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第1章 『2度の追放と奴隷少女』
1.2度目の追放
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「――アルゼ、お前をこのパーティーから追放する」
「へ?」
レオの突然の追放宣言に、俺は思わず声が裏返ってしまった。
「だから、お前を追放すると言ったんだよ」
「な、なんでだよ!?」
「ハァ……あんたさぁ、そんなことわかってんでしょ?」
魔法使いのレイラが冷ややかな目でため息を付いた。
「お前の《特殊スキル:大喰らい》、1度でも役に立ったことあったか? いや、1度でも発動したことあったか?」
「そ、それは……」
俺のスキル《特殊スキル:大喰らい》は、『一般スキル』より有用なはずなのに、なぜかスキルを授かってからただの一度も発現したことがなかった。
「最初は『特殊スキル』持ちがフリーだからって入れたけどさぁ……あんた、追放された貴族でしょ?」
「う……」
ドキリとした。
レイラの言う通り、俺は数ヶ月前に家を追い出されている。だけど、それは誰にも言ってないし隠してたつもりだ。
いったいどこから――。
「ガストがあんたの領地の出身なのよ。あんたの家――『グラント家』だっけ? そこの長男坊が無能で次男のほうが出来がよかったせいで追放されたって、そう聞いたのよね?」
「ああ。無能が故に家を追い出され、生きるために冒険者になったってな。まったく、それを隠してこの『勇猛な獅子』に忍び込むとはな……詐欺師みたいなもんだ」
「そ、そんな言い方……っ」
盾役のガストが俺を見下したような目で言った。
「ま、そういうことだな。俺たちにはAランクの話も来ているんだ。お前のような無能スキル持ちは、このパーティーの品格を下げてしまうからな。もっと早く切っておくべきだった。さっさと消え失せろ」
「くっ……!」
悔しいけど、実際に俺のスキルはなんの役にも立ってなくて、これまでは家で習った剣術と雑用しかしてこれなかった。
これ以上、コイツラに言い訳してもどうせ無意味だろうと諦め、
「……わかった。短い間だが世話になったな。すまんが俺の取り分だけは貰えるか?」
とりあえず、分け前だけ貰って『勇猛な獅子』を抜けようと思った。
だが――、
「はぁ? まったく、お前のスキルを発現させるためにどれだけの金を食費に注ぎ込み時間を使ったと思ってるんだ? しかも、結局無意味に終わったんだぞ!? むしろこっちが金を要求したいくらいだね」
「ほんとそうよ。最後ぐらい、少しは気を遣ったらどうなの?」
「うむ。これ以上ふざけたことを抜かすなら――力ずくでここから叩き出してやろうか?」
「お、お前ら……くそっ……!」
悔しい、許せない。少なくとも最初の頃は仲間意識があったのに、今はそんな感情しか湧いてこない。
だけど、ここでゴネてもガストにボコボコにされて追い出されるだけだ。
怪我の治療費だってないのに、そんなものはなんの特にもならない。
「……わかったよ。じゃあな」
俺は2度目の追放宣言を受け、顔も見ずにそれだけ言い残してその場を後にした。
◆◇◆
「あー、くっそ……腹減ったなぁ……」
もう5日も何も食べてない。
以前は俺のスキルが発動するかもと、いろんな物を食べさせられてたので胃が大きくなってしまったみたいで、余計にキツイ。
『勇猛な獅子』を追放されたあとはどこのパーティーにも入れてもらえず、食うに困った俺は、野生の兎でもいないかと街の近くの森に入っていた。
「ぁ――」
脚の力がガクンと抜け、転んでしまった。
「やば……マジで限界だ」
視界もボヤけてきたし、手足もぷるぷると震えが止まらない。
「あーマジでこのまま餓死するのかな……。こんなことってありかよ、くそっ! なんでこっちに来てまで腹減らしてんだよ……!」
俺は自分の運命が呪われてるんじゃないかと、怒りを地面に叩きつけると、
「――あ!」
兎だ。
ちょうど木の陰から出てきたところに、地面を拳で殴った音でびっくりしたみたいで、兎がこちらを見て固まっていた。
――チャンス!
