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第3章 『ダンジョンとポーター』
14.《特殊スキル:無限収納》
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「おい、もういいか?」
俺はいまだに袖を掴んでいたアビに言った。
「あの、アルゼ様を離してください!」
メルがアビに抗議する。
それでようやく「おっと、失礼したのですよ」と手を離した。
「んで、お前は野良のポーターってやつで、俺たちに売り込みに来たってことであってるのか?」
「そうなのですよ。ギルドのポーターより安いし、アビは優秀ですからおすすめですよー?」
「まぁポーターの必要性はわかったし、金額もきっとギルドよりは安いだろう。だけど――」
「アビの能力を心配してるのですかー?」
「ま、そういうことだな」
彼女が自分で言うように本当に優秀ならば、ダンジョンの間だけ雇うってのも悪くはない。
「アビはなんとですねー……」
ちょいちょいと手で頭を下げろというので少し屈むと、
「――《特殊スキル:無限収納》を持ってるのですよ?」
俺の耳に顔を近づけてそう言った。
アビの息が耳にかかってくすぐったいが今はそれよりも――、
「収納スキルを持ってるのか!?」
俺は、アビに掴みかかりそうになる気持ちを抑えて確認した。
「声が大きいのですよー。アビは戦う力がないので、無理強いされないようにこのことは秘密にしてるのです。だから他の冒険者には秘密ですよ?」
「……なんで俺たちには話したんだ?」
「そうですねー……勘、ですかねー?」
アビは自分でもよくわかってないのか首を傾げた。
「なんだそりゃ……。そんなんで俺たちを信用していいのか? まぁ、別に広めるつもりはないけどさ」
「アビの勘は当たるのですよー。2人は悪い人に見えないですし、お金になりそうな匂いがしたのですよー」
「金になりそうなって……まぁいいや。それで、いくらなんだ?」
「1日2万スレイ、それとドロップ品とかダンジョンで儲けた分から1割でどうです?」
「ふむ……」
メルを見るとコクリと頷いたので、
「わかった、その条件で契約成立だな。明後日からダンジョンに潜ろう。とりあえず潜る前に準備が必要だろうし、どんなのを用意したらいいか教えてくれ。あ、後おすすめの宿屋は知ってるか?」
俺たちはアビとダンジョンに潜ることに決めたのだった。
◆◇◆
翌日、アビに教えてもらった宿屋で1泊した俺たちは、必要なものを購入するために市場へときていた。
「えーと、食料はサービスでアビが用意してくれるって言ってたな。装備を新調するほどの余裕はないし、あとは日用品とか服くらいなもんか」
「はい。アビさんは料理もできるそうですし、もしかしたら本当に優秀なポーターかもしれませんね」
「だなぁ」
俺たちはアビに聞いた最低限の必需品だけ購入し、あとは街を散策することにした。
明日からダンジョンに潜るのでしばらく戻ってこれないかもしれないし、せっかく新しい街に来たのならメルと一緒に見て回りたいと俺が提案した。
「こうやって、のんびりいろいろと旅をしてみるのもいいかもしれないな」
「はい! アルゼ様と一緒ならどこもきっと楽しいです」
しばらく街を巡ったあとに、俺たちは宿に戻った。
地元民のアビが紹介するだけあって料理も美味しく、宿代も安かったので、今の俺たちにはありがたかった。
「――メル」
「アルゼ様……ぁ――」
ダンジョンにいる間はアビもいるしそういうこともできないので、当然の流れで俺たちはお互いを求め合ったのだった。
◆◇◆
「荷物はこれで全部ですねー? 忘れ物はないですかー?」
「ああ、バッチリだ」
「私も大丈夫です」
アビが俺たちの荷物をリュックにしまう。
このリュックは見せかけで、実際は《無限収納》にしまってるらしい。
「ところで聞いていませんでしたけど、レベルと冒険者ランクはいくつくらいなんですかー?」
「俺は17だ。冒険者ランクはEランクだな」
「私はレベル9で、冒険者ランクはFです」
「……あれー?」
アビが不思議そうに首を傾げる。
「アビの勘が外れるなんてないと思うんですけど……」
キョロキョロと俺とメルを交互に見るアビ。
「なんだ? 何か言いたいことでもあるのか?」
「いえ、そういうわけじゃないですけどー……うーん、まぁ契約は契約です。無理せずに行きましょー」
なんだか腑に落ちない言い方だが、きっと彼女の見立てより俺たちのレベルや冒険者ランクが低かったのだろう。
「アビさん、安心してください。アゼル様はレベルやランク以上に強いんですから」
ドヤ顔でアビに教えるメル。
実際のところ、メルのほうが強いような気もするんだが……。
「そうなんですかー。あ、アビにさん付けは不要なのですよ?」
「えっと、じゃあアビって呼びますね。私のこともメルって呼び捨てでお願いします」
「あぁ、俺も別に呼び捨てでいいぞ?」
「わかったのですよー。それならアゼルとメルって呼ぶのですよー」
「ああ。それじゃあ行こうか、メル、アビ」
「はい、アルゼ様!」
