を増す。

「は、はい!」

(何で閻魔様が居るんだ…。しかも私が呼ばれるって、もしかして地獄行き!?)

楓が小刻みに震えていると、支店長が用件を話しだした。

「本日急遽、地獄行きの者の特別面談を行います。楓さん、担当して下さい。」

「なんで私なんですか?」

「閻魔様のご指名です。」

楓は真っ青になった。

極稀に地獄行きの者の特別面談が執り行われる。いわばセカンドチャンスだ。特別面談を通して、更生されている事が認められれば、転生する事が許可される。(天国に行く事はない。)
転生は一般と異なり、対象者に選択権がなく、過酷な条件下の転生先に送り込まれる。地獄よりはマシな所ではあるが。

「お前の噂は聞いている。中々人を見る目があるそうじゃないか。期待している。」

「…ありがとうございます。全身全霊で頑張らせて頂きます。」

急に決まった特別面談。しかも相手は地獄行きの荒くれ者。楓は無事に面談する事が出来るのか。死後の世界のハローワークは閻魔襲来で大忙しだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...