かふぇおれ

檮木 蓮

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4話

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体は縛り付けられてはいなかったが、
中から開けれないようにされていて
まるで檻のようだった。
必死に外へ呼びかけても答える人はおらず
トイレもおまるのようでペットの様な
気分だった。
たが、1番みつるに気掛かりだったのは
広にあえないことだった。
戸をいくら叩いても叫んでも出しては貰えなかった。そんな時に人影を感じ
「出してぇ!!」っと叫ぶとその人影は
近付いてきた。顔を出した人影は
あの男だった。
「どうだ?此処にぶち込まれた気分は」
ぞくりとするような声色でみつるへ語った。
「出して……広ちゃんに会いたいよ……」
「その広と言うやつからみつるを隔離室へ
はめろと言われたんだ。」
「広ちゃんはそんな事しない!」
「いいや、お前の依存した有様をみて
心が苦しくなったんだと…。暴力もお前から頼まれたものだとか…」
「違う…俺はそんな事頼んでない…」
「まぁ、思い出して反省でもすれば分かるさ」
「出してくれないの?」
そう問いかけたが男は無言で隔離室の前から
離れて行ってしまった。
その日の夜小さな小窓からトレーにのった
ご飯が出てきた。持ってきたのはもちろん
例の男、みつるがご飯を食べ終わるまで
戸の前で待っているつもりだ。
無い食欲を湧き上がらせる事も出来ず
スプーンを持つことさえ出来なかった。
数分手をつけない状態で居ると男が鍵を開け
部屋へ入って来た。
「なに………?」
「早く食え…」スプーンを手に取り
ご飯を口へ突っ込んできた。
「うぇっ……何して…」
言葉を切るように飯を詰め込んだ。
医者がこんなことして良いのかと思ったが
抗うことも出来ないみつるはただ
口へ飯を詰め込まれるだけだった。
食べ終わった頃には床は吐瀉物で汚れていた。
腹は満たされることもなくただ苦痛を
味わっただけだった。
床は自分で掃除させられ消灯時間ギリギリまで部屋を掃除していた。
ここで初めて暴力より苦しいものだと
感じ涙を零した。啜り泣く声が静かな部屋へ
響き孤独感がみつるを苦しめた。
「広ちゃん……助けてよ…。」
それを呟きみつるは綺麗に拭いた床の上で
寝転がり目をつぶり歌った。
悲しさと憎しみを織り交ぜたような美しい歌。まるで天使のように静かに歌い
睡魔に飲み込まれていった。

···········································································

朝起きるとみつるの隔離室の前には人が
集っていた。隔離室は簡単に人が来れてしまう。
「昨日歌を歌っていたのは貴方かね?」
1人の老婆がみつるへ問いかけた。
患者の1人だろう。弱ったからだを支えながらみつるを見つめた。
「そうですけど…」
「まぁ、そうなのね!とても綺麗だったわ
良ければ今夜も歌ってくれないかしら?」
「全然構いませんよ」
自分が求められたことにみつるは心を弾ませた。その夜も歌を歌いみつるは
牢獄の天使などと言う名をつけられた。
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