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ゴキブリ編1
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「…分かりました。本日23時、閉店後にお伺い致します。それでは。」
気温が上がると奴らの駆除依頼が増えるな。飲食店はさぞかし大変だろう。
俺は不知火光輝。
害虫害獣駆除の会社を経営している。
一応、社長だ。
従業員は数名だが、少数精鋭で数ある仕事をこなしている。
基本的には、害虫害獣の種類は問わず、どんな奴でも駆除可能。それなりに実績もある。
今夜はゴキブリの駆除依頼が入っているので、早速駆除プランでも打ち合わせするか。
「おい、夏目。今夜アポが入ってるゴキブリ駆除の打ち合わせするから、縄田を呼んで来てくれ。」
「分かりましたー。」
夏目愛は会社で唯一の女性だ。
仕事柄、見た目が気持ち悪い生物と対峙する中で、夏目は物怖じせずに堂々としていてくれて助かっている。
「社長。お疲れ様です。」
縄田伊吹がやってきた。
縄田は会社で一番の古参社員。俺が会社を立ち上げ、最初に出した求人で応募してきたのが縄田だ。この会社に入る前からこの業界で働いており、知識・経験は豊富で即戦力だった。
「全員揃ったな。23時から石川町にある中華料理屋“觔斗雲”でゴキブリ駆除がある。会社を1時間前に出れば十分間に合うだろう。駆除プランは、粘着シートとベイト剤を仕掛ける感じで良いかな?」
「そうですね。飲食店だから噴霧器で薬剤撒くのはやめといた方が良いでしょう。薬剤が使えないとなると完全駆除までに少し時間が掛かりますね。」
縄田が答える。
「まぁ仕方ないだろ。目に見えるゴキブリは出来る限り始末して、あとは罠でなんとかしよう。」
「社長。一応、“アレ”だった場合も考慮しておいた方が良いかと。」
夏目が言う。
「…そうだな。その点に関しては抜かりないよ。縄田も“アレ”だった時のために専用罠も準備しといてくれ。」
「分かりました。」
俺達が言う“アレ”とは、突然変異生物の事。
つまりミュータントだ。
信じられないが、現代では複数のミュータントが存在する。
ミュータントが誕生する原因は明確には分かっていない。だが今現在発見されたミュータントは、どういう訳かすべて害虫害獣の変異個体なのだ。
まだその数は少数であるが、専門家によれば今後増加していくと言われている。
厄介な事にミュータント化した害虫害獣は、普通の個体と比べて人に与える“害”が大きく、更には人を襲う事もあるという報告もある。
当然そんな奴らを放置する訳にはいかないので、害虫害獣駆除する傍ら、俺達はミュータントの駆除も請け負っている。
未だ奴らの情報が少ない中、何度も駆除に成功している。
その理由は、俺達の持つ“能力”に他ならない。
今は奴らの駆除を使命だと思い、依頼を引き受けている。
午後22時。
会社を出て、社用車が止まっている離れの駐車場へと歩く。俺が運転するプロボックスに夏目を乗せ、ハイエースを縄田が運転し、車2台で現地に向かった。
しばらく車を走らせ、横浜公園で高速を降りる。市街に入り、中華街の中にある適当なパーキングに車を止めた。
数分歩くと目的の場所“觔斗雲”があったので店内に入る。
「お世話になります。害虫害獣駆除のお約束で参りました不知火です。」
「お待ちしてました。劉です。」
店長の劉さん。午前中電話でウチに依頼してきた方だ。
「早速ですが、害虫の被害状況を詳しくお聞き出来ますか?」
「はい。最初は一週間ぐらい前に厨房で見つけたんです。それから頻繁に現れるようになって。これ結構いっぱいいるんじゃないかと心配になりまして…。」
「そうですね。一匹見つかったら数十匹から数百匹はいる事もあります。」
「ウチは飲食店だから客席に出たら大問題ですよ…。」
劉さんの言いたい事は分かる。奴らが出てしまったら、店が不衛生と疑われ評判が落ちてしまう。早めに対処した方が良いな。
「それにゴキブリのせいで店の食材が食い荒らされて大変なんですよ。廃棄もすごい出て困ってるんです。」
…食材が食い荒らされる?普通じゃない。
夏目、縄田と目が合う。
これは“アレ”の可能性あるな。
「食材の被害ですが、どれぐらいの量ですか?」
「すごい量ですよ!野菜も肉も!一日の仕入れの半分は無くなります。ゴキブリってこんなに食欲あるんですね。」