「ふぎぎ――ッ!」
俺は残った力で立ち上がると、全力で走り出した。
「――!」
なぜか兎は逃げるどころか、俺に向かって突進してきた。
「――ぁ!」
やっちまった。
脚が絡まって、また転んでしまった。
「ピギィ――ッ!」
「お」
なんというラッキー。
たまたま転んだことによって、兎を押し潰すことができた。
「や、やった……これでようやく肉が――」
俺は満面の笑顔のまま固まる。
なぜなら、その兎には角があったからだ。
「魔獣かよ! もおぉぉ……」
思わず泣きそうになってしまった。
この世界では、魔獣を食べることはできないのだ。
なぜか? 死んでしまうからだ。
魔獣には魔素が溜めこまれており、これが人にとって毒と同じになるため、遅かれ早かれ死に至るらしい。
当然、貴族だったので家でそんなものは出てこないし、そもそも食べるやつなんて見たことも聞いたこともない。
「はあぁ……どうして俺はこうも運が悪いんだ……」
視界がボヤけてしまってたせいもあるんだろうけど、本当に運がないなぁと思わざるを得ない。
「あぁ……くそぅ……」
最後の力を振り絞ったせいか、もう起きてることすら限界だった。
「もう、こうなったら……」
四の五の言ってる場合ではないと、自分でも気付いている。
苦しんで死ぬかもしれないけど、もしかしたら1匹だけなら……と淡い期待で『一角兎』を見た。
見た目はただの兎だ。これなら捌いて焼いて食べるくらいはできる。
「よし……」
俺は意識がある内にと、急いで兎を捌いていった。
余裕がないので味つけとか気にせず、とにかくすぐに焼いた。
肉の焼ける匂いが鼻腔をくすぐる。
「あぁ~……ちょっと獣臭いけど、肉の匂いがたまんないな」
俺は今か今かと肉が焼けるのを待ち、
「よし、そろそろいいな。食うぞ……」
覚悟を決め、ガブリと肉を頬張った。
「んんっ!?」
噛んだ瞬間、肉汁や旨味やらが口の中に溢れ、
「――うっま!!」
俺はもう魔獣だなんてことは忘れ、無我夢中に食べるのだった。
「あー、うまかった……」
腹が満たされた満足感が出てくると同時に、魔素で死んでしまうかもしれないという焦燥感が出てきた。
「や、やばいかな……やばいよなぁ……」
俺が頭を抱えると、
『《特殊スキル:大喰らい》が発動し、スキル《突進》を獲得しました。レベルがアップしました』
頭の中でシステマチックな声が聞こえたのだった。
「へ?」
レオの突然の追放宣言に、俺は思わず声が裏返ってしまった。
「だから、お前を追放すると言ったんだよ」
「な、なんでだよ!?」
「ハァ……あんたさぁ、そんなことわかってんでしょ?」
魔法使いのレイラが冷ややかな目でため息を付いた。
「お前の《特殊スキル:大喰らい》、1度でも役に立ったことあったか? いや、1度でも発動したことあったか?」
「そ、それは……」
俺のスキル《特殊スキル:大喰らい》は、『一般スキル』より有用なはずなのに、なぜかスキルを授かってからただの一度も発現したことがなかった。
「最初は『特殊スキル』持ちがフリーだからって入れたけどさぁ……あんた、追放された貴族でしょ?」
「う……」
ドキリとした。
レイラの言う通り、俺は数ヶ月前に家を追い出されている。だけど、それは誰にも言ってないし隠してたつもりだ。
いったいどこから――。
「ガストがあんたの領地の出身なのよ。あんたの家――『グラント家』だっけ? そこの長男坊が無能で次男のほうが出来がよかったせいで追放されたって、そう聞いたのよね?」
「ああ。無能が故に家を追い出され、生きるために冒険者になったってな。まったく、それを隠してこの『勇猛な獅子』に忍び込むとはな……詐欺師みたいなもんだ」
「そ、そんな言い方……っ」
盾役のガストが俺を見下したような目で言った。
「ま、そういうことだな。俺たちにはAランクの話も来ているんだ。お前のような無能スキル持ちは、このパーティーの品格を下げてしまうからな。もっと早く切っておくべきだった。さっさと消え失せろ」
「くっ……!」
悔しいけど、実際に俺のスキルはなんの役にも立ってなくて、これまでは家で習った剣術と雑用しかしてこれなかった。
これ以上、コイツラに言い訳してもどうせ無意味だろうと諦め、
「……わかった。短い間だが世話になったな。すまんが俺の取り分だけは貰えるか?」
とりあえず、分け前だけ貰って『勇猛な獅子』を抜けようと思った。
