ミュータントバスター

半次郎

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ゴキブリ編2

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「…ミュータント?たまにテレビとかで報道されてるやつですか?」

「そうです。見た目は普通のゴキブリと大差ないですが、奴らは異常な食欲があります。」

今回のゴキブリに限らず、俺達が対峙したミュータントすべてに共通して言える事だ。これは仮説だが、変異した体を保つには膨大なエネルギーが必要なのではないかと考えている。それを補うために奴らはひたすらに食べ続けるのだと思う。

「劉さん。大変申し訳ないのですが、お店を一週間程お休みして頂けませんか?」

「一週間!?ちょっと待って下さい!そんなに休んだら大赤字になりますよ!」

「奴らの完全駆除にはそれぐらいの時間を頂きたいのです。休業補償に関しては、国から支援金が出ます。明日市役所に行って申請してみて下さい。」

ミュータント関連で発生した被害は国が補償する事になっている。現段階では奴らの発生を予知して対策を打つ事が出来ない為、被害は広がる一方だ。早く解決策が見つかって欲しいと強く思う。

「…分かりました。店は今晩から閉めます。こちらで何かやる事はありますか?」

「ご協力ありがとうございます。まずは店にある食料を持ち出して下さい。調味料等すべてです。あと生ゴミがあれば教えて下さい。こちらで処分しておきます。」

奴らの餌となる物はすべて取り除く。エネルギーを摂取する手段を断つのだ。そうする事で少なからず動きは鈍くなる。

「店の売上金や貴重品に関しても持ち出して下さい。しばらくは我々以外は立ち入り禁止としますので。では、準備に取り掛かりましょう。」

劉さんは店の従業員達に連絡を取り始めた。いきなりの休業で觔斗雲の皆さんには迷惑をかけ、本当に申し訳なく思う。一刻も早く奴らを駆除しなければ。

「夏目。早速だが始めてくれ。」

「分かりました。」

夏目はゆっくり目を閉じる。いつもの体勢に入ったな。

特殊能力発動ー。『スコープ』

夏目のスコープは特定の建物や敷地の隅々までが分かる空間把握能力。おかげで俺達は駆除する対象の数をあらかじめ知る事ができ、居場所も分かる。

夏目が索敵している間に、俺と縄田で劉さんの荷出しを手伝う。さすが人気の中華料理店、食材の量が半端ない。奴らにとっては良い住処だったようだ。

すべての荷物を出し終えるのに1時間以上掛かってしまった。劉さんから店の鍵を預かる。

「ミュータントの駆除、宜しく頼みます。」

「分かりました。遅くまでご苦労様でした。これを期にゆっくり休んでください。


“そうさせて貰うよ”と言い、劉さんは軽トラに乗って帰って行った。
すでに時刻は深夜2時。これから罠とか仕掛けると、終わるのは朝方か。

とりあえず、夏目から情報を聞こう。

「状況どうだった?」

「対象個体は全部で52匹です。あと卵が15個あるのが確認出来ました。」

「結構いますね。今ある罠の在庫だと足りませんな。」

縄田が言うように想像以上の数だった。今日やれる事は持ってきた罠全部仕掛ける事ぐらいか…。

「足りない分は明日、糸繁商会に行って仕入れて来るよ。今日は出来る限りの事をやって帰ろう。」

俺達は車が停めてある駐車場へと戻る。ハイエースに積んできた罠を台車に乗せ、再び觔斗雲に戻る。
夏目の情報を元に、奴らが潜んでいる箇所へ罠を仕掛けていく。

今回使用する罠は二つ。
一つは粘着シート系罠“ミュータントGホイホイ”。捕獲力が非常に高いので良く使う。
もう一つはペレット剤系罠“デスGダンゴ”。ある毒が練り込まれた錠剤を奴らが食べるとしばらくの間、体が麻痺して動けなくなる。
どちらの罠も糸繁商会の商品だ。

ひとしきり罠を仕掛け終え所で、ひとまず本日の業務は終了した。

「皆んなお疲れ様。一旦帰って15時ぐらいに事務所に来てくれるか。夕方頃にまたここで続きの作業を進めよう。」

すでにあたりは明るくなり始めていた。夏目を家まで送り、縄田はそのまま直帰した。
帰ったら風呂入って、酒飲んで寝よう。明日は昼前ぐらいに起きれば大丈夫かな。ぼんやり考えながら、俺は事務所へと車を走らせた。
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