確信した。“アレ”だ。
「それはゴキブリじゃないですね。ミュータントですよ。」
気温が上がると奴らの駆除依頼が増えるな。飲食店はさぞかし大変だろう。
俺は不知火光輝。
害虫害獣駆除の会社を経営している。
一応、社長だ。
従業員は数名だが、少数精鋭で数ある仕事をこなしている。
基本的には、害虫害獣の種類は問わず、どんな奴でも駆除可能。それなりに実績もある。
今夜はゴキブリの駆除依頼が入っているので、早速駆除プランでも打ち合わせするか。
「おい、夏目。今夜アポが入ってるゴキブリ駆除の打ち合わせするから、縄田を呼んで来てくれ。」
「分かりましたー。」
夏目愛は会社で唯一の女性だ。
仕事柄、見た目が気持ち悪い生物と対峙する中で、夏目は物怖じせずに堂々としていてくれて助かっている。
「社長。お疲れ様です。」
縄田伊吹がやってきた。
縄田は会社で一番の古参社員。俺が会社を立ち上げ、最初に出した求人で応募してきたのが縄田だ。この会社に入る前からこの業界で働いており、知識・経験は豊富で即戦力だった。
「全員揃ったな。23時から石川町にある中華料理屋“觔斗雲”でゴキブリ駆除がある。会社を1時間前に出れば十分間に合うだろう。駆除プランは、粘着シートとベイト剤を仕掛ける感じで良いかな?」
「そうですね。飲食店だから噴霧器で薬剤撒くのはやめといた方が良いでしょう。薬剤が使えないとなると完全駆除までに少し時間が掛かりますね。」
縄田が答える。
「まぁ仕方ないだろ。目に見えるゴキブリは出来る限り始末して、あとは罠でなんとかしよう。」
「社長。一応、“アレ”だった場合も考慮しておいた方が良いかと。」
夏目が言う。
「…そうだな。その点に関しては抜かりないよ。縄田も“アレ”だった時のために専用罠も準備しといてくれ。」
「分かりました。」
俺達が言う“アレ”とは、突然変異生物の事。
つまりミュータントだ。
信じられないが、現代では複数のミュータントが存在する。
ミュータントが誕生する原因は明確には分かっていない。だが今現在発見されたミュータントは、どういう訳かすべて害虫害獣の変異個体なのだ。
まだその数は少数であるが、専門家によれば今後増加していくと言われている。
厄介な事にミュータント化した害虫害獣は、普通の個体と比べて人に与える“害”が大きく、更には人を襲う事もあるという報告もある。
当然そんな奴らを放置する訳にはいかないので、害虫害獣駆除する傍ら、俺達はミュータントの駆除も請け負っている。
未だ奴らの情報が少ない中、何度も駆除に成功している。
その理由は、俺達の持つ“能力”に他ならない。
今は奴らの駆除を使命だと思い、依頼を引き受けている。
午後22時。
会社を出て、社用車が止まっている離れの駐車場へと歩く。俺が運転するプロボックスに夏目を乗せ、ハイエースを縄田が運転し、車2台で現地に向かった。
しばらく車を走らせ、横浜公園で高速を降りる。市街に入り、中華街の中にある適当なパーキングに車を止めた。
数分歩くと目的の場所“觔斗雲”があったので店内に入る。
「お世話になります。害虫害獣駆除のお約束で参りました不知火です。」
「お待ちしてました。劉です。」
店長の劉さん。午前中電話でウチに依頼してきた方だ。
「早速ですが、害虫の被害状況を詳しくお聞き出来ますか?」
「はい。最初は一週間ぐらい前に厨房で見つけたんです。それから頻繁に現れるようになって。これ結構いっぱいいるんじゃないかと心配になりまして…。」
「そうですね。一匹見つかったら数十匹から数百匹はいる事もあります。」
「ウチは飲食店だから客席に出たら大問題ですよ…。」
劉さんの言いたい事は分かる。奴らが出てしまったら、店が不衛生と疑われ評判が落ちてしまう。早めに対処した方が良いな。
「それにゴキブリのせいで店の食材が食い荒らされて大変なんですよ。廃棄もすごい出て困ってるんです。」
…食材が食い荒らされる?普通じゃない。
夏目、縄田と目が合う。
これは“アレ”の可能性あるな。
「食材の被害ですが、どれぐらいの量ですか?」
「すごい量ですよ!野菜も肉も!一日の仕入れの半分は無くなります。ゴキブリってこんなに食欲あるんですね。」
確信した。“アレ”だ。
「それはゴキブリじゃないですね。ミュータントですよ。」
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