だが――、
「はぁ? まったく、お前のスキルを発現させるためにどれだけの金を食費に注ぎ込み時間を使ったと思ってるんだ? しかも、結局無意味に終わったんだぞ!? むしろこっちが金を要求したいくらいだね」
「ほんとそうよ。最後ぐらい、少しは気を遣ったらどうなの?」
「うむ。これ以上ふざけたことを抜かすなら――力ずくでここから叩き出してやろうか?」
「お、お前ら……くそっ……!」
悔しい、許せない。少なくとも最初の頃は仲間意識があったのに、今はそんな感情しか湧いてこない。
だけど、ここでゴネてもガストにボコボコにされて追い出されるだけだ。
怪我の治療費だってないのに、そんなものはなんの特にもならない。
「……わかったよ。じゃあな」
俺は2度目の追放宣言を受け、顔も見ずにそれだけ言い残してその場を後にした。
◆◇◆
「あー、くっそ……腹減ったなぁ……」
もう5日も何も食べてない。
以前は俺のスキルが発動するかもと、いろんな物を食べさせられてたので胃が大きくなってしまったみたいで、余計にキツイ。
『勇猛な獅子』を追放されたあとはどこのパーティーにも入れてもらえず、食うに困った俺は、野生の兎でもいないかと街の近くの森に入っていた。
「ぁ――」
脚の力がガクンと抜け、転んでしまった。
「やば……マジで限界だ」
視界もボヤけてきたし、手足もぷるぷると震えが止まらない。
「あーマジでこのまま餓死するのかな……。こんなことってありかよ、くそっ! なんでこっちに来てまで腹減らしてんだよ……!」
俺は自分の運命が呪われてるんじゃないかと、怒りを地面に叩きつけると、
「――あ!」
兎だ。
ちょうど木の陰から出てきたところに、地面を拳で殴った音でびっくりしたみたいで、兎がこちらを見て固まっていた。
――チャンス!
「ふぎぎ――ッ!」
俺は残った力で立ち上がると、全力で走り出した。
「――!」
なぜか兎は逃げるどころか、俺に向かって突進してきた。
「――ぁ!」
やっちまった。
脚が絡まって、また転んでしまった。
「ピギィ――ッ!」
「お」
なんというラッキー。
たまたま転んだことによって、兎を押し潰すことができた。
「や、やった……これでようやく肉が――」
俺は満面の笑顔のまま固まる。
なぜなら、その兎には角があったからだ。
「魔獣かよ! もおぉぉ……」
思わず泣きそうになってしまった。
この世界では、魔獣を食べることはできないのだ。
なぜか? 死んでしまうからだ。
魔獣には魔素が溜めこまれており、これが人にとって毒と同じになるため、遅かれ早かれ死に至るらしい。
当然、貴族だったので家でそんなものは出てこないし、そもそも食べるやつなんて見たことも聞いたこともない。
「はあぁ……どうして俺はこうも運が悪いんだ……」
視界がボヤけてしまってたせいもあるんだろうけど、本当に運がないなぁと思わざるを得ない。
「あぁ……くそぅ……」
最後の力を振り絞ったせいか、もう起きてることすら限界だった。
「もう、こうなったら……」
四の五の言ってる場合ではないと、自分でも気付いている。
苦しんで死ぬかもしれないけど、もしかしたら1匹だけなら……と淡い期待で『一角兎』を見た。
見た目はただの兎だ。これなら捌いて焼いて食べるくらいはできる。
「よし……」
俺は意識がある内にと、急いで兎を捌いていった。
余裕がないので味つけとか気にせず、とにかくすぐに焼いた。
肉の焼ける匂いが鼻腔をくすぐる。
「あぁ~……ちょっと獣臭いけど、肉の匂いがたまんないな」
俺は今か今かと肉が焼けるのを待ち、
「よし、そろそろいいな。食うぞ……」
覚悟を決め、ガブリと肉を頬張った。
「んんっ!?」
噛んだ瞬間、肉汁や旨味やらが口の中に溢れ、
「――うっま!!」
俺はもう魔獣だなんてことは忘れ、無我夢中に食べるのだった。
「あー、うまかった……」
腹が満たされた満足感が出てくると同時に、魔素で死んでしまうかもしれないという焦燥感が出てきた。
「や、やばいかな……やばいよなぁ……」
俺が頭を抱えると、
『《特殊スキル:大喰らい》が発動し、スキル《突進》を獲得しました。レベルがアップしました』
頭の中でシステマチックな声が聞こえたのだった。
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