「わかったのですよ、アルゼ」
俺たちはダンジョンの入口で料金を払い、中へ入るのだった。
俺はいまだに袖を掴んでいたアビに言った。
「あの、アルゼ様を離してください!」
メルがアビに抗議する。
それでようやく「おっと、失礼したのですよ」と手を離した。
「んで、お前は野良のポーターってやつで、俺たちに売り込みに来たってことであってるのか?」
「そうなのですよ。ギルドのポーターより安いし、アビは優秀ですからおすすめですよー?」
「まぁポーターの必要性はわかったし、金額もきっとギルドよりは安いだろう。だけど――」
「アビの能力を心配してるのですかー?」
「ま、そういうことだな」
彼女が自分で言うように本当に優秀ならば、ダンジョンの間だけ雇うってのも悪くはない。
「アビはなんとですねー……」
ちょいちょいと手で頭を下げろというので少し屈むと、
「――《特殊スキル:無限収納》を持ってるのですよ?」
俺の耳に顔を近づけてそう言った。
アビの息が耳にかかってくすぐったいが今はそれよりも――、
「収納スキルを持ってるのか!?」
俺は、アビに掴みかかりそうになる気持ちを抑えて確認した。
「声が大きいのですよー。アビは戦う力がないので、無理強いされないようにこのことは秘密にしてるのです。だから他の冒険者には秘密ですよ?」
「……なんで俺たちには話したんだ?」
「そうですねー……勘、ですかねー?」
アビは自分でもよくわかってないのか首を傾げた。
「なんだそりゃ……。そんなんで俺たちを信用していいのか? まぁ、別に広めるつもりはないけどさ」
「アビの勘は当たるのですよー。2人は悪い人に見えないですし、お金になりそうな匂いがしたのですよー」
「金になりそうなって……まぁいいや。それで、いくらなんだ?」
「1日2万スレイ、それとドロップ品とかダンジョンで儲けた分から1割でどうです?」
「ふむ……」
メルを見るとコクリと頷いたので、
「わかった、その条件で契約成立だな。明後日からダンジョンに潜ろう。とりあえず潜る前に準備が必要だろうし、どんなのを用意したらいいか教えてくれ。あ、後おすすめの宿屋は知ってるか?」
俺たちはアビとダンジョンに潜ることに決めたのだった。
◆◇◆
翌日、アビに教えてもらった宿屋で1泊した俺たちは、必要なものを購入するために市場へときていた。
「えーと、食料はサービスでアビが用意してくれるって言ってたな。装備を新調するほどの余裕はないし、あとは日用品とか服くらいなもんか」
「はい。アビさんは料理もできるそうですし、もしかしたら本当に優秀なポーターかもしれませんね」
「だなぁ」
俺たちはアビに聞いた最低限の必需品だけ購入し、あとは街を散策することにした。
明日からダンジョンに潜るのでしばらく戻ってこれないかもしれないし、せっかく新しい街に来たのならメルと一緒に見て回りたいと俺が提案した。
「こうやって、のんびりいろいろと旅をしてみるのもいいかもしれないな」
「はい! アルゼ様と一緒ならどこもきっと楽しいです」
しばらく街を巡ったあとに、俺たちは宿に戻った。
地元民のアビが紹介するだけあって料理も美味しく、宿代も安かったので、今の俺たちにはありがたかった。
「――メル」
「アルゼ様……ぁ――」
ダンジョンにいる間はアビもいるしそういうこともできないので、当然の流れで俺たちはお互いを求め合ったのだった。
◆◇◆
「荷物はこれで全部ですねー? 忘れ物はないですかー?」
「ああ、バッチリだ」
「私も大丈夫です」
アビが俺たちの荷物をリュックにしまう。
このリュックは見せかけで、実際は《無限収納》にしまってるらしい。
「ところで聞いていませんでしたけど、レベルと冒険者ランクはいくつくらいなんですかー?」
「俺は17だ。冒険者ランクはEランクだな」
「私はレベル9で、冒険者ランクはFです」
「……あれー?」
アビが不思議そうに首を傾げる。
「アビの勘が外れるなんてないと思うんですけど……」
キョロキョロと俺とメルを交互に見るアビ。
「なんだ? 何か言いたいことでもあるのか?」
「いえ、そういうわけじゃないですけどー……うーん、まぁ契約は契約です。無理せずに行きましょー」
なんだか腑に落ちない言い方だが、きっと彼女の見立てより俺たちのレベルや冒険者ランクが低かったのだろう。
「アビさん、安心してください。アゼル様はレベルやランク以上に強いんですから」
ドヤ顔でアビに教えるメル。
実際のところ、メルのほうが強いような気もするんだが……。
「そうなんですかー。あ、アビにさん付けは不要なのですよ?」
「えっと、じゃあアビって呼びますね。私のこともメルって呼び捨てでお願いします」
「あぁ、俺も別に呼び捨てでいいぞ?」
「わかったのですよー。それならアゼルとメルって呼ぶのですよー」
「ああ。それじゃあ行こうか、メル、アビ」
「はい、アルゼ様!」
「わかったのですよ、アルゼ」
俺たちはダンジョンの入口で料金を払い、中へ入るのだった。
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